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15 復讐を誓う踊り子は舞い踊る

「貧乳...貧乳って言われた...」


「いおりさんは男なんですからまだ傷は浅いと思います!お気を確かに!いおりさーん!」


「それはそれで需要があるみたいですね...メモメモ。」


「リンスさん!追い討ちかけないで下さい!」


アンチとファンの喧騒が聞こえ、私は心に傷を負った...

最近はイオンで居る時間が圧倒的に多いためどうやら身体に精神が引きずられているようだ。

それにしても、貧乳呼ばわりがこんなにダメージが大きいとは思わなかった...男にとっての象徴が小さいと言われるくらいショックだ。


そんな私の様子に気を良くしたのかシャンテは自分の豊満な胸(推定Eカップ)を両手で持ち上げ。


「こんな脂肪の何が良いのかしらね?私はあんたの壁が羨ましいわ。」 


「誰が壁だっ!一応Cギリギリあるわ!」


「Cとは何ですか?いおりさん?」


「そもそもそんなの付けてたら年食ったら垂れますけど!?」


スフィアの疑問は少々説明がややこしいので無視して怒りをシャンテにぶつける。

シャンテはシャンテで実は身体に自信があったらしく、私の言い放った悪口が許せなかったのか人を殺せそうな目付きで睨んできた。


「な、何だよぉ!もう怖くないんだからなっ!」


「はっ!」


「いおりさん、可愛い...」


さっきからスフィアがちょいちょい鬱陶しい。

会場と同じく準備部屋でも戦争が始まりそうになっていた頃、タイミング良く準備が終わったらしく先に踊る手筈のシャンテに先程の少年が声を掛けた。


「あ、あの...シャンテさん準備出来ました...」


「あっそ、邪魔だから退いて頂戴。」


「シャンテそんな言い方!」


余りに酷い言い種に文句の1つでも言ってやろうと椅子から立ち上がり、シャンテに詰め寄ろうとしたら少年が腕を掴んで引き留めてくる。

振りほどこうとしたのだが。


「イオン様良いんです。慣れてますから...」


「むう...」


「ふんっ。」


やはり過去の事がシャンテの中で渦巻いているらしく一座でどうも浮いている存在な様だ。

私は大人しく引き下がると鼻を鳴らしながら、顔が見えないように黒色のヴェールを頭に被っている取り巻き二人を引き連れたシャンテが堂々とステージに上がっていった。

すると、観客席から歓喜の声が木霊しているのを此処からでも聞き取れ、その声援に怖じ気づいてしまう。


「シャンテー!今日も色気あるのを頼むぜーっ!」


「シャンテ!シャンテ!シャンテ!」


色気無くて悪かったな。

慣れているのか颯爽とステージの中央に立つと後ろに控えていた取り巻きのソバカスの方が音楽団に合図を送る。

それを見た団長さんが指揮棒を振り始めるとそれに合わせてハープ、横笛、縦笛...それと大きいタンバリンが一斉に演奏を開始した。


「これは...凄いな。純粋にそう思うよ...」


「そうでしょう?イオンちゃん貴女...勝つ自信ある?」


演奏に合わせてシャンテと取り巻きが踊り始めると観客席から今日一番の声量がテント内に響き渡る。

悔しいけれど躍りに関してはやはりあちらの方が上手だと思わざるを得ない。

踊り始めた彼女は先程までの子供染みたシャンテではなく、艶やかに舞う本当の踊り子だった...明らかに後ろで踊っている彼女達などとは格が違い私もその姿に見惚れてしまう。


「綺麗ですね...本当に。」


「そうだな。でも勝つよ...絶対。」


「応援しますっ!でも先ずはその伸びた鼻を何とかしてください。」


スフィアが右隣に立ちながら横目でじとっと睨んできた。

いくら精神が女の部分が強まってきたとしてもあれだけ刺激的だと男の自分が出てきてしまうのだろう。

シャンテの大きい胸も動く度に跳ねるものだから壮観で実に魅力的だが、それと同じくらい括れのある腰や太もも、安産型の尻にどうあっても目を逸らせない。

表情は妖艶で、まるでモデルのように肩で風を切り、そこから延びる腕はしなやかな自然な動きでまるで誘っているかの様だ。

そして腰使いも激しく、手でそのビキニのパレオみたいな布をなぞり腰をくねらせながら、ステップは激しくなく静かだが、しっかりとした力強さを感じ圧巻され、身体が震えてしまう。


「イオンちゃん...貴女凄いわね...あれを見てそんな顔が出来るなんて。」


「ゴーレムと戦った時と同じでその表情はとても頼りになります!」


「ふふ...それでこそ貴方らしいですね。らしくなってきたじゃないですか?」


皆が何を言っているか分からず化粧台の鏡を覗き込んでみるとそこに映っていたのは口角を上げ、まるで強敵と戦う事が出来て嬉しがっている私の姿がそこにある。

視線を感じ化粧台からステージに目を移すとステージの上で踊りながらこちらを見ているシャンテが居た。

その目の奥には自信が漲っており、私もこの“武者震い”を両手を握り、震えが抑まると真っ直ぐにシャンテの目を見つめる。


「ほんと、らしくなってきたね。異世界転生はこうでなきゃな!」


私は瞳孔を開かせ、白い歯を見せつけるように特大の笑顔を浮かべた。





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