四人
「じゃあ先輩。
外側だけを、キレーに治しておいた、って事ですか?」
「おーよ、俺と喧嘩をした形跡だけは綺麗さっぱり消してある。
俺は全力を出し切ったぜ!」
翔太が胸を反らせた瞬間、背後から強烈なハイビームが三人を照らした。
壊れた電化製品やら、廃材やらが山と積まれた廃工場に、黒塗りのBMW が乗り込んで来た。
「おお。
芳夫か!」
翔太が手を振ると、見るからにお坊っちゃん然とした、サラサラロングヘアーの少年が、金持ちオーラを撒き散らす笑みを浮かべながら、車から降りてきた。
「翔太、探したよ」
「いやぁ、また大河が誘拐されちまってさぁ」
進藤秋生が驚いた。
「また、なのか?」
「こいつ、ったら、今月三回目だぜ」
「テメー拐っておいて、発言すんなサスカッチ!」
大河は、すすっ、と翔太の影に隠れながら、進藤に怒鳴った。
「練馬と八王子、それにここ?」
芳夫が指を折る。
「うちの番長グループ四人の中で、一番チョロい奴の座は安泰だな」
「なに言ってるスか!
俺がわざと誘拐されてるから、先輩が合法的に乗り込んで、傘下を広げられるんじゃないスか?
つまり、俺が最も優秀な後輩、ってことでしょ」
おお、なるほど、と翔太は手を打った。
「お前ら、四人で番を張ってるのか?」
目を点にする進藤に、翔太はケラケラ笑って、
「そーさ。
学校の平和は、俺たちが護ってるのさ」
なぜか三人は、変なポーズを、ベンツのハイビームの前で、ビシッと決めた。
そーか。
四中じゃあ、誰もこいつらがマジだとは思って無いんだな…。
進藤は、生暖かい視線で三人を見送った。