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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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創世樹の番人

 「あれが創世樹か……」


 「凄い、ね……」


 「クルル……」


 「はい……」


 創世樹の圧倒的な迫力に思わず煉太郎達は呆然と呟いた。


 周囲に生えている樹もかなり大きいが、創世樹はそれよりも遥かに大きい。10倍はあるだろう。頭上には青々とした葉が覆い茂っており、生命力に溢れている。


 まさに創世樹と呼ばれるに相応しい存在感だった。


 「そんな……こんなことが……」


 煉太郎達が驚きの声を発している中、1人だけ反応が違う者がいた。シスリカだ。


 シスリカは創世樹に近付き、幹へと触れるとその表情を更に暗くさせる。


 「どうしたんだ?」


 明らかに様子が可笑しいシスリカに話し掛ける煉太郎。


 「創世樹が……衰弱しています……」


 創世樹の容態が分かるのか、低い声でシスリカが呟く。


 「確かに、何だか弱々しい感じがしますね……」


 シスリカと同様に創世樹の容態が分かるセレン。エルフ族には植物の状態が分かるとは聞いていたが、本当のようだ。


 「やはり、この創世樹に何かが起きているようですね……」


 創世樹の様子にシスリカが呟くと――


 カサカサカサカサカサカサカサカサ……。


 何かが動く、生理的に不快な音が響き渡る。


 「何ですか、あれは……」


 音がする方――創世樹の枝に視線を向けてセレンが呟いた。


 そこにいたのは体長を5メートルは越える程の巨大蜘蛛だった。


 しかもただの蜘蛛ではない。その身体の全ては植物のようなもので構成されている異形な蜘蛛だ。


 恐らく植物モンスター達と同類のモンスターのようだ。


 「あの大蜘蛛、何か変な魔力で覆われていますね。今までの植物モンスターとは何かが違いますね……」


 シスリカが植物大蜘蛛を見て呟いた。目に出来ない魔力を見ることがシスリカが見えている魔力。それは今までの植物モンスター達と同じ魔力と、別の魔力が混じっていた。


 「差し詰め、この創世樹を守る番人と言ったところか……」


 カルンウェナンとタスラムを取り出す煉太郎。それに続いてフィーナ達も戦闘体勢に入る。


 「ギャアアアアア!」


 植物蜘蛛は甲高い声を上げると、お尻の部分から小さな物体が煉太郎達に目掛けて無数に噴射された。


 それはまるで卵のようなものだった。バスケットボールよりも大きいそれは、弾丸の如く煉太郎達のいる場所へと飛来する。


 「皆、避けろ!」


 煉太郎の言葉に、フィーナ達はそれを受けないように咄嗟に地面を蹴って避けた。


 すると、地面へと着地した卵のような黄緑色の物体にヒビが入っていく。中からは植物大蜘蛛と似た外見の蜘蛛が現れた。


 植物大蜘蛛よりは身体は小さいが、それでも普通の蜘蛛と比べたらかなり大きい。


 「うう……蜘蛛がこんなに……気持ち悪いよ……」


 大量の植物小蜘蛛に思わず身震いするフィーナ。元々蜘蛛などの虫が嫌いなフィーナにとっては相当な不快感を与える。


 フィーナを不快にさせたのが気に入らなかったのか、煉太郎は落ちてくる植物小蜘蛛達にタスラムの銃口を向けて、発砲する。


 「「「「「「「「「「キャアアアアアアアアッ!」」」」」」」」」」


 銃弾が命中した植物小蜘蛛達は四散した後、死体は溶けて消滅していく。


 植物小蜘蛛は思っていたより弱かった。


 問題は植物大蜘蛛の方。あれは一筋縄ではいかないようだ。


 「フィーナとクル、セレン、シスリカは小さい蜘蛛の相手を頼む。俺はあのデカブツの相手をする」


 「分かった!」


 「クルルルル!」


 「はい!」


 「分かりました」


 煉太郎の指示に了承の意を伝えると、各々は行動する。


 「〝フリージア〟」


 「クルルルル!」


 「〝風の刃よ、敵を切り刻め――エアカッター〟」


 「〝光の矢よ、敵を貫け――ホーリーアロー〟」


 「「「「「「「「「「キャアアアアアアッ!」」」」」」」」」」


 フィーナ達の攻撃に次々と倒されていく植物小蜘蛛の群れ。


 「さて、俺はあいつの相手をするか」


 植物小蜘蛛程度なら手助けは不要と判断した煉太郎は視線を枝に乗っている植物大蜘蛛へと向ける。


 「ギャアアアアア!」


 煉太郎の視線に気がついたのか、植物大蜘蛛は鳴き声を上げる。


 ペガサツブーツに魔力を込めて飛翔した煉太郎は一騎に植物大蜘蛛との距離を詰める。


 「ギャアアアアアアアアッ!」


 近寄ってくる煉太郎に植物大蜘蛛は足の1本を向ける。


 「――ッ!」


 植物大蜘蛛の行動に嫌な予感を脳裏に感じた煉太郎は1度停止し、更に上空へと飛翔する。


 案の定、煉太郎の勘は当たった。


 次の瞬間、左前足の先端からまるで蔓のような植物が放たれる。


 どうやらこの植物大蜘蛛は糸の代わりに蔓を放出するようだ。しかも腹部の先端だけでなく足の先端からも蔓を放出するとは、流石は全体が植物で構成された蜘蛛。相当厄介なモンスターのようだ。


 「だったらその足から対処してやる」


 鞭のように振り回される蔓を避けながら、煉太郎は植物大蜘蛛との距離を縮める。


 しかし――


 「ギャアアアアアアアアッ!」


 植物大蜘蛛が大きく吠えると、眼前に直径2メートル程の魔法陣が出現する。


 「何!?」


 突然の魔法陣。煉太郎が避けようとした時には既に遅く、魔法陣から大風球が放たれる。


 「ぐっ……!?」


 大風球が煉太郎に直撃する。


 不死鳥のローブのお陰でダメージは軽減されているが、元から風球の威力は強かったので、かなりのダメージを受けることになってしまう。


 「魔法が、使えるだと……?」


 痛む腹部を擦りながら呟く煉太郎。


 カサカサカサカサカサカサカサカサ……。


 1度煉太郎から距離を置こうとしたのか、植物大蜘蛛は移動を始める。


 「逃がすかよ!」


 タスラムの銃口を植物大蜘蛛に向けて引き金を引く。


 弾丸は真っ直ぐ植物大蜘蛛に放たれるが、その身体に当たる直前にガキン、と弾かれることになる。


 植物大蜘蛛の身体はうっすらとした魔力に覆われている。恐らく、それが防壁として機能しているようだ。


 「魔法が使えて、魔力を纏って防御力も高いのかよ……」


 煉太郎は小さく呟くと、カルンウェナンを仕舞って、代わりに異空間からヴェルシオンを取り出す。


 ヴェルシオンを手に、煉太郎は一気に植物大蜘蛛との距離を縮める。


 「ギャアアアアアアアアッ!」


 植物大蜘蛛は再び魔法陣を展開させて大風球は放ち、更に両前足から蔓の鞭を振るう。


 煉太郎は大風球と蔓の鞭をヴェルシオンで斬り伏せながらも距離を縮める。


 「はあっ!」


 まずは左前足をヴェルシオンで切断する。


 「ギャアアアアアアアアッ!」


 植物大蜘蛛が悲鳴を上げると、その巨体を大きく仰け反らせる。その瞬間、残っていた全ての足は斬り離される。


 「ギャアアアアアアアアアアッ!?」


 煉太郎によって全ての足を切断された植物大蜘蛛はバランスを崩し、そのまま枝から地面へと落下。物凄い音を立てて仰向けになりながら地面へと着地することになる。


 「ん、あれは?」


 仰向けになった状態の腹部には大きな目玉が付いており、ギョロギョロと動いている。


 「こう言うのは大抵目玉が弱点だと相場が決まっているんだよな」


 ゲームなどの設定に有りがちなお決まりに、煉太郎は思わず笑みを浮かべると、タスラムの銃口を植物大蜘蛛の目玉部分へと向けると、引き金を引く。


 ブシュッ!


銃弾が植物大蜘蛛の目玉を粉砕する。


 「ギャアアアアアアアアッ!!」


 植物大蜘蛛は一際高く鳴くと、暫く足をジタバタさせてそのまま動かなくなってしまう。どうやら目玉が弱点なのは当たったようだ。


 「レンタロウ、終わったよ!」


 「クルルルル!」


 「何とか、なりましたね……」


 「この程度の戦闘で息が上がるとは、ワタシももう歳ですかね……」


 どうやらフィーナ達も植物小蜘蛛達を討伐が完了したようだ。周囲には植物小蜘蛛の死体がドロドロと溶けている。


 煉太郎は地面へと着地すると、もう動くことはない植物大蜘蛛へと近づく。


 すると、植物蜘蛛の死体がドロドロと溶けて始める。他の植物モンスターと同様に跡形もなく消滅するのかと思いきや、何かが消滅することなく残った。


 「こいつは……妖精か?」


 小人のような小さな身体に、背中には蝶の羽が生えている。エルフ族と同じエメラルドグリーンの髪。


 植物大蜘蛛から出てきた妖精を見て、シスリカは信じられない、と言った様子で呟いた。


 「まさか、妖精様……!?」


 それは、創世樹を守る妖精だった。

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