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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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エルフの里

 ローラン達を追って、森の奥へと進む煉太郎達。


 暫くすると、ローラン達の姿が視界に入るがそれと同時に半透明の膜のようなものが見えてきた。それはまるで人喰いの森にあったマーディンが張っていた結界に似ている。


 しかし、こちらの結界の方が遥かに魔力の質は上だった。


 「ローランさん達を結界の中に入れてはいけません!」


 セレンは叫ぶが時は既に遅く、ローラン達は結界の中へと入り、森の奥へと消えていった。


 「こいつはなかなか強力な結界だな……」


 試しに結界に触れてみる煉太郎だが、身体中に電気が走ったかのように痺れ、通り抜けることは出来なかった。


 「これは創世樹の魔力で作られた強力な結界です。原理は不明ですがエルフ族にしか通り抜けることが出来ません……」


 セレンが言うには、半分人間族の血が流れているハーフエルフでも結界の中には入ることが出来ないようだ。


 エルフの里に行くことが出来ない。それがエルフ族が『忌み子』のことを忌み嫌う理由でもあった。


 「俺には関係ねぇよ……」


 ポツリと呟くと、煉太郎は異空間からヴェルシオンを取り出す。


 「――ッ!?」


 ヴェルシオンが異空間から取り出された瞬間、尋常ではない程の禍々しい魔力を感じて息を呑むセレン。


 そんなセレンを尻目に結界に目掛けて思いっきりヴェルシオンを降り下ろした。


 ザンッ!


 降り下ろされたヴェルシオンの一撃によって、結界の一部が両断される。それにより煉太郎達が通れる程の入口が出来る。


 「結界を斬るなんて有り得ません……」


 セレンは唖然として煉太郎を見つめている。


 創世樹の結界は強力だ。普通ならこのようなことは出来る筈がない。先程の戦士エルフ達に対する威圧といい、結界を両断する芸当といい、煉太郎には驚かされるばかりのセレンだった。


 結界内に入った煉太郎達はローラン達を追いかけるべく再び走る。


 暫く進むと、目の前に樹で作られた両開きの大きな門が現れた。門を中心に樹の防壁は高さ20メートルは越えており、エルフの里と言うに相応しい威圧を感じる。


 開いている門を通り抜けると、広い空場に出た。広場には多くの容姿端麗なエルフ達がいる。10メートルはある樹が乱立しており、その樹1つずつに複数の住居が建てられている。


 「おい……」


 「嘘だろ……!?」


 「何で『忌み子』がこの里に!?」


 「それに一緒にいる奴は……人間族じゃないか!?」


 突然の来訪者に周囲のエルフ達が動揺し始める。その表情は怯えや怒りなどと言った感情が含まれている。


 本来なら結界の中に人間族は絶対に入ってこれない。


 それなのに何故、人間族とハーフエルフがエルフの里に浸入しているのか、不思議でならないようだ。


 「き、貴様達! どうしてここにいる!」


 人混みを掻き分けて、慌ててローランが現れる。その表情は動揺と怒りの両方が含まれている。


 「俺はただ落とし前を付けに来た。人を殺そうとして逃げ切れると思うなよ?」


 絶対零度とも思える冷えきった眼でローランを睨む煉太郎。


 「――ッ!?」


 煉太郎の尋常とは思えない程の殺気に思わず後退るローラン。


 しかし、ここはエルフの里。30人を越えるエルフの精鋭戦士がここにはいる。


 いくら煉太郎が強かろうと、この人数には敵わないと判断したのか、ニヤリと笑みを浮かべる。


「図に乗るなよ人間! 皆、この者達を取り囲め! 我らの里に危害を加えようとする者達を生かして帰すな!」


 ローランの指示に従い、周囲にいたエルフの戦士達は煉太郎達に目掛けて弓を構える。


 煉太郎達も武器を取り出して戦闘の準備に入る。


 と、その時――


 「こらこら、まだ若いのにそんな殺気を放つもんじゃありませんよ?」


 その声はやたらと穏やかで、高まった緊張を和らげた。


 一触即発の雰囲気とも言える中、1人の女性エルフが人混みから前に出る。


 ほっそりとした上品な老女で、年齢は六十代にも思える。装飾が付いた豪華な深緑色のローブを身に纏っていることから、エルフ族の中でもかなりの発言力を持つエルフだと伺える。手には身の丈を越える程の杖を持っている。


 「ワタシはシスリカ。このエルフの里の長老を務めている者です。人間族の若者よ、どうか武器を仕舞っては下さらないでしょうか? こちらも戦士達を下がらせますので……」


 「何を仰有るのですか長老!? この者達は大罪人の娘と我々の仇敵である人間族ですぞ! 何故我らが下がらねばならぬのですか!」


 長老――シスリカの意見に猛反発のローラン。


 「黙りなさい、ローラン。貴方には分からないのですか? あの者が持つ魔力を……」


  彼女の眼は魔力の量を見ることが出来る異能――『魔力眼』の持ち主だった。当然煉太郎が持つ魔力も見えている。


 まるでどこまでも続いている空を想像させる程の莫大な魔力。それほどの魔力を有する者がただの人間である筈がないとシスリカは考えている。だからこそ、シスリカは煉太郎とは敵対しないように穏便に済ませようとしていた。


 「これは長老としての命令です。武器を納めて下がりなさい!」


 「……分かりました」


 シスリカの命令に苦虫を噛みつぶしたように表情を歪めるも、ローランは戦士達を下がらせる。


 エルフ達が警戒を解いたので煉太郎も武器を納めることにした。


 「こんな所で立ち話もなんですから、ワタシの家でゆっくり話をしませんか?」


 シスリカの家に案内される煉太郎達。流石は長老の家と言ったところか、他の樹よりも数倍大きく成長しており、家は3倍以上はある屋敷だった。


 煉太郎達は屋敷の応接室のような場所に案内されると、執事のような若いエルフが紅茶と森から採れた果物を乾燥させたドライフルーツを用意する。


 紅茶は非常に香りが良く、ドライフルーツはとても色鮮やかだ。


 (まさか、毒なんて入ってないだろうな……)


 ローラン達の対応を見て、正直口にする気になれない煉太郎だが――


 「クルルルル!」


 クルが美味しそうに紅茶やドライフルーツを食していることから毒は盛られていないようだ。


 まずはドライフルーツを口に入れると、濃厚な甘みが一気に口に広がる。


 「おお、こいつは美味いな」


 口の中にドライフルーツの甘みが広まったところで紅茶を口に付けると、紅茶のさっぱりとした風味が濃厚な甘みを流して僅かな酸味が後味として残る。


 煉太郎達が紅茶とドライフルーツを堪能していると、シスリカが口を開く。


 「さて、まずはローランの無礼を謝罪したいと思います。誠に申し訳ありませんでした……」


 深く頭を下げるシスリカ。


  「ですが、ローランも悪気がある訳ではないのです。彼は20年前の人間族による奴隷狩りのせいで妻と子を失っているのです。そのせいか、人間族に対しては人一倍嫌悪感を抱いているのです。どうかお許しを……」


 「別にもういいさ」


 紅茶を飲みながらそう言う煉太郎。謝罪さえ貰えれば別に事を荒立てるつもりはないので許すことする。


 「シスリカ様、1つお聞きしたいことがあります。よろしいでしょうか?」


 セレンがシスリカに質問する。


 「構いませんよ」


 「では、お聞きします。私の父について何か知っていますか?」


 セレンがシスリカに尋ねたこと。それは1年前に行方不明になった父親についてだ。


 ローランはセレンの父親――レイモンのことを大罪人と呼んでいた。その意味をどうしても知りたかったのだ。もしかすると、父が行方不明になった原因が分かるかも知れないからだ。


 セレンの質問に少し考え事をするシスリカ。そして、「良いでしょう……」と小さく頷くと、真相を話す。


 「今から10年程前、貴方の父親はこの里を襲い、創世樹のある聖域に無断で立ち入りました……」


 「――ッ!?」


 シスリカの予想外の言葉にセレンは息を呑むことになった。

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