里の危機
門まで行くと、およそ30人程のエルフの戦士達が集まっていた。皆それぞれ弓矢を手にして植物モンスターとの戦闘に備えている。
やはりエルフ族には弓矢が似合うなと、煉太郎は内心でそう思った。
「……うう」
「……痛い」
他にも腕を折られたり、何かで切り裂かれたような重傷を負っているエルフ達もいる。恐らく植物モンスターを偵察しに行っていた者たちだろう。回復系統の光魔法をかけられているので命に別状はないようだが、戦闘は不可能だった。
「植物モンスターが門に近づいて来ています!」
1人の戦士エルフが叫ぶと、他の者達に緊張が走る。
「オオオオオオ……」
「キュエエエエッ!」
「アアアアアア……」
前方には植物の巨人に人喰い花、そして初めて見る樹に手足を生やしたモンスターが門を目指して向かっている。その数はざっと50匹。
「皆、隊列を組みなさい!」
シスリカの指示に戦士エルフ達は隊列を組み、弓を構える。
「放ちなさい!」
合図と共に植物モンスターに向けて矢を放つ戦士エルフ達。
流石は弓の名手と言われているエルフ族。寸分たがわず植物モンスター達を射貫くいていく。
しかし――
「オオオオオオ……」
「キュエエエエエ!」
「アアアアアア……」
弓矢での攻撃程度では植物モンスター達からすればたかが知られているようで、その勢いは止まることはなく、門に目掛けて向かい続ける。
「「「「「「「「「「〝風の刃よ、敵を切り刻め――エアカッター〟!」」」」」」」」」」
エルフ戦士達が放つ風の刃が植物モンスター達を襲う。しかし、それでも極一部しか倒せず、進行を止めることは出来なかった。
「「「「「「「「「「ぎゃああああああああっ!?」」」」」」」」」」
植物モンスター達に襲われる戦士エルフ達。弓や魔法による遠距離戦は得意でも肉弾戦は不得意のようだ。次々と薙ぎ倒されていく。
「長老、このままでは……!」
「――ッ!」
必死で対策を練るシスリカ。しかし、どんなに策を講じても良い作戦が思い浮かばない。
「どうすれば……!?」
植物モンスター達が門の目前まで迫って来ている中、もう駄目だと諦めかけたその時――
ズドンッ!
爆発音と共に音速とも言える何かがシスリカの横を通りすぎると、植物の巨人の1匹に直撃し、その身体を四散させる。
シスリカを含めた戦士エルフ達は今起きた出来事が認識できずに硬直する。
植物モンスター達に向けられた視線はやがて爆発音がした方へと自然に引き寄せられていく。
そこにはタスラムの銃口を植物モンスター達に目掛けて向けている煉太郎の姿があった。
「やれやれ、見てられないな……」
ポツリと呟く煉太郎。
戦闘はエルフ達に任せて自分は見物していようと思っていたのだが、あまりにもふがいない彼らに煉太郎は痺れを切らしたようだ。
「仕方がないから俺が相手をしてやるよ」
カルンウェナンを異空間から取り出すと、植物モンスター達に目掛けて突進する煉太郎。
「……オオオオオオ」
1匹の植物の巨人がその巨腕を降り下ろすと、煉太郎はペガサツブーツに魔力を込めて飛翔して避け、空中から仕留めに掛かる。
ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!
空中から流星群の如く飛来してくる魔弾の雨に次々と植物モンスター達は蹂躙される。
「何だよあの人間……化け物かよ……」
次々と植物モンスター達蹂躙していく光景を目にして戦士エルフの1人が呟いた。自分達では相手にならなかった植物モンスターを圧倒的な強さで蹂躙していくその様は、まさに化け物と呼ぶに相応しかった。
すると――
「オオオオオオ……」
「キュエエエエッ!」
「……アアアアアアア」
煉太郎が相手では分が悪いと判断したのか、何匹かの植物モンスター達は門に目掛けて猛スピードで突き進む。相手の力量が分かるとは、この植物モンスター達は以外と賢いのかもしれない。
しかし、化け物並の実力を持つ者は煉太郎だけではなかった。
「〝フリージア〟」
門に近づく植物モンスター達の身体が一瞬にして突然氷漬けにされる。
今のはフィーナが氷の上級魔法〝フリージア〟発動させたのだ。
しかし、運良く氷漬けを免れた一匹の食人樹が魔法を発動させて無防備なフィーナへと迫る。だが、それは計算通りのことだった。
「クルルルルル!」
フィーナの肩に乗っていたクルが一際高く鳴くと、額の宝石が光を放つ。そして、宝石から業火の炎が放出されて、食人樹を燃やし尽くしてしまう。
50を越える植物モンスターを僅か3分程で片付けてしまった煉太郎達。溶けていく死体を放っておいて、エルフの里へと歩を進めるのだった。




