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24 ラケルタの悩み

崖の上を歩き、そこから見える山々を見下ろしながら私はある事を考えている。


あの女性は何者なのか...何故私が別の世界の住人だと知っているのか、それとこの村で何をしようとしてるのか...


それともう一つ。


「私があの人の玩具を壊したってどういう事だ?」


思い当たる節はなく、あのフードの下の少しだけ見えた妖艶な唇を思い出しながら景色を堪能していると、柵に囲まれた高台が見えてきた。


恐らくはあれが展望台なのだろうと思い至り崖から見下ろすと...


「おっ、いたいた。」


見知った人物を見つけることが出来た。


村の入り口にある谷の反対側の青空を仰ぎ見ながら柵に手を付きながら黄昏ているラケルタを見つけた。


「よっとっと。ふう....」


バレることは無いとは思うが見付からないように崖上で回り込み、彼の背後にある坂の頂上に崖の端を手で触れながら飛び降りる。


すたっと軽い音をならしながら両足を静かに地面に着けると足音を発てないように抜き足で近づいていき。


「やっほー、ラケルタくん何してるのかな?」


と彼の両肩に右手と左手を各々置いて、彼の顔の近くに自分の顔を持っていく。


すると驚いた彼はぎょっとした面持ちで。


「うわあああっ!!」


「いぃっ!?ちょちょちょ、あぶなっ!」


柵から引っくり返って落ちそうになるものだから咄嗟に腰に手を回し引き寄せる。


すると、彼の顔は次第に紅潮していき、目を泳がせながら私を突き飛ばした。


「おっと。意外と力あるね。」


「あっ!すいません、イオンさん...でもいきなり現れるのは止めてほしいです...」


ラケルタは私が悪ふざけが過ぎたのに謝ってきたので、少しおちゃらけて肩をバシバシと叩く。


「ごめん、ごめん!ラケルタくんって何かちょっかい掛けたくなるんだよねー!ごめんね!」


悪くても愛想笑いぐらいしてくれるかと思っていたのだが、表情に影を落とし落ち込んでしまった。


「やっぱり僕が弱いからでしょうか...皆僕を敬遠するんです...弱いんだから来なくて良いって...」


「そ、そうなんだー...へー...」


やらかした...やっぱり今の自分に少なからず不満があるらしい。

でも実際あんな状態では役立たずだろう。


私の方が誤魔化すため愛想笑いをするはめになっているとラケルタが肩を落としながらベンチに溜め息を吐きながら腰を下ろしていた。


「はあ...でも仕方ないですよね。僕弱いし...イオンさんは凄いですよね...」


「そうかな?でも、私の場合それなりに理由があるからなぁ。君だって逃げないだけ凄いと思うけど...」


慰めつつ、地雷を踏まない様に言葉を慎重に選んでいく。


「理由ですか?...あの...どんな...」


「それは言えないんだよね。込み合った事情があってさあ。」


嘘は言っていない。そもそもどう説明しろと?

別の世界から来て、アイドルやって魔法少女もして更に冒険者やってますなんて誰が信用するのだろうか。


展望台から景観を眺めながら話を逸らそうと頭を悩ませていると、ポツポツとラケルタが。


「そうですか...。あっ、あの!聞きたいことがあるんですけど...どうやったら僕もイオンさん程じゃなくても強くなれますか?」


真剣な声色で問いかけてきたものだから首を動かし、彼の顔をみる。


「えー?どうって...筋トレとか...後は自分にあった武器探しとか繰り返し訓練するとかかなあ。」


「うぅ....やっぱりそうですよね。トレーニングもやってますし、剣の訓練も欠かしてないんですけど...誰にも勝てなくて...」


「うーん。」


それ以外の方法など見付かるとは思えないがうんうんと頭をぐりぐり回しながら腕組みをしているとラケルタが、申し訳なさそうな表情をしながら急に立ち上がった。


「すいません...やっぱりいいです....それに戦えたって...ごめんなさい。僕はこれで...」


「どうしたの?急に...あ...」


苦虫を噛み潰したように苦しそうな顔をさせたと思ったらラケルタは坂を駆け降りて何処かにいってしまった。


「はあ...何なんだよ。全くもう...」


共和国北東部に来てからと言うもの目まぐるしく移り変わる様相に疲れ目を瞑り、今回の旅のキーとなる出来事を思い出す。

まずはあの恐竜のような怪物だろう、そしてその後村長達が口をつぐんでいる怪物の正体にラケルタの真意と村との関係性...そして何よりも私に関係深いと思われる正体不明の女性。


こんな所だろうと目を開けると、いつの間にか夕暮れ時だったらしく、オレンジ色に色彩を変えつつある夕日を崖の隙間から覗きみてある事を思い立った。


「暗くなる前に空き家に行かないとなあ...よっと。」


ベッドや今日の食事、それに服も洗わないと...とめんどくさい気持ちを抑えつつ坂を下りながら、私のイメージカラーの赤い看板が立っている家を見つけたので、駆け足で向かうことにした。




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