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第一章 全ての始まり

ちょっと先の未来。

世界で最も人気のあるゲームが存在した。その名は【ヴァルハラ】。参加者全員で戦うバトルロイヤル方式のゲームだ。

そこに一人の少年が友人に手を引かれてやって来た事で運命の歯車が動き出した…

沈黙と暗闇。

歓声と陽光。

二つが別れる狭間に、イタ。

揺れる体を持つ、不定形の生物それは現と虚の境目の世界で見ていた。『ゲーム世界【ヴァルハラ】』から

そして、ソレは全ての参加者を見つめながら新たな人間を見ていた

「…」もの言わぬソレは黙って見つめる。そして、ひっそりと姿を消した…「ふわぁぁ…寝みぃ」

一人の少年があくびをしている。見た目は16歳程。黒髪に不揃いな短髪でどことなく温和なタイプではないと感じられる

「言うな。第一、辛いのはキャラ登録が終わるまでだぞ」

相棒と思われる、若干茶色がかった髪を持つ少年が笑う。もう一人と比べるとやや目元は柔らかい感じだ

「るっせーよ。俺は人混みと並ぶのが嫌いなんだよ」

「クックック、お前は昔からそうだよ」

愉快そうに笑う

「そういや、お前は決めたのかよ。この世界的ゲームのキャラクターをよ」

皮肉混じりに黒髪は言う

茶髪は、お?と意外そうに目を開く。黒髪は、あー、と唸って頭を掻く

「そういや、ランカーなんだよな。お前」

「あぁ。ランキングの入賞者はランカーと言うんだ。そして、俺は『上位ランカー』。世界中で10人しか選ばれないんだぜ?クックック」

あー。天狗のような鼻へし折りてぇ

…と、茶髪は真面目な顔をして向き直る

「しっかしよ、何でまたやりだすんだ?ほら、今までは『興味ないな』一点だったろ?」

黒髪の少年はぼんやりと空を見上げる。空には巨大な影がある。太陽光を反射するとかなんとか…そういう馬鹿げた仕掛けらしい

「…何となくだよ。気分だ気分」

目の前に並ぶ人々がざわめき始める。

時刻は9:00、会場が開いたらしい

「さぁ、お前の新しい世界の始まりだな」

クックックと笑いながら茶髪は列に乗って黒髪を連れていく。そして、ガラスと紅い塗料が乱れる建物に消えていった…ガヤガヤ…ザワザワ…

賑やかなざわめきを感じながら黒髪は施設の端っこに案内される。『エディットルーム』と掲げられた部屋の前に立たされる

「やっほーい」

いきなり部屋から腕が伸びたまま突っ込んでくる。黒髪は寸前で回避して腕を受け止める

「あぶね…何だテメェ」

「よくぞかわしたな、流石はガルトの友人、なかなかに強そうだな」白衣を着た男はヘラヘラと笑いながら悪びれもせずにヘラヘラと身をずらす

「『D』。あんまり手出すなよ、こいつすぐ手が出るからな」

黒髪は茶髪の足を蹴る

「黙れ」

「いっだぁぁぁ!!」

キッと睨み付ける

「おぉ怖い」

ヘラヘラと白衣の男は部屋に手招きする

「エア、来てくれ」

ぷしゅぅと情けない音と共に扉が左右に開き、中から

「何か呼んだ?」

金髪少女が…ん?

「ん?…見覚えないわねぇ…新人さん?」

見た目は外人なのだが、完璧に日本人だ。かなり違和感がある

「あぁ。ゲームの新規参加だな。止めてすまなかったな。あっはっはっ」

バシバシと背中を叩いてから二人は黒髪たちが来た方角に消えていく。どうもゲームの会場に行ったみたいだ

「クックック、災難だったな」

とりあえずもう一発蹴っておこう

「ふぐっ!?」

痛みでうずくまった相棒を捨てて部屋に入る。ぷしゅぅと気の抜ける音と共に扉が左右に開き彼を招き入れる

「さて、目的を果たすか」

部屋へ通じる細い廊下。たった数メートル程度の道を抜ける

その先には円形の部屋。仕切りがされていてわかりにくいが空いている場所には椅子のような機械が設置されていた。

暇そうにしていた係員は少年を椅子に案内する。

「こんにちは!君ははじめてかな?」

いかぶしむ目で答える

「…初めてだね。じゃあ椅子に座って、体を楽にしてね」

「…」

「それじゃ、機械が降りてきたら頭の中に自分の姿を描いてね、服とかは好きなのでいいよ」

ガコン、と機械が降りてきて視界が黒く閉ざされる。少年は言われた通りに自分の姿を描く。

黒髪に不揃いな短髪、黒い眼に荒々しさを映し出す

すぅ…と意識が遠のいた「…」

塗り潰したような闇の中に自分の体が浮かび上がる。次は服だ。頭の中に服を思い浮かべる…質感や材質を細かに描き出す

黒くて薄いシャツ、そしてその上に蒼碧のコート、ロングだ。襟元に白いラインを一筋入れてアクセントにする。

下にはロングの…ジーパンのような形の物を描く。材質は軽く、そして柔らかいものを…

そうこうしていると暗闇に文字が浮かび上がる

『名前は?』

少年は頭の中にいくつかの候補を出す。

「クロア…俺はクロアだ!」

暗闇に一筋の光が差し込む

―その一瞬、誰かに見られた気がした

振り返っても誰もいない

勘違いか?とも思い少年…クロアは光に足を向ける。光源に指を乗せると周囲の闇が晴れて意識が戻るのを感じる


―――


イタ

黒く閉ざされる世界の片隅に見つめる不定形の生物がいた。

一人の少年が『この世界に』生まれるのを見て震える。それが何なのかは分からないようだが、揺れる

「…」闇が晴れるのを感じてソレはユラユラとデータの海に身を逃がす。

光に消えていく一人の少年を見つめながら最後に一つ大きく揺れる

それで後には何も残らなかった


―――ガコン!と機械が外れる

クロアは照明に思わず目を細める

「お疲れさまでした」

係員は愛想よくカードを差し出してくる。名前の部分に『クロア』と書かれた、蒼碧のコートを着たキャラクターのカードだ

「それはゲームを行なう為に必要なカードです。中に様々なデータが入っていますのでなくさないようにお願いします」

そう注意されて不機嫌に当たり前だと答える

立ち上がり、円形の部屋を横切って短い廊下を抜ける。情けない音の扉を抜けて足早に広めの通路に出る

「おう、早いな」

壁を背もたれにして待っていた相棒が声をかけてくる

クロアは、だろ?と薄く笑ってカードを見せる

「『クロア』…か、女みたいだな」

足を蹴る。

「ぐぅっ…またか」

クロアは不機嫌に言う

「少しは黙ってろ」

茶髪は仕方ないな、と渋々頷いて黙ることにする。数秒だけだが

「ところで、準備はいいのか?」

クロアは何が?と聞く。まぁ当然だ

「記念すべき第一試合。予約したぞ」

はぁ?

クロアは唖然として口を開く。そして、いつの間にか試合を登録しているこの相棒にため息を一つ吐き出す

「ったく…めんどくせえ」

クロアは相棒に会場を聞く。とりあえず試合がどんなものかは興味があるので参加する事を告げる

「面白いぞ。一度やればルールなんて覚えるからな」

茶髪の相棒はクックックと笑いながら歩き始める。広めの通路を抜けて、人々の叫び声のする方へと足を進めていく。時間はほんの数分、あっという間に大歓声が二人を飲み込んだ

「さぁっ、選手の入場だぁぁ!」

ヘッドマイクを付けた司会らしき男性が声を張り上げる。…どうやらクロアの出る試合よりも一つ前らしい

「さぁ!今宵の戦いを制するのは誰か!?いざ()かん!神々の加護あれ!」

参加者達の背面に位置する巨大なモニターが起動する。最初は薄暗く光りすぐに灰色の都会を映し出す。

画面の右上に『エリア:シティ』と表示されておりその下に参加者の顔写真のついた矢印が出ている簡易マップ、そして参加者の顔写真とキャラクター名が書かれた一覧表が現れる。それは名前を表示するにしては不自然に大きかった

「おっ、エアリアル参加してるな」

茶髪の相棒はネームプレートを見ながら手で上からの光を遮りながら意外そうに呟く

「エアリアル?誰だ?」

クロアが聞く。その質問に相棒はクックックと笑って鼻を伸ばしつつ説明する

「『俺と同じ』上級ランカーの一人で多数の武装を使いこなす女だ。ってかさっき会ったよな」

あの金髪の、と言われてクロアはなるほどと頷く。エアってのは愛称か

あぁ、と頷かれてクロアは画面をジッと見つめる。そんな矢先に一人のネームプレートが黒っぽく変化する。

「『レィティア』、ゲームオーバー」

一人の機械が外れて小さな女の子が残念そうに立ち上がる

数百人はいるかと思われる観客からねぎらいの言葉がかけられて恥ずかしそうに高くなったステージから裏に入っていく。どうやら退場路になっているらしい

クロアが後ろ姿を眺めていると大歓声が沸き上がった。驚いて見てみるとモニターの映像が切り替わって一人の人物を映していた。ピンクの服にやや薄い色のもこもこのフリルをくっ付けた金髪少女が静かに立っていた。

きゃーきゃーと主に女性陣からの黄色い悲鳴が上がり、その名が叫ばれる

「エアさまー!」

と。

「クックック、相変わらずだな…羨ましいねぇ…エア」

相棒が一人ぐちたエアリアルは人気の薄い街中でただ一人佇んでいた。意識を集中すると微かに感じる殺気を感じながら

「出てきたらぁ?分かってるわよ?」

そう叫ぶ。

だが彼女を狙う人物…もしくは人物達は動かない。彼女はこのゲーム『ヴァルハラ』において世界中で6位の実力を持つ。不意打ちでもしなければかなわないと思っているのだろうか?

彼女は自らの胸に小さく吐息を漏らした

「来ないならばこっちから行くわよぉー」

とりあえず最終警告。敵は動かない

彼女はスッと空を掴むようにして空間からカードを取り出す。

このゲームにおける基本攻撃は二種類ある。一つは武器や素手による打撃攻撃、もう一つは

「炎符『焼け落ちる楼閣』」

呪符と呼ばれるカードによる特殊攻撃だ。大画面モニターを見てクロアが驚きの声を上げる。エアリアルの持ったカードが燃え上がったと思ったら突然周囲の建物が炎を上げて大火災が起こったのだ。その規模は凄まじく、瞬く間に隣のビルに火を移して行く

「クックック、やるな…あぶり出す気か」

「スゲーな。最近のゲームは」

燃え上がるビルから何人もの人が飛び降りてくる。何人かは空中で粒子に変わり、『こちら側』に帰還してくる。

「おおっと!エアリアルの呪符で待ち伏せ部隊は壊滅状態だ!」

黄色い悲鳴と何人かのうめくような落胆の声が交錯する。そして、黄色い悲鳴の集団は次の瞬間に歓声を上げる。

ゲーム世界でエアリアルは自らを襲った剣をひらりとかわして次のカードを構えていたのだ。素早く名前が叫ばれる

エアリアルは自らの武器を封じたカードを解き放って武装を手にする。

「炎剣『フランメリーゼ』」

燃え盛る刀身を持った、豪奢な細剣(レイピア)。柄飾りにはまるで十字のような意匠を凝らしてある。

それを一振りしてから彼女は静かに目の前で剣を振り上げる男に目を合わせる

「っ…!」

威圧された男は咄嗟に後ろに飛び退いて間合いを開く。エアリアルはそれを見送ると自分の脇を通して細剣を後ろに突き出す

「ぐっ!?」

と後ろから羽交い締めにしようとしていた男を貫く。…だが死にはしない。何故ならば細剣には殺傷力は低いから。

痛みにやや表情を変えながら男は引き下がる。まるで何かに警戒するように彼女を見ながら

「うーん。『これ』だとちょっと厳しいなぁ」

エアリアルは意地悪な笑みを浮かべて男達を脅かせる。男達はビクッと武器を持ち直して、悲鳴に近い叫びを上げる。

彼女は三度みたび空中からカードを抜き出して天へとほう

「貫け―」

…一瞬だけこの世界に光が走ったように見えた。そして、その一瞬後には物陰にいた者達すらも次々と姿を崩して倒れる「…今、なにが?」

モニターを見ていたクロアが驚きながら次々とリタイアしてきた人々を見る。エアリアルが何をするにも悲鳴を上げていた人々も一瞬だけ我を忘れたように立ちすくしていた。

茶髪さえも驚いたようにしていたが、彼だけはいち早く正気を取り戻した。

「ありゃ装具だな。読んで字の如く、武器や防具の類いだ。だが…」

ふむ…と考え込む

「あいつならば瞬殺しなくとも勝てたはずだがな…」

その呟きは大歓声に掻き消された。ようやく正気を取り戻した人々がエアリアルの勝利を歓迎する。


ガコン!と機械から放たれた少女は笑いながら手を振って歓声に答える。やや余裕を浮かべた顔にクロアは僅かな違和感を覚える。

しかし、本当に些細なもので本人もすぐに忘れてしまう。

そんなクロアに茶髪の相棒が声をかける

「次は俺らの番だ。行くぞ」

「あぁ。楽しみだな」

クロアは小さく笑って相棒の背中を追う。相棒は舞台の入り口にあたる場所で係員にキャラクターカードを見せる。係員はそれを受け取って機械に突き刺して何かのデータを読み取る

「認証しました。【ガルト】さんは8番席にお願いします」

受け取って先に行く相棒に習ってクロアもカードを渡す

「認証しました。【クロア】さんは2番席にお願いします」

薄緑の制服を着た係員はカードを返す

クロアは急いで舞台へ続く暗い階段を登る

「さぁ!選手入場だぁぁぁぁぁ!!」

興奮冷めやらぬ司会がマイクを片手に吠える。クロア達よりも先に入場した人物達は自分の席の前で観客にアピールをしている

クロアが舞台に足をかけると大歓声が襲いかかった。

頑張れよ!、運がないな!、逃げといた方がいい!等非常に多種多様だ

「さぁ、座って。」

司会が促して参加者は椅子に座る。全部で10の椅子には二つの空席があった

「いざ行かん!君たちに神の加護あれ!」

椅子に座り、司会が声を張り上げた途端にガチャガチャと椅子の内部が動き出して頭部を覆うように何かが降りてくる。腕も押さえられて重くなる。

暗闇に閉ざされた視界に光が横切る。急激に世界が広がって自分の体を組み換える。服は蒼碧のコートに、名前はクロアに変わる

彼は期待に胸を膨らませて『この世界(ヴァルハラ)』に足を踏み出した…

―――――

あとがき

―――――


始めまして(の人達ばっかりですよね(^^;)白燕です。

あとがきは苦手なのですぐに終わります。むしろ(ページが余ったらある)おまけがメインです。キャラ紹介とか。

よくここの使い方がわからないので今は手探りしながらですからルビなんかがおかしい場合教えてもらえれば対処したいと思います

―――

さて、僕は携帯から書いているわけですが…感情が出やすいので普段から百面相してます。学校でも、家でも、電車のホームでも百面相…

我ながらめっちゃ怪しいなぁ…

クロアのセリフなんか書くとき悪顔だもんなぁ…

―――

二話以降はもっとバトルが多くなりますよ〜

では、また次回お会いしましょう( ̄▽ ̄)ノシ

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