7 ジーナの誘い
間が空きましたが、続き投稿です。
作戦が一つ残らず失敗に終わり、僕は自室で不貞寝をしている。今も部屋の外にはイリヤか他の護衛が張り付いているだろう。
「はぁ……」
僕は何度目になるかわからないため息を吐いた。もう3日も会いに行けていない。このまま二度とリザに会えないのだろうか。落ち込んでいると、不意にノックの音がした。またジーナが来たらしい。入るように侍女に伝える。
「ご機嫌よう、カミル様。また何やら塞ぎ込んでいらっしゃるようですね。昨日までは元気に護衛を撒こうとしていらしたのに。兄が頭を痛めておりましたわよ。一体、兄の目の届かないところで何をなさりたいのやら」
ちらりとジーナが扉を見る。今入り口に立っているのはイリヤのようだ。
「何だって良いだろう。僕だって誰にも言いたくない秘密くらいあるよ」
「あら、今日はつれないですわね。どうです? 気分転換にお茶会でも参加なされては?」
今日の目的は僕をお茶会に誘うことのようだ。お茶会は苦手なんだけど……
いつも通り断ろうとしたが、ふと閃いた。そうだ、お茶会だ。
「いいよ。その代わりお願いがあるんだけど――」
ジーナは予想外の快諾に驚いたが、僕の話を聞くにつれて悪い笑みを浮かべた。
打ち合わせが終わると、ジーナを見送るためにわざわざ扉へ近づく。それから侍女が扉に手を掛けたところで「それじゃあ、明日!」とわざと大きな声を掛けた。
「ええ、こんなに明日が待ち遠しいのは初めてですわ!」
ジーナもわざと廊下に立つイリヤに聞こえるようにとても嬉しそうに笑った。――毎回断っていたから本当に嬉しいのかもしれない――すると思惑通りイリヤが食い付いてきた。
「ジーナ、明日何かあるのか?」
「ふふふ。カミル様とお茶会をするのよ。羨ましいでしょう?」
「お茶会? 急だな。他に誰か誘っているのか?」
「いいえ、誰も。カミル様と私だけのお茶会ですわ! もちろん、お兄様も入室禁止ですのよ。覗きなんて野暮なことも認めませんわ。いつもカミル様を独り占めしているのですから、これぐらいよろしいですわよね?」
無邪気な笑顔だが、言葉の語尾には『異論は認めない』という強い意志が込められている。イリヤも日頃、ジーナを蔑ろにしているので文句は言えない。
「カミル様は、よろしいのですか? その……あまりお茶会はお好きではなかったと記憶しておりますが……」
「うん。大勢の令嬢の相手をするのは苦手だけれど、今回はジーナだけだからね。美味しいお菓子を用意してくれるっていうし、楽しみだよ。 期待してるからね。ジーナ!」
ジーナに笑顔を投げかけると「ええ! それはもう!」と頬を紅潮させて意気込んだ。
「そう、ですか……」
イリヤはまだ納得していないようだが、それ以上は何も言わなかった。
そうこうしていると、隣の部屋が俄かに慌ただしくなった。
「また咳き込んでおられるのか……今日は多いな」
隣は王妃の部屋だ。
療養に来てからも、母の病気は一向に治る気配がない。熱もなく、痛みもないのだけれど、咳が止まらなくなる時がある。他に症状がないことが却って皆を不安にさせる。原因が分からないために適切な治療が出来ないのだ。
せわしなく扉が開くたびに、母の乾いた咳の音が廊下に響いた。




