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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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守護の剣

 「よう、無事に冒険者登録が完了して良かったな」


 「これで晴れて新人冒険者。俺達先輩冒険者が色々と教えてやるよ」


 「へへへ……」


 親切そうに接してはいるが、下心丸見えなので心底鬱陶しそうな表情を浮かべる煉太郎達。


 「なあ嬢ちゃん達、そんなひ弱そうな坊主は放っておいて俺達と一緒に飲まねえか?」


 「何なら夜の方も充実に過ごさせてやるぞ」


 「だから今夜辺り付き合ってくれよ」


 卑猥な言葉を言われて、フィーナ達は心底不愉快ですと言いたげな表情をする。それどころか、煉太郎を馬鹿にしたことで内心怒りを感じているようだ。


 「口を閉じろ、塵くず共が」


 「……今、何て言った?」


 「口を閉じろと言ったんだ。おっさんは耳が遠いのか?」


 聞き間違いかと思って問い返し、返ってきたのは不遜な物言いだった。冒険者達の額に青筋が浮かび上がる。


 「おい、口の聞き方には気をつけろよクソ餓鬼……」


 「俺達を誰だと思っていやがる……」


 「この街で最大規模のクラン『守護の剣』だぞ?」


 「知るかよ。それより口を開くな。酒臭くて敵わない」


 態度を改めない煉太郎に冒険者達はスッと表情を消す。


 「舐めた口を聞きやがって……」


 「こいつはキツいお仕置きが必要だな」


 「ああ、身の程ってものを教えてやろうか」


 冒険者達はそれぞれ己の得物を手にする。


 「……」


 煉太郎達も戦闘の準備に入る。


 だが――


 「待ってください!」


 呼び止められて全員が受付嬢に視線を向ける。


 「冒険者ギルド内での騒動はご法度です。もしここで暴れるのであれば即刻冒険者の資格を剥奪しますよ!」


 受付嬢の言葉に冒険者達は小さく舌打ちする。冒険者の資格を剥奪されるのは流石に不味いと思ったようだ。


 「分かったよ。おい、表に出ろ」


 冒険者達が建物の外に出るよう促すと、煉太郎は受付嬢に質問する。


 「良いだろう。なあ、こいつらに勝ったら俺達はランクFに昇格出来るんだよな?」


 「何だと!? 餓鬼のくせにデカイ口叩くとは早死にするぞ?」


 余裕ぶる煉太郎の態度に更に怒りが増す冒険者達。


 「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ、おっさん」


 煉太郎達は建物を出て、互いに向き合う。


 「ヘヘ、今更泣いて謝っても許さねえからな」


 「骨の2、3本は折れると思うが覚悟しろよ」


 「これでも俺達はランクDの冒険者なんだ。身の程ってものを教えてやろう」


 改めて冒険者達は己の武器を手にする。1人は長剣、1人は斧、もう1人は槍を構えてニヤニヤと笑みを浮かべる。


 煉太郎達の周囲には、距離を取りつつも他の冒険者や街の住人が野次馬として群がっている。ちょっとした娯楽として騒いでいるのだろう。


 ちなみに、冒険者達は酔っぱらっている影響や煉太郎の生意気な態度で相当頭に来ているようだ。今は煉太郎を存分に痛めつけると言う思いで全く気になる様子はない。


 すると――


 「ねえ、せっかくだから賭けをしない?」


 「あん? 賭けだと?」


 冒険者達はフィーナの突然の提案に首を傾げる。


 「そう、賭け。貴方達が勝ったら私を好きにしてもいいよ」


 「フィーナ!? 何を言ってい――んぐっ!?」


 当然猛反対の煉太郎だが、フィーナに口を塞がれてしまう。


 「そして、私達が勝ったら貴方達の持ち物を全部貰う。どう?」


 フィーナの申し出にゴクリと生唾を呑み込む冒険者達。美少女のフィーナを一晩好きにしても良いと言う賭けが魅力的に感じているのだろう。


 「よし、良いだろう。その賭けを受けてやろう」


 フィーナの提案に乗る冒険者達。もう自分達の勝利を確信しているのか、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


 そんな冒険者達を他所に、煉太郎は不機嫌になる。勝手に賭けをしたのが気に入らないのだ。


 「勝手なことをしてごめんね、レンタロウ。でも、私達なら大丈夫だと信じてるから」


 フィーナの確信しきった瞳に煉太郎は大きく溜め息を吐く。


 「フィーナには敵わないな……」


 そう言ってフィーナの頭を撫でる煉太郎。


 「おい、イチャイチャしてないでさっさと掛かってきな」


 余裕の態度で冒険者は宣言すると、煉太郎は薄く笑みを浮かべる。


 「そうか。それじゃあ遠慮なく行くぞ」


 そう言って、煉太郎は一気に長剣使いに詰め寄ると、その顔面に拳を叩き込む。


 「がはっ!?」


 顔面を殴られた長剣使いは数メートル先まで吹き飛び、白目を剥いて気絶することになる。


 「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」


 暫くの沈黙。


 最初は何が起きたのか理解出来ない周囲の人間だったが、ようやく事態が呑み込むことが出来た時には既に遅く――


 「〝アースウォール〟」


 「ぐへっ!?」


 突如地面から現れた土壁が斧使いが宙を舞うとことになる。


 そして残された槍使いは――


 ヒュン!


 「ぐげっ!?」


 セレンが矢を3本同時に槍使いに直撃する。鏃は外しているので殺傷力はないが、創世樹の弓で放ったので威力は凄まじく、額に直撃した槍使いは頭部が弾かれたかのように後方へと吹き飛んだ。


 「俺達の勝ちだな」


 そう煉太郎が言うと、周囲の野次馬が歓声を上げる。


 一方はランクDの冒険者3人、もう一方は先程冒険者登録を終えたランクGの新人冒険者3人。しかもその内2人は女性だ。普通に考えればどちらが勝つなんて一目瞭然の勝負だったが、結果は新人冒険者達の圧勝で終わった。


 野次馬の中には信じられないと言った者達が半分以上いた。それほど冒険者のランクは絶対視されているのだ。


 「見事だ」


 野次馬から受付嬢と共に現れたのは顎髭を細目の老人だった。老人だが体格はガッシリとしており、まるで歴戦の強者と言った覇気を纏っている。


 「誰だあんた?」


 煉太郎の質問に老人は答える。


 「儂はザーギィ。ここの冒険者ギルドのギルドマスターをしている者だ」


 まさかの大物に内心驚く煉太郎。


 「それで、俺達に何か用があるのか? 言っておくがこの勝負は冒険者同士の揉め事だから別に問題ないと思うぞ」


 煉太郎の言葉にザーギィは首を横に振るう。


 「儂はただお前達が戦闘を充分行えるかどうかを見ていただけだ」


 「ふ~ん。それで、俺達は合格か?」


 「ああ。合格だ。お前達3人はGランクからDランクに昇格させよう」


 煉太郎達の昇格に周囲が動揺する。何せGランクからいきなりDランクに昇格したのだ。普通なら考えられないことだった。


 「随分と気前よく昇格させてくれるんだな」


 「儂はお前達がそれほどの実力を持っていると判断しただけだ。銀髪お嬢ちゃんは無詠唱で魔法を発動させた。エルフお嬢ちゃんの弓の腕前は合格点。そしてお前さんの驚異的な身体能力。そして何よりランクDの冒険者を瞬殺したんだ。当然だろう」


 (良く見てるな。流石はギルドマスターと言うべきか)


 「さあ、騒ぎは終了だ。他の奴らの通行の邪魔になる。とっとと散りな」


 勝負が終わって、これ以上留まる理由はないと思ったのか、ザーギィの言葉に野次馬達は去っていく。


 「さて、俺達もそろそろ行くとするか。約束通りにこいつらの財産は俺達が貰うが、構わないよな?」


 「構わない。そいつらが後から何と言おうが、儂が証人になっている。安心しな」


 ギルドマスターのザーギィの許可を貰い、煉太郎達は気絶している冒険者達の武器や防具、通貨などの装備品を全て頂くことにした。


 「まさか衣服まで奪うとなは……」


 「こいつらが賭けたのは財産の全てと言ったからな。衣服もその内に入るだろう」


 やられたらとことんやる。煉太郎は冒険者達の衣服を剥ぐと、そのまま燃やす。


 流石に薄汚い衣服は石貨1枚にもならないと思ったからだ。正確に言えば、殆どは嫌がらせのつもりだった。フィーナとセレンに不快な思いをさせたからだ。


 「さて、そろそろ換金屋に向かうか」


 そう言い残して、煉太郎達は素っ裸となった冒険者達を置いて去る。


 そんな残された冒険者達は目を覚ますまで、あられもない姿を晒し続けるとことになるのだった。

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