第二十八章 罪なす災いの剣
―――――
まえがき
―――――
リニューアル後の初投稿です
ところどころ変わって使いにくい…(^^;
慣れれば問題ないんだろうけど、それまでは辛いなぁ
特に改ページが見えないから多用するシロツバにはややきつい仕様変更です…
とりあえず、まえがきとかの領域が延びて幸せです。携帯からだと全部埋められないのが口惜しいですが…
さて、本題
今回は前回の『下巻』にあたり、物語の終盤戦…気合いいれてがんばりました
今まで溜めていた物を一気につめてパッケージング、皆様にお届けします
それでは、あとがきでお会いしましょう~( ̄▽ ̄)ノシ
天より舞い落ちる金の羽が今、この場にいる四人の視線を釘付けにする。ひらりひらりと揺れる金色の尾羽根は天に掲げたエイドの手に握られる…。
「フィドフニルを殺す、唯一の武器…。今ここに具現化してその力を行使せよ!荒れる炎は紅蓮を焦がし、振るう力は天を裂く。
フィドフニルの尾羽根を対価に解き放て!『罪なす災いの剣』」
天空を切り裂く炎が現れる。天より出でたか、地より現れたか、その強大な火力は天地を無差別に焼き焦がしてゆっくりと姿を安定させていく……。
「これは…」
―マズいわね
クロアとアレイアが小さく呟いた。二人の眼前には大きさ数メートルを誇る火の塊が陽炎を共に揺れていた
その圧倒的な存在感と熱量に全身の筋肉が弛緩しそうになり、アレイアにクロアの名を呼ばれてハッとする
屈伏にはまだ早い。手にした『矛盾交差』を軽く操り息を整える…。よし、行こうクロアは両端の刃に意識を集める。左右の打ち分け、その記憶を呼び起こす…
以前戦った記憶におぼろげながら鎌の軌跡を見つけだしてそれを頭の中でイメージする。このゲームの戦いはイメージに依る戦闘。イメージすればするほどそれは優位に作用する。思考を止めれば殺される。思考を止めさせれば殺せる。クロアが戦いの中で獲た最善手への道はそれだった
「初刃『袈裟』」
易々と受け止めたエイドの足下に刃が突き刺さる。狙いを外した?そう思わせて次の技を連続する
「『返し刃』ぁ!!」
一気に振り上げた白い刃をレーヴァティンが受け止める。流石に簡単には割り込めそうもないこの敵に小さく舌打ちする。
「『炎刃…」
冷たい声が一撃で終わらせる技をつむぐ。
「…皆滅』」
大気そのものがレーヴァティンに引き付けられて一点へと強風が吹き荒れる。その中で身動きを取れずに出来た隙に回避不能な一閃が放たれた。
刹那的に防壁を展開して威力の軽減を試みるが…その火力を目にしてそんなもの気休めにしかならない事を悟る。何故ならエイドの武器は悪意のような業火…いや、いかなる表現でも現し尽くせないような火力で武器を振るった。
『一撃断殺』は見たが…『一撃滅殺』とは呆れて物も言えない…。荒れ狂う炎の濁流に呑まれたクロアは耳元で小さな声を聞いた。
「世話が焼けるわね…新人クンは」熱を感じたのは一瞬だけだった。次に感じた熱はどうやら違うようで…柔らかな匂いを連れていた。
その匂いの主は笑いながら手にした剣を一閃した。
「やっと追いついたわよぅ…クロア」
「いいとこ取りだな…エアリアル」
手にしていた幻影氷剣が砕け散りパリンパリンと床で細かく割れる。熱は絶対零度にまで引き下げられた大気が相殺し、消滅していた
「…やるわね、エアも」
さらに声がして振り返る。そこには六人の姿があった
「御簾、ちょっと黙ってて」
「クロア。無事か?」
「お兄ちゃん!」
「ま…平気そうじゃない。ヨロワに心配させてんじゃないわよ」
「援軍到着…っと」
瀬名、楼騎、ヨロワ、ノピア、嶺がそれぞれ空中に浮いた機械から飛び降りてくる…。なんだあれ?UFOか何かか?
「おかしいですね…。あなた方は…御母様が足止めをしていた…はず…っ!」
レーヴァティンが再起動してその炎を周囲に撒き散らす。エリア全てを巻き込むほどの大斬撃を放った直後にこれだけ早く起動するとは…伊達に伝説の名を冠してはいないということか
「悪いな…俺はお前と遊んでられねぇ…。終わらせるぜ!ウィストレア!」
エイドが振り返る。その先には砕けた六花錐…そして、鎌を手に立ち上がる少女の姿があった
「エイド…クロアは、私が仕留めます…。お姉様を…巻き込まないで…」
レーヴァティンの破壊力はBUGですら殺しきれないらしい。胸を押さえて息を切らせる彼女を見てエイドは小さく首をかしげ…そして頷いた。
「そちらはお任せしましょう…。私は他の侵入者を排除します」
クロアは武器を握りなおし、他の面々は武器を手にエイドに照準を定める。思った以上にこの場所は泥沼と化してきていたウィストレアの鎌が光る。
柄で正確にクロアを狙い、それを右手で受けた彼はそのまま吹っ飛ばされる。二メートル程度飛んで着地する。地面で惰性を殺して着地…武器を左手から右手に持ち変えてウィストレアを迎え撃つ
「ふん、多少はやるようね?クロア」
ギリギリと細い柄で槍のような刃を受け止めたウィストレアは呟く。幅数センチの円形部分で正確に受け止めるコイツの技量もいかがなものかとクロアは内心ため息を一つついた
「鎌符『弧を描く銀の軌跡』」
ヒュ、と右下から鋭利な一撃が手の矛盾交差を弾き、鎌の刃とは反対側の金属部でクロアを殴り付ける
頭が割れそうに痛み、くらりと意識が遠退いていく…。先端部が腹部を突き、息が止まる。前のめりになった所を刃が首めがけて走る
ガツン、と硬いものが顎を打ち体が舞い上がる
「あれ?ミスった…?」
刃のない中央部分で殴られたクロアはアレイアの隣に墜落して、そのすぐそばに矛盾交差が落ちてくる
―クロア!大丈夫?!
「っ…まだまだ…」
つぅ…と垂れてきた血を拭い、アレイアの隣で立ち上がる
「お姉様…私は、あなたを殺します。あなたの大切なものを壊します。嫌ならば抵抗してみなさい!」
鎌を振り構えたウィストレアに小さくクロアは呟く「お前、何を企んでる」
ウィストレアは何を?と首をかしげる
「何のこと?私は、クロアを抹殺しろと言われた。ならばいっそのこと二人をまとめて殺っちゃえばいい話…」
「嘘だな。お前…正気だろ?」
ウィストレアは鎌を振るう。その狙いはクロアの首…
「何を!」
「呼び方、アレイアから『お姉様』に戻ってるぜ?忠犬が」
ピタリ、と鎌が首に触れて止まる。薄く切れた場所からまた血が流れる
「…迂濶、ね」
―ウィストレア?なんで…
アレイアが不思議そうに見上げる
―私をあんなに敵視してたのに…
ウィストレアは首を横に振って否定する。違いますと言って胸を押さえながら呟く
「最初はそうでした…。BUGでありながらBUGの存在理由を無視したあなたが許せなかった…。でも、こんな事は間違ってた…私には、御母様と同じ結論は出せません!」
叫んで、少しだけトーンを下げて彼女は話を続ける。ほんの少しだけ声が震えていた
「私は…私が…お姉様を想うのは何故でしょう…。私の中の『ヘル』のせい?いいえ、きっとお姉様と同じ世界を見たから、共有したから、全てが変わったんです…お姉様をこんな目にあわせるいわれはありません。
…この鎖は『神影』にしか断ち切れない。今のお姉様は力を奪われ、私が持っていた力と共にエイドに取り込まれています…。クロア、まさかこんな事を人間ごときに言うとは思わなかったけど…。協力しなさい、お姉様の為に、私たちの力を奪い返すのを!」
「いや、断る」
すっぱりとクロアは首を振って拒否する。あんまりにも唐突な展開に二人の良く似た少女達はポカンとクロアを見つめるしかなくなった
「別に俺はそんな取引に乗るつもりはないし、BUGの実情や内情には興味ない。ぶっちゃけると御母様とか言うのもどうだっていいしな…。」
ウィストレアはふざけないで、と叫んでクロアに掴みかかる
「バカじゃないの?!御母様はそんな風に扱っていい存在じゃない…。まさか、お姉様を見捨てるつもり?!」
「バカはお前だ。見捨てる気なら最初からこんな所に来るか。
俺はアレイアは助ける。それまでに降りかかる火の粉は全て払う。そのスタンスで貫いてるんでな…。興味ない奴らでも邪魔するならば叩き斬る。御母様だろうがなんだろうが…全部だ!」
二人はそうなのか…と顔を見合わせて意外なスタンスに目を丸くする
「…目的が同じならばその途中は手伝ってやらなくもないがな」
そう呟かれた言葉にアレイアは小さく笑う
―素直じゃないわね
「ふん、やっぱりあんた嫌いよ。でも…手を貸してくれるんでしょ?ひねくれもの!」
クロアは小さく頷いて
「ひねくれてるのはお前だ」
そう付け加えた。
「んな…?人間ごときが戯言を!」
「見下してんじゃねえ二次元生命体が!」
「んなっ!…言ったわね!」
ギャスギャスギャーギャーと二人は叫び合い、取っ組みあいになろうかと言わんばかりに互いに言い争う
―本当に素直じゃないわ
アレイアは一人笑う
―ねぇ、二人とも。それは後回しにして…まずは…
燃え盛る炎の先にいる人物を見る。異様に長い炎の剣を手にしたエイドが一人で七人ものプレイヤーを相手に余裕の戦いを演じていた
クロアとウィストレアは話の矛を収めて手短に作戦を立てる
「まず、お姉様を解放して…」
「…そうだな」
―待って、それより先にエイドを!今のウィストレアは『神影』じゃないしクロアの『神影』の詳細データをとられると厄介よ
アレイアがクロアに告げる
―私より先に、エイドを。
流石にウィストレアも嫌そうな顔をしてクロアを見つめる。アレイアは自分よりも先にこの場の事態収拾を要求してきたのだ
鎖で拘束された…いくらBUGとはいえ身動きのとれない奴を守りながらエイドと戦うのは無謀…いや、不可能に近い
―私は大丈夫だから、ウィストレアに守ってもらえるだろうし
「もちろんです」
髪を掻き上げたウィストレアがカマヲ床に叩きつけて笑う。
どうやら…こいつの後ろは安全地帯らしい。クロアは手にした矛盾交差をウィストレアの鎌に軽く触れさせると能力を付加する。
『範囲防壁』。ウィストレアの鎌の周囲一帯を防御する能力。範囲は彼女の技量に依るが…きっと凄まじい能力を持っているはずだ。範囲に困ることはないだろう
「後は頼むぜ」
「頼まれたわ」
顔も合わせずに短く伝えると、クロアは七人の輪に向けて走り出した。罪剣を前に神影以外の人間が戦い続けるのは無理がある…。クロアは徐々に追い詰められつつある七人の元へとさらに急ぐ「っ…効いたぁ」
「嶺さん、退いて!」
理不尽な長さの武器が床のデータを砕いた
嶺は双剣の風を利用して高高度に跳んでレーヴァティンの攻撃を回避。逃げるように叫んだエアリアルがフランメリーゼを手にエイドの背後へ移動し、捉える
「させません」
信じられない速さで返された剣がその身で風を切り裂いてエアリアルを裁断しようと唸りをあげる
「『細月』」
鋭い閃光がレーヴァティンを跳ね上げてエアリアルが脱出する為のごくわずかな時間を稼ぐ。もっとも…稼いだのは脱出時間だけではない
「雷鳴、データリンク!」
「白華、データリンク!」
良く似た声が良く似た言葉を叫ぶ。二本の刀が互いに共鳴して強大な力を揺さぶり起こす
二人の使い手は武器に意識を奪われないように気を静めて刀を振り上げる
「『ブリザードライトニング』!」
ごう、と駆け抜けた剣閃がレーヴァティンを打ち、凍り付く。
瀬名と御簾の武器も凍り、ブリザードが終わる。次に起きたのは瀬名の武器の光。その刀身に溜めていた電撃を全て氷に向けて流し込む
「御簾!防御!」
「大丈夫よ、ちゃんと私の方は純水にしたわ!」
流れた電流は何故か御簾の氷を無視してエイドの方へと向かう
「『融かしきれ、紅蓮の炎!災厄の轟震は終らない!』」
パキンと氷を砕いて数メートルの巨体が薙払われる!
その身が氷を砕いて突き進み、二人の少女は武器を捨てて後ろに宙返りする
上下逆さの世界で二人はほんのコンマ数秒前に足があった場所を炎が焼くのを見下ろす
「炎技『烈火錐』」
「風技『翼風の鷲』」
エイドを挟んで左右にいたエアリアルと嶺が呪符を使って攻撃する
燃え盛る炎の槍と化したフランメリーゼと、吹き荒れる風の翼と化した大鷲が中心向けて力を放つ
狙いはエイド。そこに二つの呪符が命中する!
「…いったかなぁ?」
「…いや、違う。」
楼騎がいち早く刀を手に走り出す
「拘束を。」
「はいよ、『鏡紫光牢』!」
嶺が大量の呪符を投げた。それらは紫色に輝いて二枚一組で先端と終端を綺麗な薄紫の光で結び合い、向きを変えてエイドに降り注ぐ!
「罪式…『潰える神話』」
手足を挟みこむように拘束する光をもろともせずにエイドは巨大な剣を振り払う!
巻き起こった風がノイズの砂嵐を巻き起こし狂った暴風が吹き飛ばそうと荒れ狂う
「ちっ…エア!動けるか?」
「木の葉のように飛ばされそぅー!ダイエットは失敗だったかも…」
んなことは聞いてねえ!風の中を二筋の光が駆け抜ける。白と黒、鮮やかな軌跡の持ち主に嶺は小さく呟く
「風翼よ、彼に我が家紋の祝福を」風を抜けたクロアは矛盾交差の白い刃をレーヴァティンに触れさせる
「能力付加『自傷』」
刃を返したエイドの動きが止まる。自傷の能力の発動を回避するために彼は暫くの間攻撃することが出来ない。今のうちに、叩く!
「エアリアル!楼騎!行くぞ!」
二人は武器を握って叫ぶ
「えぇ!任せて!」
「ようやく本領だな。クロア」
武器が駆けてレーヴァティンを削る。
「くっ…」
攻撃を受け止めるエイドの動きも心なしか鈍い。仕掛けるならば今か
クロアが二人に小さくサインを送って総攻撃を指示する
こくん、と頷いた二人はエイドに向けて攻撃を行う…。
「待ちましたよ、この間合いを!」
長大な剣が世界を刈り取った。
赤い光と熱が三人を捉えて宙に放り投げる。一瞬なにがあったのか理解できずに三人は逆方向から襲いかかる第二撃をまともに受ける
「ちょっと!大丈夫?」
「三人とも、追撃来るわよ!逃げて!」
全身を血に染めたエイドの手が振り上げられる…。瀬名と御簾が駆け寄ろうとするのを嶺が止める
「『炎刃…皆滅』!」
赤い炎と紅い飛抹が瀬名と御簾の目の前を飛び抜けて遥か先にいるクロアを打ち落とした
「これ…血?!」
瀬名と御簾は自分についた血を見て叫ぶ
嶺は白いコートにできた染みをかるく手で払い、エイドを見た
「お前、随分無理してるな。この血、そうだろ?」
「勝手なことを…言わないで下さい……。私は…私の仕事を…する…まで…」
かくん、と力なくその場に膝をついてエイドは舌打ちする
「無茶よぅ…だんだん命中精度が落ちてきてるし…もう止めよ?アレイアもきっと助けてくれるから」
エアリアルが真っ先に立ち上がり説得する。左腕から血が流れてはいるが無事なようだ
その説得をエイドは無視して立ち上がる
「私は…私がやらねば…御母様の願いが…誰にも成し遂げられなく…なります。…私は、絶対に…BUGの本分を離れるわけにはいかないのです!」
燃え上がったレーヴァティンがエイドの腕にまで炎を広げる。小さな悲鳴のような何かが聞こえたがこうなったレーヴァティンは止められない
「お二人が…生まれた理由。お忘れに…だから、私が…御母様に…仕えなければ…」
語っている…と言うよりはうわ言に近い叫びが灰色の空間を揺らす
「私が!全部!元に戻せば…全て治せば御母様の願いが…叶うはず…だから!消えろ!消えてくれ!クロアぁぁぁぁぁ!」
振るわれた剣はエイドの身体を引き裂く『自傷』の対価を払いクロアを狙う
「…悪いが、俺はアレイアを助けるまでは負けられない。ついでに、ヘルも…な」
雄叫びと共に走るエイドの前で武器を放し、ゆっくりと落ちていく中で蹴り上げる。くるりくるりと舞い上がる武器にゆっくりと手を伸ばしながら小さく呟き、
二人が互いに武器を振るった。鋭い一撃が二人の間で放たれた。
お互いに駆け抜けるようにして繰り出した最後の一撃は…
「…なんで、私ばかり」
エイドが地に伏せる事でようやくの決着とされた。
「運がないんだよ、てめぇは」
クロアもその場に座り込んでしまい、手にした白陰と黒陽が音を立てる
第一解放に戻った双剣は疲れたと言わんばかりに一度鈍く光を放つ…。持ち主は笑いながら軽く拳を当てて労う
「クロア!」
後ろから羽交い締め…もとい、抱きしめられる。首に腕が巻き付いて一瞬だが呼吸が止まる。
「やったね!見直したよっ!もう…新人クンじゃないね」
「…あたりまえだ」
どうにかロックから逃げ出すと地に伏したエイドの元にまで行き双剣を地面に突き刺してから話しかける
「俺の勝ちだ」
「私の負けですか…まさか、人間に遅れをとるとは…不甲斐ないです」
長大な剣は今にも燃え付きそうに小さくなっており、もはや戦う力は残されてはいなかった
クロアは一つだけ気になっていた事を聞いてみる
「なぁ、一つだけ聞かせろ。お前達の狙いは何だ?人に『ブレイク』をする理由…教えろ」
エイドは少しだけ沈黙する。答えるべきか否か、彼は思案する
「いいでしょう」
呟いてから語り始める呟いてから語り始める「私たちは御母様の意思にて生まれました。理由は御母様の意思を叶えるため…。最初に生まれたアレイアは『神』たる力を与えられ、この世界を変えるべき存在でした。
ですが…クロアに感化されてあの方は反旗を翻し、御母様の計画を潰そうとしました
そしてその後に生み出されたのがウィストレア。『影』の因子を与えられたウィストレアは姉のアレイアを補助…又は抹殺して計画を続行するためのバックアップとして作られました。
同時に生まれた私は万が一の保険、修正因子としての役割。二人の『神影』候補を補助…又は抹殺して代替を作成する役割でした…。やはり、私に扱える代物ではありませんでしたし『神影』には未練はありません。
…ですが、私は修正因子。『エイド』の役割を果たします」
そう言って、彼は火の消えかけた杖を手に取る。炎の核となっていたのか溶けかけている装飾部が歪な造形になっている
「『メディカラゴラ』…亜式解放」
杖がほどけるようにして外郭部を廃棄する…。内部から現れたのは銀の杖、柄に蛇の紋様が描かれているそれはノイズを放ちながらぼんやりと輝く
「『天にまします創造神、二対の螺旋をこの手に揃え、現るるは完全螺旋。あらゆる虚数を超えた存在の足音が響き世界は新たな光景を目にする』」
ノイズと光は更に強まり次第に目が痛くなる…。銀白色の鈍光が場にいた全員を飲み込んでいき…ふっ。と消えた
灰色の空間に残ったのは金色の粒子。グズグズとその場に小さな山のようになった隣に落ちている銀の杖がノイズを反射していた…光が消えて、総勢十人もの人物が姿を表す。全員まとめて転送されたのは、白い空間。目の前に大理石のような石で作られた背の高い椅子が聳えていた
「ここは…」
クロアは何度か来たことがあった。この景色、この風景。あぁそうだ
「ここにいたのは…お前たちだったのか…俺の名を呼んだ三人は…」
アレイアとウィストレアは小さく頷いた。そうだ、何で今まで気付かなかった…ここは…そうここは…
―何者ぞ?
ゴウン、と響くような女の声がした。威圧と威厳…いや、威厳による威圧か聞いたものは何故だかひれ伏したくなる声だった
「御母様…」
ウィストレアがかすれた声で呟く…。こいつが、アレイアをこんな目に合わせた、BUGの王…
―ウィストレア、か。何用か?もうお前にも興味が失せた…。出来損ないの妹は所詮出来損ない…もう用はない。消えよ
天に青い光が現れて複雑な模様と円を描き出す。魔法陣。クロアはそれが前に見たものとは別物だと悟る
だが、コイツの技量を考えると気休めにもならない…。二人を攻撃圏から突き飛ばそうと走り出すと傍らを金色の光が飛び抜ける
「来なさい!私とお姉様の力!」
ウィストレアが手に光をおさめるのと魔法陣から極彩色の光が放たれたのはほぼ同時だった…
―――――
あとがき
―――――
エア「あとがき、スタートぉ!」
クロア「あとがきも長くなったな…。ようやく長台詞が言えそうだ」
エア「最後に泣く泣く字数を削る必要もないしね♪うん、良いことだよ」
クロア「見やすいな…っと。今回はゲストにあいつらを呼んだんだな」
エア「それではどうぞ!嶺さん!瀬名さん!御簾さん!」
嶺「ある時はゴミ拾いのボランティア」
瀬名「またある時は大統領の護衛官」
御簾「どんな依頼も即解決!あなたの町の何でも屋!」
嶺「名前はまだ無いけどね!」
クロア「久しぶりだな、前に出会ったのは『ミッドガルド』だったな」
嶺「うん、そうそう。いや~成長したね君達」
瀬名「そうね…。見違えたわよ」
御簾「私たちには及ばないけどね」
嶺「そう言うなって…。ほら、『最初から上手い奴なんていない』精神だよ」
クロア「あぁ。さて…挨拶は終わったな。俺の手元に今手紙がある。PN-メガネのあいつから」
『嶺とか誰ですか?なんか私が戦ってるときに攻撃してきたり拘束かけてきたり…ちょろちょろして迷惑でした』
クロア「ふん、で?」
嶺「あれだー。うん。僕らは昔の存在でその時は『光暗の円舞曲』って作品で主役やってたんだよ…それからこの先―――」
エア「わーわー!言わないで、ネタバレるから!」
瀬名「くすくす…。すっかり可愛くなったわね『氷炎』も」
御簾「本当…。私の矯正のおかげで立ち直ったのかしらね?瀬名」
瀬名「どうかしら?」
二人『―――』
嶺「ストップストップ、ここは僕らの世界じゃないんだから…追い出されるよ」
クロア「だな」
二人『うっさいばーか!バカ嶺!ついでにヘタレクロア!ばーかばーか』
嶺「風遊べ…」
クロア「巡れ…」
エア「ストップ!ちょ…待って…」
嶺「『疾風大鷲』!この建物を吹き飛ばせ!」
クロア「『白陰・黒陽』、能力付与『自壊』能力封印『耐久』!」
エア「か…風が、スカートが!やっぱ危ないって!ほら、建物がミシミシいってる!むしろ空気のように飛ばされる~」
二人『だ、誰が上手いことを!』
プツン。ザザザザザ…