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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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幸福亭

 「ここが幸福亭だな」


 『幸福亭』と書かれた看板を下げた、2階建ての店。店の雰囲気から、1階が酒場や食堂で2階が宿屋と言う営業形態を取っているようだった。


 煉太郎達は幸福亭に向かって踏み出し、扉を開けた。


 店内に足を踏み入れると、店の中は人でごった返ししていた。


 冒険者ギルドが薦めてくるだけあって人も多く、店員も慌ただしく走り回っており、煉太郎達に気が付いていないようだった。


 「あ、あの……」


 通り過ぎていく店員に声をかけるセレンだが、その声は届いていないようだ。


 「すみません」


 「あらっ、気づかなくてごめんなさい!」


 ようやく煉太郎達に気付いたのか、店員が駆け寄ってくる。


 「改めまして、いらっしゃい! 3人ならそこの席が空いてるわよ」


 「いや、食事もそうなんだが先ずは2階の部屋は空いているか?」


 「あら、宿泊のお客様だったのね。ここを宿に選んでくれてありがとう。私はリリアン。この幸福亭の店主よ。よろしくね」


 「ああ。それで、部屋は空いているのか?」


 「ええ。ちょうど3人部屋が空いてるわ。宿代は先払い。何泊まで泊まっていく予定かしら?」


 「そうだな……」


 久しぶりの街なのでたまにはゆっくり過ごしたいと思う煉太郎。買い出しもする必要があるので、最低3日は滞在したいと思う。


 「とりあえず3日で頼む」


 「はいよ。3人部屋で3日間なら金貨3枚(30000円)よ」


 「これでいいな?」


 煉太郎は金貨3枚をリリアンに渡す。


 「はい、確かに受け取ったよ。それで、夕食は食べるかい?」


 「頂こうか」


 リリアンに案内されて席に座ると、品書きを煉太郎達の前に置いた。


 「この街の味を気に入ってくれると嬉しいわ。料理の味は保証するから好きなものを頼んでね」


 「そうだな……せっかくだからこの街の伝統料理でもあればそれを頼む」


 「この街の伝統料理ね……。だったらナーファンだね」


 「ナーファン? どんな料理なんだ?」


 「ナーファンはソースを茹でた麺にかけた料理でね、栄養があってこの街に古くから伝われている料理なんだ」


 「それじゃあそれを貰おうか」


 「私も同じもので!」


 「私もそれでお願いします」


 「はいよ。ちょっと待っててね」


 そう言って厨房に向かうリリアン。


 暫くするとリリアンは料理を持ってきてテーブルの上に置く。


 まるでうどんのように太い麺。赤みを帯びた橙色のソースには細かく刻まれた野菜が加えられている。


 「じゃあ、いただこうか」


 フォークで麺を絡めてそのまま口に運ぶ。


 「おお」


 噛む度にモチモチとした麺の食感。


 ソースはトマトをベースにして作られており柔かな酸味と加えられた野菜からは歯応えとほのかな苦味がある。


 まるでうどんとスパゲッティーを合わせた料理のようだ。


 「こいつは美味いな」


 「うん」


 「ええ、美味しいですね」


 「クルル!」



 ナーファンの味に舌を唸らせているそんな時だった。


 「やっと見つけたよ!」


 突然の大声に視線を向けると、そこには先程襲い掛かってきたラウアの姿があった。その後ろには冒険者ギルドで絡まれた冒険者3人もいた。


 だが、1つだけ不可解なことがあった。それは冒険者達の全身がボロボロなことだ。それは煉太郎達と勝負した時よりもボロボロだった。


 煉太郎達の発見したラウアは冒険者3人と共に近づいてくる。


 流石に店の中では襲ってこないだろうと煉太郎は思っていたが、念の為に懐のカルンウェナンを取り出す準備はしておく。


 そして、煉太郎達が座っている席に近づくと、ラウアは――


 「申し訳なかった!」


 床に跪いて深く頭を下げる。つまりは土下座をするのだった。


 予想外の出来事に思わず絶句する煉太郎達。他の客達も『剣鬼』の異名を持つランクCのラウアが突然土下座をする事態に何事かと驚いていた。


 「話はギルドマスターに聞いた。全部この馬鹿達が招いたことだと言うことを。ほらお前達、そんなところで突っ立ってないで頭を下げな!」


「「「は、はい! 姐御!」」」


 ラウアに指示されて冒頭者3人も土下座をする。


 「こいつらにはアタシがケジメをつけさせた。だからこいつらを許してやっておくれ」


 ザーギィに真実を聞かされたラウアは直ぐ様冒険者3人を問い詰めた。そして、嘘をついていたと知るや否や、冒険者3人にはキツい扱きを受けることになった。冒険者3人の怪我はそれによって負った怪我なのだ。


 「その代わり、私を煮るなり焼くなり好きにしておくれ。勘違いだったとは言え、何も悪くないあんたに斬り掛かったんだからね……」


 心底申し訳ないと言った表情で頭を下げ続けるラウア。極端な性格なんだろうと煉太郎は思った。


 「もう済んだことだ。別にもう気にしてねえよ。だから頭を上げな」


 「しかし、これでは『守護の剣』の頭としての面目が保てねえよ……」


 「分かった。それじゃあ飯を奢れ。それでもうこの件は不問だ」


 「……本当にそんなんでいいのかい?」


 「ああ。それで構わないよな、2人共」


 「私はそれでいいよ」


 「私もです」


 フィーナ達もそれで良いようだ。


 「分かった。食事の代金はアタシが払おう。だから存分に食べな!」


 「だってよ、良かったなフィーナ」


 「うん!」


 その後、フィーナが店中の料理を大量に平らげたせいでラウアの財布が空になり、深く落ち込むことになるのだった。

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