表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
96/139

冒険者ギルド

 中央広場を抜けると、目的の冒険者ギルドに到着した。


まるで鳥を思わせるような絵が描かれている看板を付け、他の建物とは違って木造で、規模は民家の3倍は大きく、歴史を感じさせる。因みにこの鳥は冒険者ギルドのマークで、『冒険者は鳥のように自由であるべき』と言う信条を込められているそうだ。


 「どうやらここが冒険者ギルドで間違いないようだな。俺のイメージ通りだと嬉しいんだがな……」


 そう言って、煉太郎は扉をギィッと開けて、建物の中に入る。


 そこで煉太郎の目に入ってきたのは以外な光景であった。


 煉太郎が漫画や小説では、冒険者や傭兵や荒くれ者が大勢集り、酒を豪快に飲んでは下品な声を上げ笑い、暴れまわって喧嘩をする、そう言ったイメージを予想していたのだが、実際は煉太郎の予想とは大きく違っていた。


 確かに冒険者ギルドでは酒や料理を提供する酒場のようなスペースはあるが、そこにいるのは3人程の冒険者達が静かに酒を飲んでは雑談をしているだけで、殆どの席は空いている。


 (何だか拍子抜けだな……)


 自分の予想と大きく異なる冒険者ギルドに、思わずガッカリしてしまう煉太郎。


 そんな煉太郎達を酒場の冒険者達が当然のように注目する。初めは見慣れない3人組を興味があったに過ぎなかったが、その視線がフィーナとセレン、そしてクルに向けられると、好奇心が上がる。


 ある者はフィーナの美貌に見惚れ、ある者はエルフであるセレンを珍しそうに眺め、ある者はカーバンクルのクルの価値に気付いたような視線を向ける。


 煉太郎のことはまるで眼中にないようで、只の餓鬼だと言う認識程度であった。


 「ようこそいらっしゃいませ。何かご用件がありますか?」


 煉太郎達が物珍しそうに周囲を眺めていると、唐突に声をかけられる。


 声のする方へと視線を向けると、そこには酒場のウエイトレスが煉太郎達に話し掛けていた。


 「モンスターの素材を換金したいんだが、どうすればいい?」


 「それでしたらあちらの受付でお聞きください」


 ウエイトレスが視線をずらすと、そこには受付らしき場所があった。受付嬢を任せられるだけあって中々の美人が佇んでいる。


 「モンスターの素材を換金したいんだが、換金屋の場所を教えて貰えるか?」


 「換金屋の場所ですか? どうやら皆様はこの冒険者ギルドセバーラ支部には初めての方のようですね。失礼ですが冒険者カードの提示をお願い出来ますか?」


 「ん? 冒険者カードって何だ?」


 煉太郎の言葉に受付嬢は少し驚いた表情をする。


 「申し訳ありません。冒険者ではなかったのですね。冒険者カードとは冒険者ギルドに登録した者――つまりは冒険者の身分証明書みたいな物です。冒険者カードがなくても売却は可能ですが、冒険者登録をすれば色々とお得なんですよ」


 「ほう、詳しく教えてくれないか?」


 受付嬢が言うには、冒険者になれば3つの特典が受けられるようだ。


 1つは素材やアイテムのは売買。冒険者ギルドが運営している換金屋でモンスターの素材などを売却すれば多少だが高く売ることが出来る。また、アイテムを購入する場合はアイテムによっては安く購入することが出来る。


 2つ目は宿屋での宿泊。冒険者ギルドが経営している宿屋であれば格安で宿泊出来るようになる。


 3つ目は街へ入る際の通行料の免除だ。都市や多きな街に入る際は通行料を支払わなくて済むようになる。


 「なるほど、確かに冒険者になった方が色々と便利そうだな。よし、せっかくだから冒険者登録をしよう3人分頼む」


 「分かりました。ではこちらの書類に名前と年齢、特技などの必要事項の記入をお願いします。代筆は必要ですか?」


 「いや、構わない」


 煉太郎達は書類に必要事項を記入して受付嬢に渡す。因みにこのラディアスの世界で名字は貴族、或いは何らかの偉業を成し遂げた者が持っている。名字付きだと何かと面倒事が起きると思った煉太郎は書類に『レンタロウ』とだけ記しておいた。


 「ありがとうございます。冒険者カードが出来るまで時間が掛かりますので、冒険者に関する説明をさせて貰います」


 受付嬢は冒険者の説明を始める。


 冒険者はランク制で、G~Sまである。最高位のSランク冒険者は世界でたったの5人しか存在しない。


 最下位のGランクは主に街中で行う依頼を受ける者達専用のランクで、街の外に出る依頼を受ける場合はFランクにならないと受けられない。Fランクに上がるには戦闘が可能とギルド職員に認められれば直ぐにでも昇格出来る。


 依頼ボードに貼られている依頼書を受付に提出すれば依頼を受けることが出来る。依頼が完了すれば依頼書に記されている金額が貰えるが、規定日数以内に依頼を完了出来なかったり、依頼の条件にそぐわない場合は違約金として報酬の半分をギルドに提出しなければならない。


 依頼については自分のランクの1段上までしか受けられず、下限はない。


 ランクの昇格は依頼を規定回数熟すか、社会への貢献などで評価・昇格することが出来る。


 冒険者登録は無料だが、冒険者カードを紛失した場合、再発行には手数料として黒金貨1枚(100000円)が必要となる。これは冒険者としての自覚を持てと言う意味が込められている。


 犯罪を犯すと冒険者カードは没収され、最悪の場合は二度と冒険者として活動出来なくなる。


 最後に冒険者ギルドは依頼やその他の関係で冒険者同士の揉め事には関与しない。


 「以上で説明は終わりです。冒険者カードも丁度出来ましたね。こちらが貴方達の冒険者カードです。記載されている内容に間違いがないか確認してください」


 冒険者カードを受付嬢から渡され、煉太郎達は冒険者カードを確認する。


 「問題ない。それでモンスターの素材の売却を頼みたい」


 「分かりました。ではこの街の地図をお渡ししますので冒険者ギルドが管理する換金屋に行ってください」


 「分かった。それともう1つ聞きたいんだが、おすすめの宿はあるか?」


 「それなら『幸福亭』がお勧めですよ。料金は少し高めですが美味しい料理にお風呂がついてますよ」


 「お風呂!」


 「そこにしましょう!」


 嬉しそうなフィーナとセレン。


 旅の最中は風呂など入れる訳がなく、湯を沸かして身体を洗うことしか出来ないので久しぶりの入浴に喜びが隠せないようだ。


 「よし、素材を換金したら今日はその宿屋に行くとしよう」


 そう言って踵を返すと、そこには先程酒場で酒を飲んでいた冒険者3人がニヤニヤと笑みを浮かべて扉の前に立っていた。


 (やれやれ、さっそく面倒事か……)


 そう思いながら、面倒事が起こることを予想しながら冒険者達に近づくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ