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すずなり番長観察記録  作者: 六青流星
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ドラゴン

「ありがとなー、芳夫!」


と、翔太と大河は、走り去るベンツに手を振った。

中野にある、石黒翔太の自宅前だ。


ふと振り返ると、車庫に停まった車から、翔太の父久留斗が、大事そうに何かを抱えながら降りてきた。


「とーちゃん、何してんだ?」


なんだかんだで、夜の十時を回っていた。

キョトンと翔太が聞いた。


「こんばんはー、先輩のお父さん、魔法考古学のお仕事でスか?」


翔太の父は、新宿にある魔法大学の教授だった。


「おお、二人とも、見るかい?」


翔太と大河が近づくと、父久留斗は、黙って翔太に抱えていた物を見せた。


「これはドラゴンの卵の化石なんだ。

大発見なんだぞ!」


ふーん、と生返事をしながら、翔太は、ひょい、と父の懐から卵を持ち去った。


「おい、翔太、おもちゃじゃないんだから…!」


だが翔太は、自分の頭ほどのドラゴンの卵を、撫でるように眺める。


「俺、ドラゴンの卵なんて見るの初めてだよ!

どんなドラゴンが入っていたんだろうなぁ!

まだ、小さいんだろうなぁ!

こう、ぽちっ、とした、可愛いドラゴンだろうなぁ!」


「先輩、興味を持った物は何でも、とりあえず、触っちゃいまスよね…」


大河は呟く。

翔太は興奮して、頭上に高く持ち上げる。


と…。


「あれ、とーちゃん、この卵、なんか柄があるようだぞ!」


光の加減か、卵に幾何学模様が浮かび上がっていた。


「えっ、そんなもの、なかったハズだが…」


「いや、俺も見えるっスよ!」


大河が横から覗き込み、父久留斗も、あれ、おかしいなぁ、と言いながらも、スマホで写真を撮り出した。


「あ、な…、なんか、これ、動いてるぞ!」


翔太は叫んだ。


ええっ! と三人が見守るうちに、卵は、ぶるん、と震えると、あっけなく割れた。


翔太の手の中には、卵の形に丸まった生物が、するっ、と長い首を伸ばした。


水色の皮膚を艶やかに光らせた、その生物は、んー、と伸びをして、立ち上がった。


「とーちゃん、なんだよぅ」


じっ、と翔太を見つめている。


「ちょ…、おい、とーちゃん、これはまさか…?」


「これはどうも、驚いたな…。

時空を飛翔する能力を持ったドラゴンは、時の狭間に卵を産み、強い力を持った個体を父親にして、出生する、とドラゴン研究で有名なミッチェル女史の著作で読んだことはあるが…」


翔太は、小さなドラゴンを、目を丸くして、見下ろした。


「え…、俺、なんもまだ、してないのに…?

俺、ドラゴンのパパになっちゃたの?」


「ぽち、なんだよぅ!」


「あー、さっき、先輩、名前、つけちゃたんだ!」


ん、と翔太は首を捻り、はっ、と思い当たった。


「ぽちっ、とした、可愛いドラゴン?」


「そうなんだよぅ!」


ポチは、輝くような笑顔で答えた。


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