19 オークは最強に恋をする
「ぶひいいいいいっ!!」
「な、何ブヒッ!魔獣ブヒかっ!?」
(あっ!やばっ!)
どうやら急いでいたからか、いつの間にか全速力で走っていたらしくブレーキを掛けようと右足で地面を踏み抜くと走力と相まって三キロ四方の地面が扇状に山の木々をなぎ倒し、地面は津波の様にひっくり返ってしまった。
「うわぁ...やっちゃった。最近は気を付けてたんだけどなあ。」
今でこそ、そこまで破壊することも少なくなったが異世界に来初めの頃は制御がしにくく、よく湖を滝にしたり、山を山脈に変えたりしてしまっていた。
そして今回の山道破壊事件である。
改めて反省し先程轢きかけたオークの集団に向かって小走りで向かい。
「すいませーん!さっきはごめんなさい!ちょっとお話いいですかー!」
謝りながら声をかけたのだが逃げられてしまった。
「ひいっ!」
「お、女ブヒッ!怖いブヒッ!」
「逃げるブヒよ!」
近づいた途端散り散りに逃げてしまった。
私はつい忘れていたのだがこの世界のオークは大抵が女性恐怖症なのだ。
その理由は相当昔に、女騎士の一人がオークという種に恋をして、手当たり次第“襲った”かららしい。
どうもその時植え付けられた恐怖心が遺伝子にも影響しているらしく、中々話を聞いて貰えずにいると...
「おい、お前らどうした?」
「ぼ、ボス~!助けてください~!女が~!」
「うわあっ!」
背後から声を掛けられ肩をビクッとさせながら悲鳴を上げてしまった。
振り向くとオークとは思えない美青年がおり、オークらしい緑色の肌だが顔はそこら辺にはまずいない程整っており、他のオークとは違って筋肉質ですらっとした細マッチョな体型だ。
身長は恐らく180cmぐらいで所謂イケメンというやつだろう...この人なら話ぐらい聞いてくれそうだなと思い、一歩近づいておずおずと話し掛けるが。
「あの...ちょっと道に迷っちゃって...竜神の谷って...」
「いぃっ!?人間の女!?わ、わりいけど俺達急ぐからよ。またな!」
「あっ、ちょっと待って!」
やはりオークの血には逆らえないのか踵を返し山の暗がりに他のオークと逃げようとするので彼の二の腕を掴み、引き寄せると。
「あんた、何してっ!うおおっ!」
「え?」
強くしすぎたらしく二人してバランスを崩して私が下に彼が覆い被さるように地面に倒れ込んでしまった。
「いたた...オークの人だいじょう....ひゃあっ!」
「っつうぅ...すまねえ..今立つからよ...ん?なんだこの柔らけえのは?....あ...」
私とオークの彼が痛みから閉じた目を開けると私は...
「うあうあうあ....いやあああっ!うわあああん!」
「ぐぶおっ!」
「ボスーーーっ!」
「兄貴ーーーっ!」
事故とはいえ胸を揉まれたショックで彼を殴り飛ばしてしまった。
そして私は泣きながら山頂へと走り去りながら木々をなぎ倒していっている時、山の生い茂った草木に飛ばされた彼の周りに同胞達が駆けつけた。
「つっ、ああっ!何て馬鹿力だ...死ぬかと思ったぜ...」
「大丈夫っすか、兄貴!」
「怪我は無いブヒっすか!?」
彼は痛みを振りほどこうと頭を振り、後頭部を押さえながら立ち上がりイオンの去った方角を眺めていた。
その様子に気になった一人のオークが恐る恐る話し掛ける。
「兄貴どうしたのブヒか?さっきの人間の女がどうかしたブヒか?」
「はっ、お前ら俺が里を出てこんな王国くんだりまでわざわざ来た理由忘れちまったのかよ?」
笑顔を見せながらそう語る彼を不安げにお互いに顔を見合わせるオークが嫌な予感がしながらも...
「まさか兄貴...あの女の子と?ダメっすよ!異種間は村長が怒るブヒ!」
「そうブヒよ!止めるブヒ!人間の女ブヒよっ!」
彼らの制止を気にも留めずニヤッと笑みを溢した彼は心底嬉しそうに。
「あんな良い女他に居ないだろ。俺は決めたぜ?あの赤髪の女を嫁にする!人間だからって知ったことかよ!」
「兄貴~!」
そう声高々に宣言した後、勇み足でイオンの元に向かう彼にオーク達は説得しながら追いかけるしかなかった。




