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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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セバーラの街

 夕方。


 「あれがセバーラの街か」


 遠く離れた場所で魔動ジープを止めて降りると、煉太郎は小さく呟いた。


 煉太郎が見ている街はユーラシス帝国にある街の中でも2番目に大きいセバーラの街。冒険者や観光客が多く訪れる街だ。


 以前、オルバーン王国の、王立図書館で調べた書物によると、街の付近にはダンジョンが存在し、未だに制覇した者はおらず、多くの冒険者はダンジョンに隠されたお宝を求めて、日々探索続けているようだ。


 それに観光地としても有名で、街の広場にはかつてユーラシス王国を滅亡にまで追い込んだ邪神の遺産が封印されている石碑があり、観光客はそれを見る為に訪れている。


 「邪神の遺産を見て、何が楽しんでしょうか……」


 セレンがどこか暗い表情で呟く。


 ラナファスト大森林の創世樹の内部に封印されていたマンドラゴラ。あのような禍々しい存在を1度でも目にすれば嫌悪するのも当然ことだった。それが父親の死に関わっているとなれば尚更そう思えるのだろう。


 「さあ、そろそろ行こうか」


 これ以上話を続けるのはセレンの為にはならないだろうと思った煉太郎は、魔動ジープを異空間に収納して、ここからは徒歩でセバーラに向かうことにした。


 流石に得体の知れない物体が街に近づくのは大騒ぎになると思ったからだ。街に滞在する最中は、面倒事とは極力避けていたいのだ。


 暫く歩くと、ようやく入口のまで辿り着いた。入口の脇には小屋が立てられていた。


 「お前達、見ない顔だな」


 小屋から出てきたのは武装した男。どうやら小屋は兵士の詰所だったようだ。


 「街に入りたかったらこの書類にサインを書いてくれ」


 兵士は煉太郎達にそれぞれ書類を渡そうとすると、フィーナとセレンの姿を見て、兵士の顔が真っ赤に染まり硬直する。


 どうやら2人の美貌に見惚れているようだ。フィーナは言わずもがな、絶世が付く程の美少女。セレンもエルフ独特の美貌を持ち、何よりプロポーションが抜群だ。兵士が見惚れるのも無理はないだろう。


 「おい、サイン書いたぜ」


 いつまでもフィーナ達に見惚れる兵士に痺れを切らしたのか、煉太郎は書いた書類を兵士に突き出す。


 「あ、ああ。すまないな。書類はこれで良い。後は通行料として1人銀貨1枚を払って貰う」


 「これで良いな?」


 煉太郎は兵士に3人分の通行料だある銀貨3枚を兵士に支払う。


 「確かに。それにしてもあんた達はこの街へは何しに来たんだ? やっぱりダンジョンの探索か?」


 「いや、俺達は旅の途中でな。ここには食料の補給、それとモンスターの素材を売却しに訪れたんだ」


 「なるほどな。でもよ、見たところモンスターの素材を持っているようには見えないな……」


 煉太郎達は武器以外の荷物は全て異空間に収納しているので、殆ど手ぶらな状態だ。不自然に思うのは普通だろう。


 「もしかして、その肩に乗っているモンスターか? 確かに珍しそうなモンスターだな……」


 「クルルッ!」


 嫌な視線をジロジロと向けられて、「違うよ!」と言いたげにクルが鳴く。


 「そんな訳ないだろう。よく見ろ、耳に隷属用のマジックアイテムを付けているだろう」


 「だとすれば、モンスターの素材はどこにあるんだ?」


 しつこい兵士にうんざりした煉太郎は異空間からオークの死体を1つ出して見せる。


 「うおっ!?」


 突然目の前にオークの死体が現れて、思わず尻餅を付く兵士。


 「異能の『異空間収納インペントリ』だ。モンスターの死体は全て異空間に収納している。これで良いか?」


 「あ、ああ……。異能の持ち主だったのか……」


 未だに驚いた表情で兵士は立ち上がる。


 「それにしても『異空間収納インペントリ』か。異能を持たない俺にとっては羨ましい能力だな」


 「そ、そうか……」


 オルバーン王国では非戦闘系の異能と言う理由で役立たずやお荷物係などと蔑ろにされていたが、こうして素直に褒められるとどこかむず痒い気持ちになってしまう煉太郎だった。


 「そうそう、この街について詳しく知りたいなら冒険者ギルドに行くと良いぞ」


 「冒険者ギルドにか?」


 「ああ。この中央通りを真っ直ぐ進めば邪神の遺産が封印された石碑が置かれた中央広場がある。そこを更に真っ直ぐ進めば冒険者ギルドがある。あそこならこの街の詳しい事や良い宿屋も教えてくれる筈だと思うぜ」


 「そうか。ありがとな」


 「おう、セバーラにようこそ」


 兵士から必要な情報を聞きいた煉太郎達は街の中に入る。


 兵士の言う通りに中央通りを真っ直ぐ進む。


 近くにダンジョンがあるからか、やはり冒険者の数が多い。かつてのオルバーン王国の迷宮都市メルリオやエルバナ公国の公都ハーンス程ではないが、それなりに活気がある。


 多くはないが露店も出ており、もう夕方だと言うのに呼び込みの声や値切りの交渉があちこち聞こえてくる。


 こう言った雰囲気は嫌いではないので、煉太郎だけでなくフィーナ達も久しぶりの街に喜びの表情を浮かべている。


 暫く騒がしい中央通りを歩いていると、大きな石碑が置かれた広場に到着する。どうやらここが中央広場のようだ。


 「これが邪神の遺産が封印された石碑か……」


 「大きいね……」


 「はい……」


 中央広場の真ん中に置かれている大きな石碑。5メートルはあるだろう。石碑の至るところに解読不能な文字が彫られている。


 (この感じ……似ているな……)


 僅かではあるが異質な魔力が石碑から発せられているのを煉太郎は感じた。それはまるでマンドラゴラと同じ魔力を。


 この石碑に邪神の遺産が封印されていることは間違いないと煉太郎は確信した。


 (あんなのがまた暴れるのだけは勘弁して貰いたいな……)


 煉太郎達を苦しめた邪神の遺産であるマンドラゴラと同等の存在。1度対戦した事があるからこそ、2度と邪神の遺産には関わりたくないと煉太郎は思っていた。


 「レンタロウ、そろそろ冒険者ギルドに行こうよ」


 「ん? ああ……」


 出来ればこのまま封印されたままであることを祈りながら、煉太郎達は冒険ギルドへと向かうのだった。

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