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しーく・せるふ・おんらいん  作者: 士月十旭
13/13

類は自然と友になる

誤字脱字が酷かったらごめんなさい。

ソロで活動するおれにとって広場は森へ行くための通り道でしかなく、目的あって利用するのは……今日が初めてだな。

初日のはアカツキに拉致られてパーティーメンバーとの自己紹介が終わったらすぐに別れたし。ノーカンでしょ。


それにしても人が多い。

そんな中、噴水前の一角で遠巻きにされながら視線を集めている冒険者の団体がひとつ。

視線を送る者たちも冒険者なのだが。


遠巻きに見ているのは、ガチガチの装備をしたベテラン勢から一部ランクの高い装備を持てるようになった中堅組。姿(かたち)だけ整えた感が見てとれる新人さんたちまでいる。


よほどの有名人集団なのか。

トップを走る攻略組とか?


さて、どうするか。

行く手をふさぐ冒険者たちを掻き分けてまでふたりが待つ噴水に近づきたくはない。疲れるうえ、いらん注目をあびそう。

しかし、


「邪魔だな」


!?

心の声を代弁された感じで真横、といっても頭ひとつと半分ほど上から聞こえてきた声に振り仰ぐ。

知らぬ間におれの横には大きな黒い男が立っていた。


装備した服は全身黒で統一され、髪も、微かに見えた瞳も黒。

違うのは肌の色と首が隠れるまで無造作に伸ばされたような髪をハーフアップに結うため使われているえんじ色の紐くらいだ。


「何か用か」

「噴水、行く?」

「そうだな。気は進まないが……!、どうやら待ってればいいらしい。あいつの方がこちらに来るそうだ」

「そ」


会話の途中でメールが届いたようで男は動きを止め待つ体勢をとる。

行くなら便乗しようとしたあてが外れ、邪魔にならない位置まで移動しようとしたおれの襟首が掴まれた。


「ん?」

「待て。お前がキョウと幼なじみでアカツキとは双子のタタで合ってるか?」

「ん」

「そうか。なら一緒に待ってれば向こうから来る」

「ん」


「向こうから」と言った視線の先に噴水がある。

どうやら男の約束の相手はアカツキたちともに行動しているらしい。

待つだけでいいなら待とう。面倒事になりそうだったら逃げよう。


ただ待つのもあれなので今のうちに仲間になったミックと交流を図ろう。

まずはエサを。腹ぺこのはずだから。

持ち物の中から与えて大丈夫そうなものを探す。

露店の男は「草なら何でもいい」と言っていたけどミックは「植物を食べる」と説明されていたから。材料が植物のみなら大丈夫かな。


試しに蜂蜜キイチゴジャムの残りから、ひと掬いした指を提げた虫かごの隙間から中に入れてみる。

するとミックは、今まで動かなかったのが嘘のように素早い動きでおれの指に食いついた。

モンスターだけあって、小さいといっても手のひらいっぱいのサイズがあるミック。指先は完全にミックの口の中に消え、一瞬、しっぽの毛が逆立ち膨らむ。

(かじ)られるかもの不安はくり返されるあま噛みのくすぐったさに吹き飛ぶ。

むしろ一所懸命ジャムを食べるミックの姿に、嬉しそうに振られるおしり?に微笑ましくなる。


よほどお腹が空いていたのか、ハチミツの魅力が凄いのか、気がつけば瓶が空っぽになっていた。

多少お腹が満たされたことで食欲が出てきたミックが「キュゥキュゥ」と可愛いらしい声で次を催促してきた。

可愛さに負けて蜂蜜オレンジジャムでおかわりさせてあげる。


ミックが満足して落ち着いたのは空瓶をもう1つ増やしてからだった。

どちらもまだ半分以上は残っていたのに。本当によく食べる。


満腹で眠くなったのか体を丸めるミックを観察していると、少し持ち上げた口から黄色っぽい糸が飛び出す。

あっという間に糸がミックの体を覆い隠す。

出来あがった繭玉は少し赤みがかった黄色で、売られていたテンチュウの繭玉と同じか少し大きい。

ミックは小さい体に反して吐き出す糸の量は多いみたいだ。


「テンチュウか」


やはりでき損ないが嘘っぱちでとても優秀だったミックに満足しているおれの少し下から声がかかる。


おれがエサをあげている間も一緒に観察していたのか、男はおれのすぐ隣で今も片膝をつきしゃがみこんだまま視線は繭玉になったミックに向いている。


「違うけどそう」

「変異種か」

「ん。ミック優秀」

「そうか。まだならきちんとギルドで登録しとけ。可愛いくて優秀だと盗られるぞ。テイムモンスターなのだろう?」

「すぐ行く」

「ちょっと待て」

「フミ゛ャッ……!!」


踵を返し広場に背を向けたおれを引き留めるため無遠慮に掴まれたしっぽ。そこから頭の上にある耳の先に向けてゾワッとしたなんとも表現できない何かが走り、原因を振り払いたくて咄嗟に後ろ回し蹴りをくり出していた。


「すまん」


自分の手の中に取り戻したしっぽを宥めるように優しく擦る。

その間。うまく避けたようでダメージを受けてない男からすぐに謝罪の言葉をもらうが一定の距離をキープして絶賛警戒中である。


「キョウたちの姿が見えたからつい。あー…詫びになるかわからんが甘いものは好き、だろ?」


言われて噴水の方へ目をやればまだ人を挟んでいるが確かに見覚えのある緋色が見えた。

次いで下から差し出される手のひらに視線をおとす。

そこには白く丸いものがひとつ。

形が少しいびつで表面には粉がふられ中に包み込まれた黒いものが微かに透けて見えている。


「大、福」

「嫌いか?」

「ぅぅん。お返し」


大福はお詫びの品になるが大福をもらえたことで米、最低限もち米の存在が確立している。さらに小豆も存在する。その情報に対するお返しとして薬茶(極)をプレゼントした。


「茶!?助かる。いつもあった物足りなさがこれで解消される」

「ん。大福、お茶必須」

「何だか気が合うな。ついでにフレンド登録するか?」

「ん」


しっぽを掴まれびっくりしたが故意にしたわけではなく謝ってもくれた。ミックのことを褒め、心配してくれたし、大福にはお茶の精神からいい茶飲み友達になりそう。

薬茶(極)の回復効果よりもお茶の存在を喜ぶ。そんな相手である男からの申し出を断る理由がない。


慣れないながら無事に登録を終える。

フレンドリストを開いて見ればチカネの下に知らない名前が増えている。

これが男の名前なのだろう。


「ツル『キ』?」

「そうだ。そういや俺の方は名乗っていなかったな。改めてツルキだ。リアルの名に関連した動物をふたつ並べた名だから間違いじゃない」


ツル「ギ」の入力間違いではなくあえての「キ」らしい。

2種類の動物を並べてそう読めそうなものは……。


「千年万年?」

「めでたい感じがしてでいいだろ。呼びにくかったらテキトーに好きに呼んでくれていい」

「ん。つーさん。よろしく」

「よろしくな。タタ」


落ち着いたところで大切に持っていた大福にパクつくおれの隣でツルキも自分用に大福をもう1つ取り出した。ふたり並んでいっぷくする。

ツルキが二口で大福を平らげお茶を堪能しているのを尻目に、《SSO》で初の和菓子をできるだけ長く楽しめるようにおれは一口一口を小さくして味わう。


最後の一口を口へ運ぼうとしたとき、前方からものすごい勢いで誰かが迫って来た。


「おいしい匂いがするうぅぅぅ!!」


おれにぶつかる一歩手前で急ブレーキをかけてキレイに止まった桜色の髪に朱い瞳をした少女がひとり。

突然の乱入者を目の前に、どちらも淡い色だからまだ目にやさしいな。と、相手の髪と瞳の色についての感想に軽く逃避をするくらいには混乱中なおれ。

その間も鼻をひくつかせ手元に残る大福を探り当てた少女はおれの手首を掴み強引に自分の口の中へ運ぶ。という暴挙に出ていた。


「このおバカ!」


ゴンッ!


予想外の行動に対処できずにいるおれの前へ、叱責の声とともに鞘付きの剣のはらでのフルスイングを少女の後頭部にお見舞いする金髪碧眼の少女が新たに登場した。

大きな鈍い音がしたわりにダメージが少ないのか、打たれた後頭部を擦りながら桜色の少女はこちらに背を向け拗ねた態度で言い訳を始める。

対して金髪の少女は慣れた様子で冷たくあしらいこんこんと説教を始めた。


ちょっと前までのまったりのんびりした空間にいたはず。

それが目の前の少女たちによって180度変えられた怒濤の展開に、今もなお続く騒がしさについていけずただ唖然と見ている。


そんなおれの肩を引き、ツルキがそっとふたりから巻き込まれない程度の距離で離してくれた。




「地べたに正座って。今度は何やらかしたんだ、ユヅ」


ついには桜色の少女を地面に正座させ、ここぞとばかりに日頃の不満までぶつけ始めた金髪少女。

この場から離れたいが待ち合わせのため動けずなぜか遠くから見守るかたちになっているおれとツルキ。


そんな奇妙な状況にピリオドをつけたのはおれの待ち合わせの相手のひとり。アカツキが発した妹への呼びかけだった。


ユ、ヅ?


呼びかけるアカツキの目線は桜色の少女に向いていて。桜色の少女は今も正座させられ中で。突然現れておれから大福を強奪した少女がユヅ……?


「何って。タタ兄の手から食べかけの大福をもらっただけだよ」

「食べかけの大福……それ、嘘だろ」

「嘘じゃ」

「承諾を得なきゃもらったって言わねぇぞ。で、基本的に自分の分を誰かに分けるくらいなら新しいもの別に用意するタタが、やるって言ったのか?食べかけの大福を?」

「それは……」

「その様子だとまだ名乗りもしてないだろ。ユヅはさっき俺から『タタ』の容姿を聞いて知ってるだろうけど、タタは『ユヅ』の姿を知らないからな。よかったなGMコールされなくて」

「えっ!?うそ……タタ兄ゴメン!」


頭の中を整理している間も続いていたアカツキとユヅ(?)の会話の内容を聞いていく内にあまり信じたくはないが、この食い意地のはった少女が我が妹であることを理解した。


今はユヅだとわかったから許せるし諦めがつく。

しかし、さっきまでの知らないプレーヤーに襲われた立場からしたらアカツキいわく、十分GMコール案件になる内容らしい。


と、言われたところで被害は小さく、攻撃されてダメージを受けたわけでも大切な装備やアイテムが奪われたわけでもない。

今回のようなケースだったらGMコールをしてわざわざ自分から不必要な関わりを持ちたくはない。


だって、めんどい。


聞かないけどたぶんツルキも同じタイプの人間な気がする。

そんなことより自分の好きなことをしていたい。という。


「じょぶ。ギブ素材」

「りょーかい。いっぱいあるから好きなの選んで♪」

「の前に移動だな」


ただ許すよりも何かあった方がいいかと思って試しに素材を要求したらあっさり了承を得る。

しかも種類が豊富で自由に選べる特典つき。


まずユヅの持つ素材を確認したくていそいそ近づくこうとするおれを、コートのフードを掴むアカツキの手が阻止する。

今おれたちがいる場所が広場入り口付近ともあっていい加減邪魔になると。



移動場所の候補を各々があげ話し合う中、何の情報も持たないおれはひとり離脱してさっきまで一緒に待っていたツルキの方へ避難する。

すると、たぶんアカツキと一緒に来たのだろうキョウと親しげに会話していた。


「あいつ?」


キョウを指差し、暗に待ち合わせの相手かをツルキへ確認する。


「こらこら指差すな。で、『あいつ』って何?」

「そうだ。ただ、今回の目的が俺とタタとの顔合わせの仲介だったらしい。だがもう俺たちが友になっているから意味がなくてな」

「キョウ知り合い?」

「従兄弟だ」

「おい。ふたりして無視はひどくないか。前に一度話した招待パスをくれて、刀をつくろうとしてる従兄がこのツルキだよ」

「条件付きでな。まさかその細工師がタタ?裁縫師ではなく?」

「何で裁縫師?」

「テンチュウをテイムしていたからな」

「はあ!?」


《SSO》での知り合いかと思ったらまさかの従兄弟。

似てない。つながらない。納得しずらい。

和菓子好きだけが一緒だ。


それにしてもツルキが刀づくりの人だったとは。

今度チカネも呼んでお茶会がてら話を聞いてみたい。楽しそう。


ひとりツルキについて思案していると、急に強く両肩を掴まれる。


「タタ!テイムスキル獲得した条件って何だ!?」


興奮気味のキョウをツルキが引き剥がし詳しく聞く。

「テイム」をスキルに持つプレーヤーはキョウが知る限りキャラメイクで事前に保持していた者たちばかりで、後から獲得した話はおれが初めて。

魔法に憧れ種族で森人族(エルフ)を選び、魔法特化型のスキル構成を築いたというキョウ。たが、それとテイムに対する憧れはまた別だと力説してくる。


特に隠すことでもないので簡単にスキル獲得までの経緯を話す。

また詰め寄られるのは嫌なのでミックが変異種であることは伏せたままだ。

この内容が参考になるかはどうかは知らない。


「マジかー。全然参考にならねー。そんなテンチュウ売りの話聞いたことないぞ。何か限定条件でもあるのか?いや、でも……」


予想通り、買い物のおまけみたいなスキルの獲得仕方は特殊で前列がない。そこに加えかなりの運要素が関わってくるパターンのようだ。


項垂れるキョウは諦め切れず考察しながら何やらぶつぶつ呟いているが声が小さくてうまく聞き取れない。

キョウから解放されたおれは刀づくりの進み具合や何を依頼したくて細工師を探していたのかツルキに聞こうと口を開きかけたところで召集がかかった。




話し合いの結果。ユヅの提案で移動先はギルドに決まったそうだ。

なんでもギルドには作戦会議や会合、お茶会やお披露目会など様々な用途に使用できる部屋をいくつか貸し出しているらしい。

料金は使用する部屋のサイズと利用時間によって変動するシステムで。



よくわからないおれは黙ってみんなの後ろをついていく。

ギルドに着いたらミックの登録もしなくちゃ。



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