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第五章 繰符

ゲームファンタジー第五話!

もうお馴染みのキャラとそうでもないキャラがやっぱり暴れます


今回はちょっぴりシリアスに進みますよ

※この小説には作者の混沌が(以下略)

「さて、第二ラウンドだ…行くぜ、ガキ共」

幼い姉弟は身構える。ジャリ…と足元のコンクリート片が音を立てる

「やぁっ!」

長剣を大きく薙払う。灰色の刀身が無骨に鈍く光を照り返す

幼い姉弟はまったく同時にカードを引き出す。そのカードの名前を叫んで束縛から解き放つ

「短剣『銀の煌めき』」

「短剣『銀の煌めき』」

まったく同じ名前の、まったく同じ短剣が二人の手に握られる。銀色に輝く刃渡り30センチ弱のナイフより大きい、簡素な短剣だ

それでクロアの剣を弟が受け止めて、姉が打ち上げる。

剣が浮いた僅かな時間に姉と弟の役割が入れ替わり、姉は剣の落下に備えて短剣を横向きにしてまるで柱のような役割を果たす。

その間に弟は距離をつめて、短剣で切り裂く「ぐっ…」

傷口は浅いが、広範囲を薄く斬られたので痛みは酷い。ジリジリと痛みが脳の思考を邪魔する

「ヨロワ!追撃するよ!」

姉のその言葉に弟は頷いて二人同時に攻撃体制に入る…。低く構えた姉と高く構えた弟、二人は抜群のコンビネーションで高く、低くと構えを切り替えながら交互に斬りつけてくる。その速さは僅か0,の世界…クロアは短剣相手にはあまりにも長すぎる剣を必死に使いこなして受ける傷を減らしていく

「やるわね、クロア」

ふふん、と上機嫌に姉が笑う。クロアは肩で息をしながら隙を窺う

「やめた方がいいですよ」

不意に後ろから声をかけられる。いつの間に回り込んだのか弟…ヨロワと言ったか、そいつが空を掴むようにして無垢な笑みを浮かべていた

「『不可視の紐インビジブルスティール』を張り巡らせました。抵抗するならばこの糸を引っ張ります」

…動けない。

剣を振ろうとしたのに体が動かない「くそっ…」

先程見たトラップの紐よりも更に小さな煌めきが目に入る。そしてあのトラップの切れたものの正体だと気付く

「それじゃ、ばいばーい」

姉のほうが紐を引くように促す

ヨロワは、くいっと紐を引い…

「水呪『水蛇』」

コンクリートの床から小さな蛇が飛び上がり姉弟の手や足に落下する

「きゃっ」

「あわっ」

パッとヨロワが紐を放し、緩んだ紐を水が切り裂く。自由になった手をさすりながら斬戟の発生地点を見る

「よう、探したぜクロア」クックック、と笑いながら相棒のガルトが『竜の尾』を担いでやってくる

「ガルト…」

姉が悔しそうに呟く。ガルトは平然と青竜刀の先端を向ける

「ノピアか。トラップマスターの異名は伊達じゃねえか」

ちっ…と舌打ちしながらガルトはクロアの前に割り込んで小さく呟く

「…迂濶に動くな、こいつらのメインは罠による撹乱、そしてそれを追撃出来るコンビネーションだ。それさえ気をつければ対等にやりあえる」

ポタポタとクロアの腕から血が垂れているのを見てガルトはやや眉をしかめる

…まずいな、と

(ああは言ったがあの二人の実力は上級ランカーと同等クラス。庇いながらどこまで戦えるか…)

ガルトは相手の様子を見る

「お姉ぇちゃーん!ぐすっ、蛇がー!」

「ほらっ取ってあげるから泣かないのっ」

ひょい、と蛇をつまんだ姉…ノピアの手は震えていてかなり恐がっているのがわかる。だが彼女はヨロワの蛇をとり、

「くらえっ!」

ガルトに向かって投げつけた

「…解除」

小さな蛇がパチンと弾けて水に変わる。

全ての蛇が同時に水に戻って、ヨロワは驚いて目を見開く。まさか『解除』してしまうとは思っていなかったのだろう

「あ…ありがとー!」

思わずぺこりと頭を下げたのにクロアは笑ってしまう

「あっ、お姉ちゃん?」

ゾワッとクロアは悪意を感じてノピアを見る。「…は」

よく聞き取れない

「ヨロワのありがとうは私のなのにぃ!!!」

キー!と地団駄を踏んでイライラと感情を爆発させてノピアが叫ぶ。きょとんとヨロワが姉を見つめて首をかしげている。

自分が原因なのに気付いていないらしい

「罠符『落とし穴』」

二人は咄嗟に前後に飛び退く。ガルトは前に、クロアは後ろに、だ。

ボコリ、と地面に空洞が出来て遥か下層まで続いている。落ちたらまっさかさまだろう

「丁度いい!下へ行くぞ!」

そんな穴にガルトが飛び込む。そして一つ下の階で飛び降りるように手招きしている

「っ…行ってやらあ!」

跳ぶ。体が奈落に通じる穴に入った瞬間

ガザザザザ!

激しいノイズが世界を震えさせた

「これ…は…」

BUGが出現した時と同じ…いや、前回よりも遥かに激しいのだ。

「ガルト、逃げろ!!」

空間が震えているのが見えた。何かはわからないが明らかに普通ではない気配を感じてクロアは身震いする

床に着地して剣を構えて突撃する。歪みは広がり、そのフチは徐々に黒くなっていた

「なんだよ、クロア…」

ガルトも背後の異変に気付く

「水符『さざなみ』」

キンッとガルトが剣を振るった先から空間が波のようになって揺れる。その波は歪みに触れた部分だけが消えてしまっていた

「コイツ…無効系の能力か?!」

ぞぶり、と歪みが波打って中から不思議なものが現れる縦円と横円を組み合わせたような、不思議な物体がふわふわと現れる。

二つの円の中心には黄色い球体があり赤と青の円によってかなり目に映える

「BUGか…」

クロアは剣と共に低く構える。さながら忍者かなにかのようにも見えた。

「こいつ…ぐっ」

ガルトは突然頭をかかえて痛みにうめきはじめる。駆け寄ろうとしたクロアを片手で制して自分の頬を叩いて気合いを入れる

「はっ…忘れたことを思い出しそうだったぜ」青竜刀を構えて彼は叫ぶ

「行くぜクロア!遅れんなよ!」

「あぁ、お前もな!」二つの武器が振るわれる音を聞きながら、一つ上の階にいた双子はトークカードを使用していた。

「…うん、見たこともないやつだよ?うん、うん。そうするね」

ヨロワがカードに向かってうなずいている。相手は黒髪の青年だった。

「ノピア、ヨロワ。今俺の方にも『ヤツラ』が来ている。一般プレイヤーが多いから少しばかり時間がかかる。

俺がそちらへ向かうまで時間を稼いでくれ」男はそう言うと、ノピアの承諾を待ってから連絡を絶つ。

ノピアはヨロワを呼び寄せて、下の階に叫んだ…剣が止まり、弾かれる。

もう四回も突撃を繰り返し、もう四回もこうして剣と一緒に吹き飛ばされている。クロアは切った唇を舐めて苛立ちながら呟く

「あたらない…なんでだ?」

ガルトは、その服で太刀筋を隠しながら五回目の攻撃を試みる

「ちっ…」

ぐいん、と不自然に青竜刀が止まり、左側に弾かれてしまう。何度も見ている光景にクロアは思わず呆れてしまう

「バリアかよ…ふざけやがって」そう不平を口にしたとき、上から叫びが降り注ぐ。

「縛符『不可視の紐インビジブルスティール』」

ヨロワが呪符の使用を宣言する。

不可視の糸はクロアとガルトの間を抜けてBUGを縛り付けた。

「聞いて!私たちが抑える…だから!」

ノピアの言葉を遮り、クロアは笑う

「俺らが弱らせる…でいいな!」

ザザッとノイズが走る。

何故だか悪い感じがしなかった。

クロアはまた浮かんで来た言葉を呟く。軽やかに、重く、夕刻の渓谷のような澄んだ声で

「剣技『影閃斬』」一瞬でBUGの反対側に移動する。

「ジジジ…」

BUGの球体が揺れて音をたてたかと思うと金色の粒子に変わって姿を崩していく

「…何だ?今のは」

ガルトが不思議そうに呟く。クロアの二枚目の呪符の力に驚き、BUGの消滅に疑問を感じたのだ

ブゥン、とクロアの四方が歪む。

「やべえ!逃げ…」

「呪符『静電気』」

呪符を発動しながらクロアは歪みの一つに腕ごと呪符を叩き込む。水のような感触の歪みは波紋のように大きく揺れて呪符の発動と共に収縮した

閉じきる直前にクロアは腕を引き抜いて一つだけできた退路に身を踊らせる。「やるわねぇ…」

「クロアお兄ちゃん、がんばれー!」

二階から思い思いの言葉が降り注いでくる。お前等も手伝えよ。と思いを込めながら剣を叩きつけるように歪みに叩きつける

BUGを攻撃した時のように剣が動きを止めて、弾かれてしまう

「直接内部を叩かないと駄目か…」

畜生め、とクロアは悪態をついて地面スレスレの低い構えをとる。剣を歪みに突き立てようという試みだった

「やるわねー。ん?」ノピアの袖をヨロワが引く。そして、通話状態になったトークカードを見せる

「こっちは終わった。そっちの状態はどうだ?」

先程、二人が連絡をとった青年がカード越しに聞いてくる。彼の目は黒く、短めの髪のせいでかどこか鋭い印象を受ける

「…どうした?」

ノピアはなんでもないと首を振って答える

「クロアが一体倒したわよ、うん、死んだよ」

10歳にも満たないであろう少女は愛らしく笑う

「…そうか。ならお前達も手伝ってやれ。どうせなんもしてないだろ?」

ぷくっとノピアは頬を膨らませて否定する。そして青年は問答無用で通話を切った

「うー…しょーがない!やるよ!ヨロワ」

「うん!お姉ちゃん」とうっ!とクロアの前に二人の子供が飛び降りてくる。その二人はうまく前転して衝撃を和らげると立ち上がりざまにカードを引いて、叫ぶ

繰符(そうふ)

「『大平原への片道キップ』」

カードが力を解放する。

「繰符、だと?」

突如吹き始めた突風に窓ガラスが割られていき、廃墟の中身を風が吹き抜けて埃を舞い上げていく

そして、強くなり続ける風に足を掬われて飛ばされる

「ぐっ!」

窓から飛び出す前に手を伸ばすが空を掻く

―遥か彼方に地面が見えた。

完全に空中に飛び出してしまった。カクンと体が重力に引かれて落下を始める

「くっそ…」

もう手が届かない。剣を伸ばしても壁にかすりもしない…遥か下に見えた黒いアスファルトの地面が急速に広がっていく

ビルの周囲しかない高さだけのエリアが軋むような音を立てる

BUGか?…とクロアは奴らが出たとしても何もできない現状を笑う

だが、実際は違った。

アスファルトに緑のものが見える。それらは建物にもまたたくまに広がりビルを緑色に染め上げる

唐突に建物が垂直に崩れていく

凄まじい勢いでビルはペシャンコになり代わりに平面が肥大化していく。

「ぐはっ」

地面に墜落する。地面はそれほど固くなくて人がたに穴が空いただけである

「くそっ…古典漫画か…」

穴のフチを掴んでクロアは立ち上がる。やっぱりお約束である

「黙れ…シロツバ」

イライラとクロアはいもしない人物に悪態をつく。ひひひ

「あっ、クロアお兄ちゃんはっけーん」

パタパタと少年が駆け寄ってくる。そういえば今までよく服装を見ていなかったのに我ながら驚く(二つの意味で)

ヨロワは黒髪を短いショートカットにしており、丸く大きな黒い目を輝かせている。

服装は半袖に短パン。暗めの紺色に赤い波のようなラインが入った、身軽な服装をしている

「ありゃりゃ、ずいぶん飛ばされたわね」

ノピアはヨロワと同じ色の髪を長めに伸ばしてそれを高く二つにまとめている。

ヨロワとは対照的にやや尖った目付きをしておりどことなく気丈な姉のような雰囲気を纏っている。実際そうなのだが。

服装はヨロワと同じ記事を長袖のシャツにして、やや青みがかったフリルのミニスカートとあわせている。

おそらくフリルのせいで色が淡く見えているのだろう

「うっわ…派手にやったわね」

「アニメみたい!すっごーい!」…個性豊かな感想どうも。

クロアは一面に広がる腰くらいの高さの草原を見渡す。いつの間にかエリア表示が『平原』に変わっていて驚く

「ねっ、すごいでしょ?」

何が?

クロアは冷静にツッコミをいれておく

「馬鹿。私たちの『繰符』…つまりぃ…」

幼い少女はうーんと頭をひねり、言葉を捻出する

「す…すごいやつよ」

「答えになってないぞ」

クロアの呟きは空から降り注いだ光線に遮られてしまった

「ちっ…、上を取られたか」

クロアは地面に埋まった『長剣』を抜く

やや黒ずんでいるが使用には問題ないだろう

「下がってろ」

クロアは空へと跳び上がる。

いや、無理だった

「流石にジャンプは…」

「無理があるよぅー」

うっせばーか

低く構えなおす。距離は5メートル強、投げても届く気がしねえ

ビビビ…と上空にいるBUGが攻撃体勢に入るのを見てクロアは諦める

「届かねぇな…チクショウ」剣を降ろす

その時、双子が同時に呟く

「「届けばいいの?」」

スッと二人が一緒に…背中合わせのように一枚のカードを解放する

「繰符」

「『重力の増加』」

ズッ…と足が地面にめり込む。そして徐々に頭が重くなっていき剣を杖がわりにして耐える

「なんだ…これは」

クロアの呟きに、左右の眼を互いに一つずつ蒼白く輝かせている姉弟が答える

「「世界の『重力』を加算してる。ほら、倍に」」

その言葉の後にクロアは凄まじい力を頭の上から浴びせられる

「「ね?」」

姉弟はニコリともせずに笑う

それにクロアは言い知れない恐怖と苛立ちを覚える。もはや剣だけでは耐えきれない重力を跳ね退けながら掴みかかる

「おい…やめろ。」

二人はまだ加算を続ける

「やめ…ろ」

愉快そうに倍と唱える

「や…め」

二乗と唱えて、クロアは地面に倒れる

BUGも堕ちて、潰れるような音をたてている。草もまるで押し花のようになっている

もはや指先を動かすだけで精一杯の重力の中クロアは必死に動こうとする

カチリ、と何か硬いものに指があたりクロアはそれを引きずり出す

「…」

何かを唱え、引きずり出した白き剣を薙ぐ

ブツン、と何かが切れる音がした

―――――

あとがき

―――――

こんにちは。シロツバでっす

今回のお話、楽しんでいただけましたか?ようやく始まった感がありますねっ!(ぇ

シロツバ自身が飽きやすい性格なので一話丸々戦闘なんて無理だと前回思っていたんですが…意外といけましたね(^^;

気付けば上限に届きそうでビックリ


さてさて、今回は今までよりも深みが増したかな?(聞くな)

なんだか今まで足りなかった物が見えてきた気がします。それがスパイスになってくれると…いいなぁ…


あっ、そうそう

そろそろバレンタインですね、実質男子校なんで無縁ですが女性の方、チョコ頑張って下さいね

『去年逆バレしたので』あの気持ち分かります。『去年(略)』

怖いよねー、あれ。うまくいったとき嬉しいんだよねー、あれ。


…畜生め(ぼそっ)


さて、今回のあとがきはここまで!

また次回お会いしましょう!( ̄▽ ̄)ノシ

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