表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
73/139

エルフ少女

 背の高い草むらを掻き分けて進むと、まるで切り取られかのように森が途切れた草原に出た。


 そしてその草原にいたのは――


 「来ないで下さーーーい!」


 「キュエエエエエエエエッ!」


 エルフ少女と花のモンスターだった。


 「いやああああ!」


 叫びながら花のモンスターから逃げるエルフ少女。


 年齢は煉太郎達と同じくらいだろう。服装は緑色の生地を動きやすいようにした物で、首からビー玉サイズの水晶玉が付いたネックレスを身に付けている。細身で、手足がすらりと長く、女性にしては長い身長で170センチはあるだろう。エルフ族特有の長い耳。腰まで伸びた煌びやかエメラルドグリーンの髪をポニーテールにしている。美しい瞳はまるで宝石のエメラルドを思わせる。鼻と口は整っており、間違いなく美少女の一言に尽きる。しかも見事なプロポーションを誇り、特に注目させるのはその見事な胸だろう。エルフ少女が動くたびに激しく自己主張している。


 フィーナもなかなかの物を持っているが、エルフ少女の双丘はその上を行っている。例えるとフィーナが桃なら、エルフ少女はメロンだった。


 (フィーナよりも大きいな……)


 そう煉太郎が思っていると――


 「……」


 「――痛い!?」


 腕の皮膚をフィーナに抓られて思わず声を上げる煉太郎。


 「……」


 フィーナの瞳からはハイライトが消え、無言で煉太郎を見つめている。


 煉太郎は「コホン……」と咳払いをして、花のモンスターに視線を向ける。


 「キュエエエエエエエッ!」


 そんなエルフの少女を追いかけているのは一言で表現すれば『走る人喰い花』と言えば分かるだろう。


 濃い緑色の茎は人の腕の倍以上は太く、根本の部分は複数に枝分かれして地面を踏みしめている。茎の胴体の先にはラフレシアに似た赤い巨大な花が乗っており、その中央には無数の牙を生やした口をパックリと開けている。


 「気持ちが悪いな……」


 「うん……」


 「クルル……」


 ニタニタと笑いを浮かべながら触手を振り回してエルフ少女に追いかけている人喰い花の姿に煉太郎達は激しい生理的嫌悪を催させた。


 「はぁはぁ……もう、ダメ……」


 どうやらエルフ少女の体力が尽きてきたのか、動きが遅くなる。そんなエルフ少女の両腕を人喰い花の触手がグルグルと捉えると、そのまま思いがけない怪力で持ち上げる。


 「きゃっ!?」


 人喰い花によって宙吊りにされるエルフ少女。触手を振り払おうとするが、人喰い花の方が圧倒的に力が強いのでそれも出来なかった。


 人喰い花はニヤリと笑うと、巨大な口を開く。どうやら人喰い花はエルフ少女を食べようとしているようだ。


 「――チッ!」


 流石に危ないと思った煉太郎はエルフ少女を助けるべく人喰い花に駆け寄る。


 懐からタスラムを抜き、銃口を人喰い花に向ける。狙いはエルフ少女を捉えている触手。狙いを定めて引き金を引く。


 ドパンッ! ドパンッ!


 銃弾2発が人喰い花の触手を貫いた。


 「キュエエエエエエエエッ!?」


 人喰い花は触手を撃ち抜かれて断末魔の声を上げると、エルフ少女を放り投げるかのように空中へと手放す。


 煉太郎はペガサツブーツに魔力を込めてそのまま飛翔すると、エルフ少女を抱える。


 「あ、貴方はいったい……?」


 「説明は後だ。まずはあのモンスターを仕留めるのが先だ……」


 煉太郎はエルフ少女を抱えたまま銃口を再度人喰い花に向ける。


「キュエエエエエエエエッ!」


 人喰い花が叫ぶと、触手を煉太郎に向けて伸ばすが、それを見事に煉太郎は回避する。


 「キュエエエエエエエエッ!」


 人喰い花が「焦れったい」と言うかのように叫ぶと、大口を開いて煉太郎が飛翔している場所へと跳躍する。


 「そんなに喰いたければこれでも喰らえ!」


 タスラムに魔力を込めて引き金を引く。


 ズドンッ!


 音すら越えるスピードで魔弾が放たれ、人喰い花は避けることも出来ずに開けっ放しだった大口を貫通させられ、そのまま人喰い花は地面にへと落ちて絶命する。


 煉太郎はゆっくりと地面に着地すると、人喰い花に視線を向ける。


 シュー、と音を立てて溶けていく人喰い花。


 死体を残さないで溶けて消えるその現象は、まるで植物の巨人の時と同じだった。


 (植物の巨人と同じように消滅したな。もしかしてこの人喰い花は植物の巨人と似た存在なのだろうか? たがそれだと、このエルフを襲っていたことが気になるな……)


 植物の巨人達の出現はエルフ族の仕業だと公都ハーンスでは噂になっている。だが実際はエルフ族の少女を襲っていた。謎が増える一方だ。


 「あ、あの……そろそろ降ろして貰えませんか……」


 「ん? ああ……」


 エルフ少女の言葉に我に返った煉太郎。抱えているエルフ少女を地面に降ろす。


 「危ない所を助けて下さりありがとうございます! 私はセレンと申します!」


 頭を下げて煉太郎に礼を言うエルフ少女――セレン。


 「俺は荒神煉太郎。こっちはフィーナとクルだ」


 「よろしくね」


 「クルルルル」


 「それで、どうしてモンスターに襲われていたんだ?」


 「はい、薬草を探していたんですけど、その途中でモンスターに襲われていたんです。それにしてもこんなところに人が来るのは珍しいですね。何かお探しですか?」


 「ああ、実はだな……」


 セレンが尋ねると、煉太郎は月光花を求めてこのラナファスト大森林に来たことを話す。


 「月光花なら私の家にありますよ」


 「本当か?」


 「はい。よろしければ差し上げますよ?」


 「それは助かる」


 「では、私の家に行きましょうか」


 煉太郎達はセレンの家に向かうことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ