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20 ユニークスキル

私は嬌声を上げ走り去りながら頂上付近に到達すると、ゆっくりスピードを落とし悪いことしたという気持ちと女みたいな声を出して恥ずかしい思いから彼が追って来てないのを期待して後ろをチラッと見るとその惨状に口が閉まらなくなった。


「うっそ....」


私が走った道やその周辺がまるでモグラが引っ掻き回した様にデコボコの地形に様変わりしている。


「ど、どうしようこれ...ああー!もう最悪!」


叫びながらどうしたら良いのか分からなくなり、しゃがんで頭を抱えていると久しぶりに軽妙な音がなった。


『てんてててーん!』


このアラームに嫌な予感がして呟いてしまう。


「まさか彼死んでないよな?」


悪い想像ばかりが広がる頭を振りかぶり、震える手で空中に浮き出ているタッチパネルを押すと。


『ユニークスキル獲得 召喚が可能です。どうしますか?』


と文字が半透明のボードに映し出されていた。

その直ぐ下に『はい』『いいえ』の2つのタッチパネルが出現したのを確認すると。


「これを押せば良いのかな...ほいっと。」


特に考えもせずに押したのが間違いだった。

突如現れた魔方陣からウサギっぽい容姿で天使の輪を頭の上に浮かせているそいつが這い出てきて口を開いた。


「こんにちわ、ご主人様!使い魔のラビっす!ちょっと失礼...ほお...中々よいスパッツですな。パツパツ具合が実に素晴らしい!さてそれでは次はその発展途上の胸を...むぎゅっ。」


「死ねやーーっ!このセクハラ野郎がぁっ!」


私はいきなりのスカートを捲り太ももをなで回しながらそのまま胸に手を伸ばそうとした害獣をむんずと掴み上げ上に放り投げると...顔面を撃ち抜く程の本気の右ストレートをぶち込んだ。


パアンッと弾けるような音と共に空の彼方へ飛んでいったセクハラ害獣の軌道上にあった木々数本には手足を広げたウサギマークがくり貫かれている。 


「何なんだよあいつ...気持ち悪い...」


私は身震いしながらあれがユニークスキルとかふざけとんのかと怒りを感じて足音を発てながら歩き出した時だった。


「酷いじゃ無いっすかー。いきなり殴るなんてー。でもご主人がしたいなら良いっすよ!自分結構Mなん....でぶほぉっ!」


「ぎゃああああっ!」


私の尻を撫でながらそんな阿呆な事を言い、何処からともなく前触れもなく現れたそいつを拳骨で頭を殴り地面に顔を擦り付けさせた。


「お、お前何なんだよっ!何がしたいんだっ!」


「何ってご主人の親愛なるパートナーの使い魔ラビっすよ。あっ、言っときますけど自分、男でもいけますんで。」


「.....ひいっ!」


今まで出会った中でもヤバイやつランキング上位に入るラビとかいうウサギに私はぞぞっと体を小刻みに震わせながら逃げきるつもりで走り出した。


「あっ!まってくださいっす、ご主人!」


「待つかっ!来んなっ!」


いつまでも追ってくるラビに辟易し、どうしてもついてくるらしいので、諦めて肩にぬいぐるみのふりをするならと話すと一旦は納得した様だ。


いつの間にやら山頂を超え、照りつける太陽を木々の木漏れ日の中に感じながら下山していると、中腹に差し掛かった頃違和感を覚えた。


「何すかあれ?キャンプでもしてるんすかね?」


ラビと私の視線の先には煙が何本も立ち込めている丘陵地帯の奥にある谷の盆地に向かってアナライズとサーチの複合技を使う。


「あれはきっと狼煙だな。村は崩壊してるから多分何かの合図かも。....ん!?何だあいつは!」


「どしたんす?おわっ!ありゃあヤバイっすよ!」


その崩壊した村に向かって巨大な何かが真っ直ぐ向かっているのを目にし私はラビのモフモフした頭をガシッと掴むと、胸の谷間に押し込んだ。


「おほおおおっ!この感触最高っす!ちょっと小振りなのもまた!」


「次そういうニュアンスの事言ったら殺すからな。飛ぶぞ、下着じゃなくて服に掴まってろよ?」


「うっす!」


ラビが服の胸元にあるヒラヒラに掴まるのを見届けると、腰を落とし足に力を入れて一気に駆け出し、十分なスピードが出たところでジャンプした。

そして空中に飛び上がると新スキル『シールド』を背後に展開し、体を半捻りしながら左足で踏み足をバネのようにしならせ、空中を滑空する。

飛距離は勿論足りないので、降下が始まると足元の空間にシールドを展開し、それを踏み場に地上に降りること無くジャンプを繰り返しているとあっという間に村の近くの岩場に降り立った。


近くまで来るとようやくその怪物の全容が分かり私は呟いた。


「恐竜?....ドラゴンじゃなかったのか?」


それはまるで図鑑と瓜二つのティラノサウルスにしか見えなかった。

違いがあるとすれば2本の角を生やし、口から炎が漏れでているが、間違いなく恐竜に見える。


「ご主人、あれ不味くないっすか?」


「ああ、もう!少しは考える時間くれっての!行くぞラビ!...ラビ?...あいつ逃げやがった!」


谷間に挟んでいたあの人形崩れがいつの間にか姿を眩ましていた。

だがどちらにしろ戦力にならなさそうなので今は置いておき、3人の人間族に牙を突き立てようとしているのを目の当たりにし、村の上部に聳え立つ崖から飛び降りた。

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