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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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剣鬼

 『守護の剣』の冒険者達との揉め事を終えた煉太郎達は、街の地図を頼りに換金屋に訪れていた。


 特に売却する程の素材はないのだが、いつまでも異空間に収納していても無意味なので街に着いたら極力余分な物は全て売却するようにしていた。


 「モンスターの素材と武器、防具を売却したい」


 「ああ、構わねえよ。ここに出してくれ」


 煉太郎達の対応をするのは筋肉隆々の厳つい男性だった。どうやら彼がこの換金屋の店主のようだ。


 「んじゃ、出すぞ」


 煉太郎は今日は討伐したばかりのオークの死体(合計20匹)、先程の冒険者達から持ち去った武器と防具を出す。


 あまりのオークの量と武器などに口をあんぐりと開けている店主だったが、直ぐに我に返る。


 「これは凄い量だな。しかも討伐してそれほど時間が経過していない。これなら黒金貨2枚(200000円)だな。武器や防具も使い込んではいるがどれも良い代物だな。特にこの長剣はなかなかの一品だ。全部で黒金貨3枚(300000円)と言ったところか」


 「出来ればオーク3匹分の肉を分けて貰いたい。その分の金額は差し引いても構わないから」


 「分かった。ちょっと待ってな」


 そう言って店主はオークを解体し始める。


 店主の解体の腕は非常に鮮やかでそんなに時間をかけることなく肉を捌いていく。


 「出来たぜ」


 僅か十数分でオーク3匹を解体する店主。オーク1匹でおよそ100キロの肉――合計3匹でおよそ300キロの肉を、煉太郎に渡す。


 (これだけあれば当分豚肉を買わずに済みそうだな。今度はしょうが焼きでも作ってみるか)


 次に作る献立を考えながらオーク肉を異空間に収納する煉太郎。


 「えーっと、オーク3匹分の肉と解体費を差し引いて、武器と防具の値段を合わせれば黒金貨4枚と金貨6枚(460000円)だな」


 店主は硬貨が入った袋を煉太郎に渡す。煉太郎も袋の中身を確かめると、それを異空間に収納して外に出る。


 「さて、素材も売却出来たことだし、そろそろ宿屋に言って休もうか。今日は色々あって疲れたし――」


 「見つけたよ!」


 「……何だ?」


 突然の大声に視線を声のする方へと向けると、女戦士が煉太郎達を指差していた。


 褐色の肌に短髪の白髪。相当な鍛練を積んでいるのか、女性にしてはかなり鍛え抜かれた肉体をしている。その肉体を守るのはビキニアーマーで、背には身の丈以上はある大剣を担いでいる。いかにも『屈強』と言う言葉が似合いそうな女剣士だった。


 「お前がレンタロウだな!?」


 「ああ、そうだが?」


 初めて会う女剣士に名前を呼ばれて思わず首を傾げる煉太郎。どうして初めて会う女剣士が自分の名前を知っているのか疑問に思ったからだ。


 「そうか、ならば私に斬られろ!」


 「何――うおっ!?」


 突然、背中の大剣で煉太郎に斬り掛かる女剣士。回避したが、当たれば間違いなく致命傷を負う程の一撃だった。


 「危ねえな……」


 「チッ、中々良い動きをするじゃないか……」


 小さく舌打ちし、殺気を含んだ目で煉太郎を睨む女剣士。


 「おいおい、あいつ『剣鬼』じゃねえか?」


 「ああ、ランクBの女冒険者。間違いないな……」


 「どうして『剣鬼』がこんなところで剣なんか振り回してるんだ?」


 (ランクBだと? なるほど、道理で強いわけだな……)


 剣鬼と呼ばれる女剣士の攻撃を避けながら周囲にいる冒険者達が話しているのを聞く煉太郎。


 冒険者ギルド前で勝負した冒険者達とは比べ物にならない程の実力。ランクDの冒険者とランクBの冒険者。2つランクが違うだけでここまで実力の差があるのかと思わず感心してしまう煉太郎。


 「油断してると痛い目に遭うよ!」


 煉太郎に目掛けて大剣を降り下ろす女剣士。


 煉太郎はカルンウェナンを取り出してその一撃を受け止める。


 (想像以上に重い一撃だな……。これは油断してるとこっちがやられるな……)


 改めて女剣士の実力を実感する煉太郎。恐らく、今まで対峙した人の中では断トツに強かった。


 「いったい貴方は誰なんですか!? レンタロウさんが何をしたと言うんですか!?」


 セレンの問いに女剣士は動きを止める。


 「アタシはカウラ。この街を拠点に活動しているクラン『守護の剣』の頭領だよ!」


 「なるほど、そう言うことか……」


 『守護の剣』と言う名のクランに聞き覚えがある煉太郎。先程冒険者ギルド前で勝負して完敗した3人の冒険者が所属しているクランだ。


 「さっきの冒険者達の報復しに来たと言うことか……」


 「そうだよ。よくもアタシの大事な仲間を可愛がってくれたねえ! 覚悟しな!」


 「悪いが、そんな覚悟はしたくない、な!」


 「――ぐっ!?」


 ラウアの攻撃を受け流しながら煉太郎は彼女の腹部へと蹴りを入れる。


 少し強めで蹴りを入れたつもりだったが、ラウラは平然としていた。


 「へえ、下衆野郎にしては中々の実力だね!」


 「あ? 下衆野郎ってどういうことだ?」


 「しらばくれるな! お前が先に部下に因縁をつけた挙げ句、嫌がる少女を賭けの対象にして勝負を吹っ掛け、気を失っている間に武器や防具を盗んだそうじゃないか!」


 「はあ?」


 女剣士が言っていることと実際に起きた出来事の微妙な違いに思わず首を傾げる煉太郎。


 因縁をつけて来たのは冒険者達の方で、フィーナは自分から賭けの対象に志願し、身包みを剥いだのは勝負に勝った報酬として戴いたのだ。別に煉太郎は何1つ悪いことはしていなかった。


 「待って。あの勝負は冒険者達から先に吹っ掛けてきたのが原因だよ。それに私は嫌々賭けの対象になったんじゃないよ? それにあの人達の武器や防具を持って行ったのは勝負に勝った報酬だからだよ」


 「……何だって?」


 フィーナの言葉に、ピタリと動きを止めるアウラ。


 「……それは、本当か?」


 「ああ」


 頷く煉太郎。


 「何ならギルドマスターであるザーギィに聞いてみろ。証言してくれると思うぞ」


 「……」


 アウラは少し黙ると、小さく頷いた。


 「……分かった。ちょっとギルドマスターに聞いて確かめてくるから、あんたが達はここで待ってな。いいかい、アタシが戻ってくるまで絶対に逃げるんじゃないよ!」


 そう言い残して、アウラはその場を去ってしまった。


 「行っちゃったね……」


 その場に残され、フィーナがポツリと呟いた。


 「そうだな。宿屋に行くぞ」


 「え? あの女性を待たなくていいんですか?」


 セレンの質問に煉太郎は肩を竦める。


 「ギルドマスターに話を聞きに行ったのならもう問題は解決したようなものだろう。何か今日は色々と疲れた。早く宿屋に行って休みたいんだよ」


 そう言って、煉太郎達は改めて『幸福亭』に向かうのだった。

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