表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/64

18  竜神の谷からの緊急クエスト

「ありがとうございましたー。またご来店くださいませー。」


「いおり、この商品の在庫何処だっけ?」


あれから1週間と少し経ち、リンスの店『ラブリーイオン』で4人で店を切り盛りしている時に突然けたたましくベルと木製の扉の開く音が響き渡った。


「ああ、そのコキュートスが今作ってるから後で買い取りに行くよ。」


「それ私が行きますのでスフィアさん、お金と伝票を棚から出しておいてください。」


「はーい。あれ、伝票どこだっけ?」


「はい、悪いさっき仕入れ書いてて置きっぱなしだった。」


「....いおりさん!いおりさんは此方にいらっしゃいますか!?」


青いお団子髪をほどかせ息を切らしながら勢いよく走り込んで来たのはギルドのお姉さん、アルテナだった。

ラブリーイオンの店員全員がアルテナに振り向き

その何時もと違い、焦っている彼女を不審に思い、タオルを持って駆けつける。


「どうかしましたか?」


「はあはあはあ...こ、これを!」


タオルを渡しながら聞いてみると懐から依頼書を取り出して俺に渡してきた。

それを隣に来ていた茶色のエプロンに白地のワンピースを着ているスフィアと見てみると...これは焦りもするだろう。


「えーと、なになに?竜神の谷にドラゴン出現!?里が崩壊!?」


「はあっ!?嘘でしょっ!あの竜神の里が!?」


確かに緊急事態だとは思うが村一つ無くなるなんて魔獣や化け物が出現すればあり得るんじゃないかと聞いてみるとどうやらそれが竜神の谷だと言うのが一番の問題らしい。


「それは問題だと思うけどさ、何でそんな反応なんだ、皆?」


「何でってそんなの当たり前でしょ!?」


「そうですよっ!竜神族が歯が立たないなんて異常です!」


だから竜神族って何なんだよ...

と、俺が疑問を顔に表しているとリンスが見かねて説明してくれた。


「竜神族とは最初に生まれ落ちた種族とされていまして、現代においても世界最強の種族です。騎士一個大隊を一人で制圧できるほどの能力を有しています。」


「そんなに凄いのに壊滅したのか?」


「だから!緊急事態なんです!お願いします、いおりさん!今すぐご準備を!」


その鬼気迫る雰囲気に只事じゃないのを客数人と同じく俺も感じとり。


「分かりました!なあ皆も行くよな?」


と口に出しながらそれぞれの顔を見て聞いてみると意外な言葉が返ってきた。


「冗談じゃないわよっ!私は絶対行かないからっ!」


「わ、私も今回は遠慮します!冒険は好きですけど命を粗末にしたくないです!」


「そんな所行きませんよ。店もありますから。」


「......」


薄情だなこいつら...そもそもそんな死地に一人で行かせるつもりか?

ギギギっと首を動かしアルテナを見ると俺と目線を合わせないようにしていた。


「他の冒険者にヘルプ頼みたいんですけど...一人は流石に...」


その要請を耳に入れるなりガバッと頭を下げ。


「申し訳ありません!今回の依頼はいおりさんのみとさせていただいておりますのでっ!依頼主からもそのようにして欲しいとの事でして...」


「マジかよ...」


どうやら今回は洒落にならない状況の様だ。

断りたいところだが人命救助はしなければいけないしその魔獣がもし、ルーミアの街を襲撃すれば被害は更に拡大するかもしれないと結論を出し。


「わ、分かりました...じゃあ今すぐ出発しますね。あっ、でもその前に。....変身!」


街に住むお客さんだけなのでそのまま魔法少女に変身し、そのまま唯一の出入口扉に歩いていき、そのいきなりの行動に常連、店員全員が見ているのを理解した上でリンスに振り向きニコッと微笑むと私は扉を開け放った。


そして一歩だけ外に踏み出し、両手の指を口元に、右足を後ろに曲げて一本足で立つ格好で...


「イオンちゃん華麗に参上!皆のアイドルイオンちゃんですっ!きらんっ!ダーリンもハニーも私が推してるこのラブリーイオン本店で私を近くで感じて欲しいな!!見てくれた大好きな君たちにこれをプレゼント!ちゅっ!」

 

言い終わると同時に私は歩道を闊歩していた数十人の観光客含む通行人に投げキッスを放る。

そして忙しなく街道を歩いていた群衆が立ち止まり、此方を見ているのを確認すると、スカートを翻しながら華麗にターンして、店の入り口に向き合うと....


「はっ!」


と鼻を鳴らし、悪戯っ子のような悪魔の笑みを溢したのを見て悪い予感を感じ、カウンターから身を乗り出したリンスと目線を泳がせ両手をばたつかせながら、しどろもどろに...。


「い、イオンさん?一体何を...外にはこの時間物凄い人が居たような気がしますが?」


「嘘ですよね、イオンさん!冗談ですよねっ!」


そう問いかけられ私はファンの人達に使い分けている作り笑顔の1つであるにんまり顔で、ウインクをしつつ前屈みで後ろに手を組み。


「頑張ってね!ラブリーイオンの皆!イオンちゃん応援しちゃう!イオンはこんなに愛されて幸せです!あっ、私そろそろ魔法の国に帰らなくちゃっ!バイバイ!イオンもみんなの事だいだいだーい好きだからね!」


と言い終わるなり私は地面を蹴り上げ、空中に飛び出しながらラブリーイオン本店のイオンカラーである赤のペンキで塗られた屋根に着地し身を屈める。

直後ドドドドドと複数の足音が振動と共に響いてきており、下を覗いてみると通りに居たほぼ全ての通行人が店にゾンビの如く詰めかけていた。

耳を澄ませていると店の中から


「あっあっあっ!い、いおーーん!あんた帰ってきたら覚えてなさいよおおおっ!こらっそこの人!割り込まない!そっちの人は向こうのカウンターに行って頂戴!あーもう入りきらないってばー!」


シャンテの叫び声が反響し外まで聞こえており、それに満足した私は地図をとりだし竜神の谷の場所を確認すると屋根づたいに東門に向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ