1.新しい出会いと暗い過去
「人を信じるのが怖い。」
そうずっと思ってた。誰も信じれない。ずっと上辺だけで生きていく。そう思っていたのに。
声がした。胸の鼓動が早くなる。そんな怒鳴り声。聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない。でも、そんなことは叶わない。怖い、辛い、助けて。言葉を発することも出来ず、ただ強くベットの上に蹲り思い続けていた。
5月、暖かい日差しが窓から漏れ私の額を照らした。目覚ましの鳴る5分前。私がいつも起きる時刻。春の温もりを噛み締め、まだ起き上がりたくないと言っている身体を無理やり起こした。足が重い。しかし、どうしても今日は早く起きなければならない。なんて言ったって今日は転校初日。ここから、一から始めなくてはいけない理由が私にはあった。そう、誰にも言えないような大きな秘密が。
リビングに行き、ソファーに寝転んだ。ツイッターをチェックして出来事をひと通り見る。特にこれといったニュースもなく、朝ご飯のカリカリに焼けたトーストにかぶりついた。髪の毛は鳥の巣状態。女子がこんなのでいいのかっていうくらいの寝起き顔。パジャマというよりはタンクトップにバスパン。
「なんでここまでも女子力がないんだろう...。」
そう一人で呟いてスマホの時計を見た。あと1時間は余裕がある。家を出るまでの予定を立てながら、着替え始める。新調された制服。まだ新しさがある。転入の初日ということもあり実家に戻った私を、母親は撮影会をし、褒めまくってきた。だから正直気分もいい。けれど自分には「自惚れるな。」と言い聞かせた。準備を完璧に済ませ、三度もカバンを確認して家を出た。
電車に乗り込み、一人音楽の世界に入った。本を片手に持ち、まるで、漫画にでも出てきそうなシュチュエーションを行う自分を少し笑ってしまった。
(前までなら、こんな余裕なかったのにな。)
乗り換えを済ませ、改札を出て早足で学校へ向かった。普通に来る人よりも2本ほど早い電車に乗ったからか人がかなり少なかった。知らない顔に興味があるのか、校門を潜ると早めに終わった部活終わりの人達がこっちを見ながら話をしていた。咄嗟に下を向いてしまった。失敗したなって凄く後悔した。
(これじゃあ、印象悪すぎるだろ...。私、このままで大丈夫なの、これから...。)
恥ずかしさでまた一段と早足になり職員室へと向かった。先生に新しく入るクラスを教えてもらい、すぐその場を立ち去った。見慣れない景色、見慣れない人。不安の要素がありすぎてぼーっと窓から外を見る。この学校は部活にかなり熱を入れているらしく、設備がいいと評判だ。だからか、校庭の端にあるにも関わらずバスケコートがすぐに目に入った。
(いいなぁ...。)
朝練のあとの自主練に励んでいる数人を見ながら、素直にそう思った。けど、それはほんの一瞬で、
(私はもう関わってはいけない。)
そういう自己規制のほうが感情より大きく上回った。
教室に入り自分の席を探した。窓側にある端の席。
(まぁ、転校生って言えば定番かな笑)
なんて、思っていると時間が経ち、自己紹介をするコーナーになっていた。
「おはようございます!光中から来ました、五十嵐幸です。分からない事は多いんですけど仲良くしてくれたら嬉しいです、これからよろしくお願いします!」
あるあるすぎる様な挨拶をして、よろしくと軽く挨拶を交わしながら席に戻った。
(我ながら、いいスタート?好印象じゃない?笑)
なんて、変な事を考えニコニコしていた。1時間目は、急遽職員会議が行われるらしく自習になった。
(自習なら、絵でも描いちゃおうかなぁ)
そんなことを考えて準備をしていたら、ある一人の女の子が近づいてきた。
「ねぇねぇ!私、稲上桜月って言うの!桜月って呼んでね!あ、一応学級委員もやってるし分からないことあったら聞いてね!」
どこに行ってもこういう子はいるんだと実感して笑顔でありがとうと伝えた。すると、桜月は
「この学校の自習は、うるさいから覚悟してね笑」
って小悪魔みたいに笑って言った。私は首を傾げ
「そうなの?(笑)」
と柔らかい印象で答えた。
こんにちは、卯月皓です。
私は言葉って凄いなって思ってます。便利ではあるけど、一歩間違えると深く傷をおわせる凶器にもなる。
そういう言葉の凄さを沢山の人に知ってもらいたい。そう思って書いたのがこの作品です。初めて書いたと言うこともあり、まだまだ至らないところが多々あると思います。
なので、少しでも多くの感想がいただけたら嬉しいです。