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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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サンドイッチ

 ユーラシス帝国の街道を、見たことがない黒い物体が凄まじい速度で砂埃を巻き上げながら爆走していた。


 そんな黒い物体を目にした者達は皆、「新種のモンスターかっ!?」とギョッと目を剥くことになる。


 しかしそれは、煉太郎が運転している魔動ジープだった。


 エルバナ公国を離れて1週間。旅はかなり順調に進んでいた。


 魔動ジープは馬車とは違って魔力で起動するので煉太郎の魔力がなくならない限り走り続けることが出来る。


 それに煉太郎は3日のうち1日は夜通し運転するようにしていた。睡眠をあまり必要としない煉太郎にとってはこれが効率の良い旅の仕方であった。


 残りの2日は野宿で過ごしており、これはフィーナ達の為だ。車内での睡眠はお世辞にもあまり居心地の良いものではないと煉太郎が思っているからだ。別にフィーナ達は車内で眠ることに不満を抱いている訳ではないが、煉太郎が頑なに拒んでいるのだ。


 普段はぶっきら棒だが、そう言うところは気を使う煉太郎。だからこそ、フィーナ達はそんな彼を慕うのだろう。


 「そろそろ昼食の時間だな。この辺で休憩をするか」


 煉太郎は魔動ジープを街道から少し逸れて、そこで昼食を取ることにした。


 「料理を作るから、机の準備は頼んだぞ。何かあったら直ぐに呼べよ」


 「了解」


 「分かりました」


 「クルルルル!」


 煉太郎マジックテントの布を取り出して地面に置いて魔力を流し込むと、布はテントへと変わる。


 マジックテントに入り、キッチンの前に立つ煉太郎。


 「今日の昼食はサンドイッチにしようか」


 今回作るサンドイッチは2種類。タマゴサンドとハムレタスサンドだ。


 煉太郎はサンドイッチに必要な食材を異空間から取り出す。


 「まずはマヨネーズからだな」


 ボウルに卵黄、塩、胡椒、酢を入れて泡立て器でよく混ぜる。


 かき混ぜた卵黄に少しずつ油を入れながら再びかき混ぜ、乳化すればマヨネーズの完成。


 最初はタマゴサンド。


 まずはあらかじめ用意していた茹で卵の黄身を取り出して潰し、白身は微塵切りにしていく。


 潰した黄身にマヨネーズ牛乳、塩、胡椒、砂糖を加えてよく混ぜ、白身を加えて再度混ぜる。


 パンにバターを塗り、混ぜた卵を盛りつけもう1枚パンを重ねて、手頃なサイズにカットすればタマゴサンドは完成。


 次はハムサンド。


 バターを塗ったパンの上にマヨネーズを塗り広げ、食感を楽しめるように千切ったレタスを乗せる。


 ハムとチーズを手頃なサイズに切ってレタスと上に並べ、パンを重ねてカットすればハムサンドの完成。


 飲み物はラナファスト大森林で採れた茶葉を使用したアフタヌーンティーを淹れる。


 「おーい、昼食が出来た――って、どういう状況だ?」


 出来たサンドイッチとアフタヌーンティーを持って外に出ると、異常な光景に思わず目を丸くさせる煉太郎。


 目の前に広がる光景はオーク達の屍だった。


 あるオークは全身を氷で覆われ、あるオークは全身を矢で射抜かれ、あるオークはプスプスと煙を立てて黒焦げになっている。


 『オーク』


 ランクEの亜人型モンスター。


 顔は豚で、体格は成人男性並。剣や槍を使うぐらいの知能はある。


 ゴブリンと同様に雄しか産まれてこず、繁殖の際は他種族の女性を利用することから、女性には非常に嫌われている。


 肉は普通の豚肉と同じ味がする為、食用としては適している。


 「それで、俺が料理している間に何が起きたんだ?」


 「そ、それはね……」


 フィーナによると、煉太郎が料理を開始したしばらくした後にオークの群れがフィーナ達に襲い掛かってきたようだ。数も10匹程度で、ランクDと言う低いランクだったので煉太郎の手を借りずとも自分達だけでも何とかなると思ったようだ。


案の定、オーク達はフィーナ達の実力に歯が立たず、全滅することになった。


 ゴチンッ! ゴチンッ! ペシッ!


 「ひうっ!?」


 「きゃっ!?」


 「クルッ!?」


 フィーナとセレンには拳骨、クルにはデコピンを見舞う煉太郎。


「うぅ〜……」


「痛いです……」


「クルル〜……」


あまりの痛さに思わず涙目になるフィーナ達。


 「何かあったら直ぐに呼べと言った筈だぞ? ……もしものことがあったらどうするつもりだったんだ?」


 怒りながらもどこか心配そうな表情を浮かべる煉太郎。


 煉太郎がここまで言うのは、彼が知らない間にフィーナ達の身に何かあれば、一生後悔することになるからだ。


自分が傷つくのは構わないと思っているが、仲間が傷つくのは嫌。錬太郎はそういう性格なのだ。


 「ごめんなさい……」


 「思慮が足りませんでした……」


 「クルル……」


 煉太郎の気持ちを察したのか、素直に謝罪するフィーナ達。


 反省するフィーナ達を見て、錬太郎はオークの死体を異空間に収納する。


 「次からは気を付けろよ。さあ、昼食にしよう。今日の夕方までには街に着きたいからな」


 「うん!」


 「はい!」


 「クルル!」


サンドイッチとアフタヌーンティーを机に置いて、食べ始める。


 「このサンドイッチ、美味しい!」


 「このマヨネーズと言う調味料、まろやかでこってりしてて不思議な味ですね」


 「クルルルル!」


 皆、美味しそうにサンドイッチを食べる。特にセレンはマヨネーズを気に入ったようだ。


 フィーナ達の感想に満足した煉太郎もサンドイッチに手を伸ばし、食べ始める。


 タマゴサンドは卵の甘味とコク、マヨネーズのまろやかさが合わさり、しっとりとした絶妙な味を引き出している。


 ハムサンドはシャキシャキしたレタスの歯応えに加え、ハムとチーズの旨味とまろやかさが合わさり、見事な味を引き出す。


 アフタヌーンティーも色鮮やかかつ、風味と味も良く、サンドイッチに非常に合ったものだった。


 昼食を取った煉太郎達は暫く休息を取り、街に向けて魔動ジープを走らせるのだった。

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