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第十六章 コインの裏表

ゲームファンタジー!


はい、まえがきです。

ようやくここまで来ました…

長かった…

ついに、彼らが動き出します。言えるのはそれだけ…。

動き出した彼らの運命はいかに!


コインの裏表が出会うとき、何があるんでしょうね?

では…本編へどうぞ!


注:まえがきの最初の方が最終回っぽいですが、全然違います(笑)

でも、いつ最終回になるか… (´・ω・)

カタカタ、カタカタ…カタ。

もう、大分聞き慣れたキーボードの操作音。中央に巨大な機械が聳える部屋の中心付近で楼騎はキーを叩いていた。

「どう?見つかりそぅ…じゃないね、その顔は」

隣で小さなお盆を手にした少女が、あはは…と小さく笑う。盆の上のマグカップがカタカタと揺れる

「あぁ。流石に頑丈なプロテクトだ。キツいな」

楼騎はクロアの消えた先のアドレス先を調べていた。いくつかの数字が断続的に続くIPという端末同士のアドレスだ。

HTTPで始まるのが住所だとしたら…電話番号とでも思えばいい。個性に乏しいアドレスからは相手の何も知れない…

「くそっ…」

楼騎はキーボードを殴り付ける。もう4日、ぶっ通しでここの違法サーバーと戦っているのだ

「パスワードは何だ?ノーヒントはキツいな」

パスワードの解析は他にも数人が分担している。

だが、彼は自分の手で突破したかった

「手のかかる新人だな。」

エアリアルが差し出したマグカップを受け取り、中に満たされた黒い液体を流し込む…

「よし。やるか。」

彼はもう一度キーボードを叩く数時間の格闘の後、楼騎は疲れと眠気のの為一度休憩する。やはり…というかほぼ完璧なセキュリティを前にして楼騎はあきれるようにため息を落とす

エアリアルが励ますが、流石の彼も疲労の色は隠しきれない…。仮眠する、と言って席を立つ

「諦めるか?」

聳える機械に半分隠れた状態で、Dが聞いてきた

「もう諦めるのか?まぁ、構わないがね…ヘラヘラ」

ムッとした楼騎に代わりエアリアルが答える。

「諦めないわよ。ちょっと休憩するだけ」

Dが意地悪そうに笑っていると、後ろからパコンと板で殴られる

「D。何をしておる。若造で遊ぶ暇があれば辞表でも書いとれ」

Dは殴られた部分をさすりながら笑う

「やめてくださいよ、Gさん」

「ジーサン言うな!」

小じわがもう一度殴る

そして、一枚の紙を渡す

「何も物事の解決法は一つではない。もっと精進せよ」

紙には、住所が書いてあった。東京都内の住所…ただそれだけだが、理解する

「サーバーの設置場所。だな」

「すごーい!さすがGさん!」

パコン!あいたっ!

「ジーサン言うな!」

ふん、最近の若者は…とぶつぶつ言いながらGは去っていく。二人は、少しだけ頭を下げて

「行くぞ。エア」

「もちろん、行くわよーぅ」

二人は並んで部屋を出る。そういえば、最後に外に出たのはいつだったかという無駄な考えを浮かべながら…ガラス張りのエントランス部分に出てくる。既に参加者で賑わっていたのが、水をうったように静まりかえる…。どことなく波のない湖ににも似た静けさ。乱すことが禁忌と錯覚するような、そんな沈黙

「楼騎だ…」

そんな呟きでギリギリ保たれていた均衡が崩れて消え去る。

「エアリアルさまぁー!」

「邪魔よ!楼騎様ー!」

押し合いへし合いの大乱闘。二人の世界クラスのプレイヤーがいきなり登場したのだから分からないでもない。

「悪い。通してくれ」

「ごめんね…また遊ぼっ!」

二人は適当にあしらいながら人混みをかき分けて進む。ようやく出入口を押し開けたときには

「疲れたぁ…」

エアリアルのコメントが全てを物語っていた。二人は多少余計な疲労感にうんざりしながら外に停めてあったタクシーに乗り込む。

「ここへ。」

楼騎が紙を差し出して、運転手の男性は行き先を再確認して車を走らせた…



目の前のタクシーが走りだし、すぐ後ろに待機していたタクシーの中で会話が生まれる

「行き先は…」

「追って」

愛想のよさそうな中年の運転手に後部座席に乗った少年が告げる。

「今、なんて?」

そんな当然の質問に少年は笑う

「前のタクシーを追って。だよ」

運転手は言い知れぬ殺意を感じて、車を走らせる

「さぁて、仕事しますか。」

少年は余裕を浮かべて、笑う。

それはその車内にだけ響いた…楼騎は、窓の微妙なでっぱりで頬杖をつく。

そして、生まれたときからでは考えられない世界の進歩に呆れと畏敬のため息を漏らす

生まれた時は世間の九割以上が化石燃料のガソリンで走る車だったのだが、政府の補助金とエコロジーブームで一気に普及した。

…下手したら、今の子供はガソリンすら知らないかもな、そう思うと自然と笑いが浮かぶ。若い者への失笑か、古い時代となった自分達への嘲笑か、水素で走る車に小さな笑いが起こる

「楼騎?どうしたの?」

エアリアルの不思議そうな顔に、何でもない。と答える

やれやれ。俺もこの歳で老人か

Gの事も笑ってられないな

楼騎はだいぶ近づいてきた目的地と、それに比例して増えていく料金を見やる

「…ねぇ、楼騎」

エアリアルが話しかけてきた目の前のタクシーが路地に入ると二台目のタクシーを停止させる

「ふぅん…ここか」

少年は小銭と紙幣を運転手に握らせる…。その額は料金よりも多かった。

「僕の事は秘密ね」

少年はそう言って笑うと車を降りて路地に消える。タクシーの死角に入ると耳につけた送受信可能なハンズフリーイヤホンに話しかける

「タクシーを降りたよ。うん、…了解。二人には気付かれてない、たぶん」

たぶんって何よ!と少女の声が叱責すると少年は苦笑いしながら一旦イヤホンを外す。

さて、仕事しますか。

少年は楼騎とエアリアルが乗っているタクシーを覗き見る…。警戒するようにして降りてきた二人がずいぶんとボロい雑居ビルに消えるのを見て前進する

へぇ…。

ずいぶん古ぼけた外観だが、ビルにかけられた看板は意外と新しい。

1Fネットワーク管理室

2Fネットワーク管理室

3Fネットワーク管理室

4Fネットワーク管理室

5Fネットワーク管理室

6Fネットワーク管理室

多少は表現を変えろよ、と笑う。

少年は自動ドアをくぐって1Fの通路に足を踏み入れるコクン、とエアリアルが頷いて二人同時に自動ドア脇の観葉植物の影から飛び出す。

「おっと!」

やや茶色い、短めの頭髪の少年は不意打ちを後方に下がって回避する。

楼騎は続けて右手を握って殴り付ける

少年は今度は避けずに右手で受け止めて左手で楼騎の腕を捻る

「やあっ!」

エアリアルが上段蹴りで少年を攻撃するが、彼は楼騎を自分の後ろに隠すように動きながら回避、そして連続した下段足払いを右足で止めてその足を左足で蹴り飛ばす

「あー、びっくりした」

少年は楼騎を放して笑う

「気付かれてたか…やれやれ」

ぽりぽりと頭を掻く。油断しているでも、警戒してるわけでもない、二人とそう歳も変わらないと思われる少年は

「とりあえず…」と前置きしてから名乗る

「依頼されてきました、風翼嶺(ふうよくれい)です。よろしく」

二人は唖然とするしかなかった。「ほんとは言わない約束なんですが、構わないでしょうから」

とか言った少年…嶺の説明をかいつまむとこんな感じだった。

―最初に依頼を受けたこと。

―最初の依頼は違法サーバーの位置を特定すること。

「それはもう、暇で死ぬかと…」

はぁ…とため息をついた嶺は続けた

―ついに場所を特定して依頼主に知らせたこと。

―そして、次の依頼を受けたこと。

―次は、『楼騎とエアリアルの護衛』だということ。

「本来ならば危険時以外気付かれないように…って言われてましたが…」

あはは…、と彼は笑う。

人柄は悪くなさそうなのだが、流石に胡散臭い…。二人の顔に不信感が出ていたのか嶺は敵じゃないとアピールする

「なら、依頼主くらい言ってみろ。」

「そだそだー!」

二人の正当な追求に嫌そうに顔をしかめる

「依頼主を明かしたとなれば僕らの名が落ちます。ので、我慢してください」

あからさまに不審が増した。だが、彼は決して口を割らない。

楼騎も流石に時間の無駄だと判断して繰り返される問答を終わらせる。どうせ変わらないのだから、仕方ない。

「エア。こいつは置いて行く。」

「だよねぇ…うん!ばいばい!」

二人はビルの奥へと歩いていき、廊下には嶺だけが取り残された…

「…さて、三つ目の依頼は…と」

嶺は小さく笑って歩き出したカツコツ…と廊下に足音が反響する。それははエアリアルのブーツが原因なのでどこかで緩衝材でも見つけたら靴底に貼り付けよう。と楼騎は思った。

「ずいぶん素直に残ったねぇ…嶺って人」

「さあな。どうにも裏がありそうだ。」

カツコツ…と廊下に足音が反響する。2F、特に異常なし。

部屋には何もなく、何かがあった気配すら稀薄だ。どうやら、前に使った業者がいなくなった後誰も使っていないらしい…。

「馬鹿馬鹿しいな。このビルを無駄に使って何してるんだ。」

楼騎は振り返りざまに呟いて、階段に足をかける…。コンクリートむき出しの、古い造り。窓は薄汚れていて蛍光灯も光量が足りない

つまり、暗いだけの階段だ。

特になにかあるわけでもなく、上の階に到着する。3Fも調べるが、2Fと代わり映えしない埃にまみれたフロアが広がっているだけだった。

「まるで廃墟の探検みたいだね…」

エアリアルが苦笑いする。確かに、入り口のプレートが新しくなければ誰もがそう思うだろう…。だが、嶺と名乗る人物が違法サーバーの場所をここだと言い、Gもここだと言った。

間違いはないだろう。

「上へ行こう。こういうのは最上階だと相場が決まってる」

「ゲームの法則だねっ」

二人は上へと続く階段へと行き、上へ行く。

4F、異常なし

5F、異常なし

もう既に予想はしていたので二人とも対して驚かない。…むしろ何かあった方が驚いていたかもしれない

「次が最上階…」

「だな。」

二人は階段を登り、6Fに立つ。

下の階と大差無い造りだったが、この階だけはやはり違った。

ブゥゥゥ…という機械音が廊下に響いていたのだ。それは、冷却ファンの音のようだった。

二人は顔を見合わせてから、一番近い扉を開く!扉の先は、今までとはまったく違う空間だった。

何台もの人と同じくらいの高さの紺と黒の長方形の機械が何列も並んでいた。一列につき五台並んでいて、入り口から一番遠い…窓側の列だけは四台で構成されている。

理由は、一台のパソコン端末。それとそれを載せる机が丁度長方形の機械と同じ大きさだった。

「見たこともない型だな…。自作か?」

楼騎はパソコンを調べて、メモが置かれていることに気付く。

「何?それ」

エアリアルが、ひょこっと覗き込む。


―――

よくぞいらっしゃいました。

お二人ともカードはお持ちでしょうから、この机の引き出しに入っている端末を使ってログインしてください。


『ミッドガルド』管理人

―――


楼騎が引き出しを開けると、中からヘルメット型の端末と大型のカードリーダーが出てきた。

どちらもあまり馴染みがないものだが、『ヴァルハラ』に使用される機械と同じ系統のものだ。

頭部部分は頭の中から神経信号を読み取る端末、大型のカードリーダーはデッキとなるカードを読み込むのだろう。二人はメモの主の意図を読み取る

「挑戦、か。」

幸い、二人とも機械には弱くない。配線を難なくこなしてパソコン端末の電源を入れる。ブゥン…という音と馴染みのある独特なロゴを見て、画面に『ミッドガルド』と表示される。

そして、ログインOKと表示されて、二人は端末を装着する。二人はその場にへたりこむように崩れ、薄れていく意識に集中した…世界の中に二人が現れる。

薄緑を含んだ不思議な色合いの和装の楼騎、対照的な赤いフリルを多用したミニスカートのエアリアル。

二人はそれなりに大きそうな道の先にいる蒼碧のコートを見る。

「あれだな。」

「うん。」

エアリアルは小さく息を吸って、叫ぶ

「『必中の神の槍(グングニル)』!」

放たれた素朴な槍は土を舞い上げながら薄い金髪の少女を捉える。

「止めた…!?」

『必中』を止めた驚きを隠せないエアリアルの横を楼騎は猛然と駆け抜け、蒼い刀を抜く。そして、コートを着ていないクロアのそばにいる若草色の人物に振り下ろす。

糸目に金髪のその人物は片手で刃を掴んで止める。

「危ないですね…」

「悪いが、こいつは返してもらう。」

それと同時に金髪の槍使いと、神の槍を止めた少女がにらみ合う

「迎えに来たわよ!クロア!」

「…馬鹿ね、私には勝てないわよ」

四人は一斉に距離を開けた。

相手を叩き潰すために。

―――――

あとがき

―――――


エア「やっほー!暇してる活字中毒のみんな!元気かな?」

クロア「…」

アレイア「クスクス…」

エア「ちょっと!何よその反応!」

クロア「拾い食いはやめろ、なっ」

エア「ちょ!違っ!」

アレイア「馬鹿な人…クスクス…」

エア「むっかつくぅー!」

アレイア「愚かで、滑稽。」

エア「あーもぅ!グングニル止められるし散々!何なの?この人!」

クロア「…さぁ?」

エア「むぅー」

クロア「俺も分かりかねてるからな…」

アレイア「グングニル…ね」

エア「何よぅ」

アレイア「…別に〜。それよりも〜」

クロア「何故こっちを見る?」

アレイア「どっかいこっ!ねっ!」

エア「あんた一体なんなのよ!」

アレイア「(ニヤリ)…無衣の姿を見せた仲…よ」

エア「な…ん…」

クロア「ちょっとまて!あれはお前が…」

エア「ふぅん…へぇ…そーなんだ…」

クロア(ゾクッ)

エア「そーなんだぁ…」

クロア「逃げるっ!アレイア!誤解解け!」

アレイア「私はいまもハイテナイ…」

エア「『必中の―』」

クロア「やめろー!!」

―――

若草「賑やかですね」

楼騎「だな。」

若草「それではみなさん、さようなら」

楼騎「また逢おう。じゃあな」

クロア「うあぁぁぁぁ!止めろっ!あぶなっ!」

楼騎「むっ。断末魔…」

若草「風流ですねぇ…」

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