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26 晩御飯探訪記

真っ暗闇だが、サーチを用いサーモグラフィになった森林を注意深く観察する。


この世界に豚や鳥等の動物など居なく代わりに魔物に進化し損なった無魔という動物に似た生物と野菜が主食だ。


なので、狩りをすべく此処までやってきたのだが、見付かるのは虫、虫、虫である。

現代っ子で元都会っ子の私がそんなものを食べる勇気など持ち合わせておらず大木の枝に座り、足をぶらつかせている時だった。


「んん?」


がさっという木を揺らす音が近くから聞こえてきたので、枝の上で膝を着く体勢で警戒していると。


「くええっ!」


と、鳥のような鳴き声と共にバカみたいに大きい鳥っぽい無魔を発見した。


「晩御飯みっけー。よっし...」


バレないように腰を低くしながら立ち上がり、左拳を腰の辺りに構え。


「ひけ...」


上方にスキル飛拳を放とう左腕を突き上げたのだがふとこのままやったらまた爆散するのでは?と思い至った。


直接攻撃より魔力の方がステータス的に弱いので魔法を使おうと切り替えて、腕を下ろし、地上に飛び降りる。


空を見ると此方に未だ気付いていない旋回している怪鳥を確認し、両手を斜め前に突き出し。


「フォトンレーザー!」


を使ったのだが手の先に現れた魔方陣から放たれた白色の光のレーザーが目標から逸れてしまった。


「あっ...これ難しいな...んん!?あっははは。やっちゃった...」


逆に逸れて良かったみたいだ。何故なら当たっていたら爆散では済まず、消滅していただろうから。


軌道が逸れたフォトンレーザーは道すがらの木々を薙ぎ倒すのではなく、全て光のチリに変え、踏ん張っていた地面は核爆弾を落とされたかの如く、広範囲をクレーターにしていた。


そしてレーザーが怪鳥から大分離れた位置に辿り着くと少なくとも数キロ離れていた怪鳥は吹き飛され、地面に墜落したが、未だ衰えを知らないレーザーはそのまま伸びていき。


ここら辺一体の雲を掻き消した。


私はそれを見て、これは封印しようと誓った。


呆然としながらも我を取り戻した私は無魔の墜落した森深くに足を踏み入れると、犬神家の様に身体を上下に反転させ、頭を地面に埋もれさせていたそれの足を掴み引き抜いた。


「よいしょ...うへぇ...」


どうやら墜落の衝撃か落ちた体勢のせいか頭がぐちゃぐちゃになってしまっていたが、これ以外食べられなさそうな物が虫系無魔しかいないので、諦めて怪鳥を担ぎ上げ、先程やらかしてしまったクレーターの出来た場所待で歩いて戻る。


「おいしょっと。....ふう...せいっ!」


担いでいた怪鳥を肩から下ろし、左手でむんずと掴みながら水平に右手で手刀をおみまいすると首から上の部分がドサッと音を発てて落下した。


そして掴む場所を鶏のような足に替え、そのままずるずると血を滴らせながら引きずっていく。


「よっと。」


破壊した木々とは逆方向の村側にある木に近づき丈夫そうな蔓を6本千切り、それを怪鳥の胴体や足に巻き付けると切り口である断面を下にして木の幹にくくりつける。


「ふんっ!こんなもんか。」


それが終わると木から離れて、どんな感じか見てみると血が断面からポタポタと落ちているのを確認した後一息吐いた。


所謂血抜きというやつだ。


怪鳥がずれたり、落ちたりしないのを少しの間観察しながらその木の周りに落ちている、枝や葉っぱを拾い、クレーターの中心に置いていくのを数往復し枝を2本拾い、一本を地面に横たわらせた。


手の中にあるもう一本を置いた木の枝に先を着けて、カリカリカリと両手の手のひらで回してひ起こしを試してみるが...。


「..........うあっ!」


私の腕力が強すぎてボキッと折れた。

その後もめげずにチャレンジするものの、ボキッボキッ、ドスッ、ドスッボキッボキッと折れるか下の枝を貫通させるかのどちらかでほぼ全滅し、最後の枝を拾い上げ。


「うああああっ!!はらったつわーーっ!」


叫びながら硬い地面にぶん投げると枝がトンカチで打ち付けたネジの様に深々と突き刺さった。


そして膝に手を付きながら。


「いおりでやったら出きるんだろうけど...でもここ村の近くなんだよなぁ。見られたくないし...どうしよう......あっ、そーだ。」


地面に横たわっている木の枝の残骸を汗を滴しながら眺めているとある事を閃いた。


私は精神を集中させ、右手を魔方陣を展開する時と同じく前に突き出し、魔法を行使する。


「フレイムスレイブ!」


そういい放つとMPが消費され、目の前の空間に炎が現れ渦巻き始めると、紅の剣が現れ、それを恐る恐る握ってみると。


「あるえ?全然熱くない。」


チリチリ熱気を感じるものの絵の部分は全く熱さを感じず、軽く扱いやすそうだ。


何度かブンブン振り回し、手に馴染ませるとしゃがんで、プルプルさせながら枝の一本に慎重に近づけていく。


するとまだ触れてもいないのに枝が燃え上がり。


「おおっ!...おお?...おおお...」


あっという間に燃えカスへと変貌していった。

その灰を見ているとその下の地面は熱を含んでいたが、熱のせいか一回溶けて固まったのからか鉄板みたいにカチカチのツルツルになっているのを見てピンときた。


私はまず少し地面を掘り起こし、その窪みに剣を置き、避けておいた土を剣を押し潰すように敷き詰めていく。


「うーん、溶けてぼこぼこいってる。もうちょい足すか...」


薄かったからか、熱に耐えられなかったらしく、沸騰したように粒々が所々に出てきてしまったので、その倍の土を敷き詰めると、湯気は出ているが形は崩れずツルツルのカチカチに少しずつだがなってきていた。


「ほほう....」


どうやら成功したらしいそれに置いておいた葉っぱを敷き詰め、切り取った肉を包み、その更に上から葉っぱで覆う。


最初こそは何も変化がなかったが、次第に落ち葉が茶色くなってくると、肉が蒸された香ばしい匂いが立ち込めてついよだれが出てしまう。


空気が篭らない様に少し長めの木の棒でがさがさつつきながら、腹を鳴らしていると今度はジュージュー焼ける匂いが聞こえてきたのでそろそろ頃合いかと炎無効スキルを存分に発揮させながら葉っぱを一枚づつ丁寧にどかしていく。


すると、中から姿を現したそれは、表面は少し焦がしながらも茶色く変色させたパリパリの皮に、プルプルでモチモチしてそうな身に涎が止まらなくなってしまった。


特に只の葉っぱだった茶色い物体が焼くと香しいハーブに似た匂いに変化させており、それが余計に食欲を増加させる。


私は思わずかぶり付き。


「....うまあっ!!なにこれ!こんな旨い肉初めて食べた!...はふはふはふ...」


まだ血が滴り、少し生臭いがそれでも十分過ぎる程美味しく、身は柔らかく、皮は音がなる程パリパリで、調味料なんか無いので素材そのままだが、元々塩分を含んでいるのか良い塩梅に300グラムもあった肉塊をぺろりと完食してしまった。


「美味しかったあ...うーん、あれ捨てるのは勿体無いなあ...持って帰ってなんか作れないかな...」


と、そう思い至った私は、血が落ちきるまで毛や羽をむしり、要らない皮や足を千切っていく。


思いの外時間がかかった作業に血も渇き、そろそろ朝になろうという頃に。


「おいしょっと。そろそろ帰らないとなー。」


手刀で切り分けた怪鳥だったお肉を腕に抱えて持って帰る事にした。

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