七匹
古い魚屋の、店の裏手であった。
勝手口に木箱が打ち捨てられており、その中には生後三ヶ月ほどの白混じりの黒毛の子猫が何匹も入っている。
産み棄てられているようだ。母猫はいない。
小さな鳴き声を上げて箱の中でうごめいている。
晴れた初夏の昼下がりになろうとしていた。朝は空気がひんやりしていたが、この時刻になり、日なたの路面は熱されて、少し風が吹くと熱気が顔に当たった。
さいわいながら木箱は建物の影にあり、猫たちは熱に中ることを免れていた。
僕が途方に暮れてそれをみていると、勝手口から魚屋の女将が出てきた。顔なじみであった。やはり、困った顔をしている。
——朝からあるのよ。困ったもんだわ。
——そうなんですか。
——棄ててしまうわけにもゆかんし、かといってそのままにもできんわな。なんとかならんかなあ。
女将は腕を組んだ。
——里親、探してみましょうか。知ってる獣医さんがあります。
——そうかね。
女将はうれしそうな顔をした。そしてひいふうみい、と猫の数を数える。
——七匹いるわな。
——ううむ。さすがに七匹も里親探すのは大変かなあ。
——お兄さん、やってくれるなら半分費用出すよ。頼んでいいかね。店もあるし、とにかくこのままにはしておけんからね。
——ええ。わかりました。
僕は頷いた。きっと猫たちは助かるだろうと思った。