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子供でいられなかった大人の話

作者: あやね

大人になって初めて気付く事がある。

それはもう二度と取り戻せないもので、どんなに願っても時間は戻らない。


彼女は満たされない想いを感じていた。 誰かに認めて欲しい。 誰かに見て欲しい。 誰かに側にいて欲しい。

誰もが抱く感情だけれど、彼女はどんなにそれを受け取っても満たされない。


少女時代、彼女は誰もが認める才女だった。

勉強は自分の年齢より、数年上のレベルを楽々とこなし、運動神経も人並み以上。

何をやらせても結果を残す。それは彼女にとって小さな誇りでもあった。

しかしそれは、望まれているものでは無かったのだ。


少女には出来の悪い姉がいた。

何をしてもうまくいかない姉は、いつも少女に先を越されてしまう。

同じように勉強をしても、自分の妹が常に先を行くその悔しさに何度も涙しながら、それでも努力することを諦めない人だった。


母親はそんな二人をみて、少女に言うのだ。

「お姉ちゃんが頑張ってるんだから、お姉ちゃんの邪魔をしちゃダメよ。」と。

少女はただ、自分の頑張りを見て欲しかっただけだったはずなのに。

少女に母親は、出来の悪い姉の心配ばかり。

それでも少女は姉のように努力を続けた。

いつか、自分を見てもらえるように。頑張ったねと褒めてもらいたくて。

彼女は誰よりも器用に幼少期を生きてきた。

誰より先を行くために、誰より大人になるために。

ただあの人に見てもらいたくて。


それでも少女の願いは叶わない。

少女の努力は誰にも認められず、誰に見られることもなく。

彼女が認めてもらいたかった人からは

「あなたなら出来て当たり前よね?」


……少女は頑張るのを止めた。

姉のように出来が悪ければきっと応援してもらえると思ったから。

それでも……少女は認めてもらえない。

「昔はあんなによくできた子だったのに。」

少女は誰からも見捨てられるようになった。

誰よりも早く大人になってしまったがために、誰よりも子供のまま。


誰にも認められない少女は、大人になっても求めている。

誰かが認めてくれることを。

子供の頃に求めたものを、大人になっても求め続ける。

しかしそれは、もう手に入らない。彼女は頑張るのをやめてしまったから。

大人になってしまった子供は永遠に求め続けるのだ。

心だけは少女のままに。


頑張ったねを聞きたくて。



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