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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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人間族への憎しみ

 かつてのローランはエルフの中でも正義感が強く、仲間思いの性格だった。


 誰よりも己を鍛え、誰よりも知識を高め、誰よりも森や仲間の為にその身を犠牲にして来た。


 そんな彼には自分には勿体ない程の美しく健気な妻と可愛らしい娘がいた。ローランは家族3人で誰もが羨む程の幸せな生活を過ごしていた。


 しかし、そんな彼の幸せは長くは続かなかった。


 20年前に起きた奴隷狩り。それによってローランの妻と娘は人間族の盗賊に拐われてしまうことになる。


 ローランは拐われた妻と娘を助けるべく人間族の街へと赴く。エルフ族だと言うことを隠しながら、なるべく目立たないように妻と娘に関する情報を調べあげた。


 そして遂に、妻と娘を購入した貴族が判明したローランは直ぐ様行動に移る。


 (やっと妻と娘に会える! ようやく人間族から助け出せる! そして再び家族3人で幸せな生活を過ごせるんだ!)


 唯それだけを思ってローランは貴族の豪邸へと赴く。


 だが、時は既に遅かった……。


 ローランが貴族の豪邸に辿り着くと、扉の前にはまるで壊れた玩具のように捨てられた妻と娘の無惨な亡骸がそこにあった。


 ローランの妻と娘は貴族達の愛玩奴隷として扱われ、飽きられたので処分されたのだ。


 愛しの妻と娘の死に、ローランの思考が次第に黒く染まっていく。憎悪と復讐だけの感情が彼の純粋だった心を見事に壊していく。


 そして――


 (私の妻と娘を奪い、殺した人間族が憎い……! 殺してやる……! 人間族は全て殺す……! 皆殺しにしてやる……!)


 この瞬間、ローランは人間族への復讐だけを考える復讐者へと変貌するのだった。


 ローランが人間族への復讐を誓った日から1年後。


 当時守り人のリーダーだったレイモンが人間族の女性――サーリエと添い遂げると言い出し、里から出て行くという出来事が起きた。


 直ぐにレイモンとサーリエの間には子供が出来、3人は幸せに過ごしていた。


 ローランにとっては、その光景が非常に腹立たしい光景だった。それはかつての自分の家族を思い出させるからだ。


 (どうして自分の家族を殺した人間族とそんなに楽しげに出来る? 人間族は我々エルフ族の敵である筈なのだぞ……。奴は裏切り者だ。人間族の女も、あの忌み子も同罪だ! 殺すべき存在なのだ……!)


 ローランの人間族に対する憎悪と怒りはレイモンとセレンにも向けられる。


 更に憎悪と怒りの矛先は同族のエルフ族達にも向けられることになる。


 時間が経過すればするほどエルフ族が人間族に対する憎しみが薄れていったからだ。それは大切な存在を失ったのがローランだけだったからだ。


 (どいつもこいつも許さない! 全員、殺してやる!)


 ローランにとって全てが敵となった瞬間だった。


 ローランは普段は過去を乗り越えたように振る舞っていたが、秘密裏に復讐するべく動き始めた。


 妻と娘を失ってから10年後、ローランは遂に見つけることになる。創世樹の内部に封印されている邪神の遺産のことを。そしてその封印の解除方法も。


 邪神の遺産の解除方法はエルフ族を触媒にするものだった。


 エルフの里にいる住民の誰かを拉致すると言う方法も考えたが、突然行方不明者が出ると流石に怪しまれると思ったのか、ローランは1人の人物を利用しようと企てる。


 レイモンだ。


 元々、人間族の女性と添い遂げるようなレイモンも抹殺対象だったので好都合と考えたローランはまず最初に彼の大切な存在を奪うことにした。


 それがサリーエだった。


 ローランはサリーエが1人になるのを見計らって殺害、その後はモンスターに襲われたように仕向けて擬装する。


 そしてサリーエの死を利用してレイモンを操り、見事邪神の遺産であるマンドラゴラを復活させることに成功する。


 封印が解かれたのを感じて創世樹の妖精であるニンフが駆け付けたが、マンドラゴラの力によって植物大蜘蛛の姿へと変えられてしまう。


 そしてローランは森のモンスターを始め、森に訪れる人間族の冒険者を捕らえてはマンドラゴラへの食糧にして、密かに植物モンスターの大群を作り上げていく。


 全ては人間族殲滅と言う復讐の為に……。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 「スバラシイ! コレガジャシンノイサンノチカラナノカ! カラダノナカカラトテツモナイチカラガミナギッテクルゾ!」


 ローランが飲み込んだ種はマンドラゴラから生み出されたもので、自身を植物モンスターへと変貌させる代わりに力を与えるものだった。


 植物モンスターへと変貌したローランは先程までとは比べものにならない程力を増していた。


 「マズハキサマカラコロシテヤル、『イミゴ』ガ!」


 ローランは瞬時にセレンの前に動き出し、振りかぶった。


 「〝風の障壁よ、我が身を守れ――ウィンドウォール〟」


 セレンは風の障壁を作り出してローランの攻撃を迎え撃つ。


 「ムダダ!」


 ローランの一撃は容易にセレンが作り出した風の障壁を砕くと、勢いを止めることが出来ずにセレンはそのまま吹き飛ばされると、身体を壁に大きく打ち付けた。


 「――うっ!?」


 セレンはズルズルと地面に倒れる。


 「セレン!? シスリカ、回復系統の光魔法でセレンの治療を、フィーナは2人を守ってくれ。俺はあいつをぶっ飛ばす」


 フィーナとシスリカに指示を出して煉太郎はローランの前に立ちはだかる。これはセレンの問題なので手を出すつもりはなかったのだが、流石にセレンの実力ではモンスター化したローランを相手にするのは無理だと煉太郎は判断したようだ。


 「ニンゲンゾク、キサマモコロシテヤル! シヌガイイ!」


 目付きを鋭くさせて煉太郎を睨むと、ローランはその丸太のように太い腕を降り下ろす。


 煉太郎はそれを片手で受け止める。


 「ほう……」


 ローランの攻撃を受け止めながら煉太郎は思わず感嘆の声を上げる。外見通り、パワーも大幅に上がっているようだ。煉太郎ではなかったら今頃潰されていただろう。


 「――チッ!?」


 止められた腕が動かないと分かると、今度はもう片方の腕で攻めるが、それも片手で受け止める煉太郎。


 「ナニ!?」


 両腕に力を込めて煉太郎を振り払おうとするが、微動だにしない。


 「あらよっと!」


 掛け声と共に煉太郎は自分よりも一回りも大きいローランを軽々と持ち上げると、そのまま地面へと叩き付ける。


 「ガッ!?」


 勢いよく地面に叩き付けられて吐血するローラン。そんなローランに煉太郎は容赦なく地面から地面へと叩き付けると、そのまま宙へと放り投げる。


 「クソガッ!?」


 何度も地面に叩き付けられて痺れを切らしたのか、ローランは口を開く。魔力が集中して黒い球体が作られ、それを煉太郎に向けて放出する。


 煉太郎は直ぐ様タスラムを取り出して黒い球体へと魔弾を発砲する。魔弾と黒い球体が衝突するが、煉太郎の魔弾の威力の方が上回っており、容易に黒い球体を貫く。


 「バカナ……!」


 驚きに表情を歪ませるローラン。そんな彼の下半身を魔弾が吹き飛ばす。


 「ギャアアアアアアアアアッ!?」


 下半身を吹き飛ばされて悲鳴を上げるローラン。下半身を失ってもなお生きているとは、なかなかの生命力があるようだ。


 「オマエハ、ナンナンダ……?」


 指をプルプル震えさせながら煉太郎に向けるローラン。


 ローランの質問に煉太郎は「一応人間族さ」とだけ呟く。


 「最後に言い残す言葉はあるか?」


 煉太郎はタスラムの銃口をローランに向ける。


 しかし、そんな危機的状況である筈なのに、ローランはニヤリと笑みを浮かべる。


 「マダ、オワランゾ!」


 ローランが叫ぶと、マンドラゴラの2本の触手が動き出す。1本目は煉太郎に襲い掛かり、2本目の触手はローランの身体に巻き付く。


 「――チッ!」


 煉太郎は襲い掛かる触手にカルンウェナンで斬り伏せてタスラムの銃口をローランに向ける。しかし、既にローランはマンドラゴラの中央にある花の近くまで運ばれていた。


 「マンドラゴラヨ、ワタシヲキュウシュウシテ、イマコソソノチカラヲシメセ!」


 そしてそのままローランは開いた中央の花の蕾に呑み込まれる。


 その異常な光景に全員が息を呑む。


 そして、次に花の蕾が開らくと、マンドラゴラと一体化したローランの姿があった。


 「……う」


 あまりにもグロテスクな光景に思わず視線を逸らすセレン。


 「サア、コンドコソキサマタチヲコロシテヤル! カクゴシロ!」

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