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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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月光花を求めて

 月光花を求めて、煉太郎達は幻想的とも言える森の中を進んでいた。


 「見てレンタロウ、面白い植物が生えてるよ」


 「ああ、この森はなかなか面白い場所だな」


 森には巨大な樹木が幾つもつらなっており、人喰いの森では見かけなかった珍しい植物が至る所に生えている。


 暫く、道ではない道を進んだり、その途中で濃い霧が発生して視界を塞いでくるが、煉太郎達には何の問題もなかった。彼らには目的の物、場所の方角を示す導きの羅針盤があるので道に迷うことなく進むことが出来るのだ。


 「大丈夫か、フィーナ? 少し休むか?」


 煉太郎の後ろを歩いているフィーナに話し掛ける。


 「全然大丈夫だよ! この指輪のお陰だね!」


 フィーナは指に嵌めている指輪を見つめながら言う。


 普段なら少し運動しただけで直ぐに疲れてへとへとになるフィーナだが、今回は煉太郎に付いてきている。


 どうやら魔法屋で購入した体力を向上させるマジックアイテムの指輪の効果が出ているようだ。


 (今回はフィーナを負ぶさる必要はなさそうだな)


 別にフィーナを背負うことが嫌と言うわけではない。だがフィーナを背負いながら戦闘になればそれだけ煉太郎に隙が生じる。だからフィーナの体力が向上したことは大変喜ばしいことだった。


 そんな風に順調に森を進んでいると――


 「クルルルル!?」


 クルが耳を逆立てて鳴き始めるクル。どうやらモンスターの気配を感じたようだ。


 「モンスターか。気を付けろよフィーナ」


 「うん!」


 煉太郎はタスラムとカルンウェナンを取り出して構え、フィーナもいつでも魔法が発動出来るように準備に入っている。


 そして、煉太郎達の前に現れたのは――


 「コケエエエエエエエッ!」


 鶏の身体に尻尾が蛇のモンスターだった。


 全長は4メートル程で、翼を広げると横幅は8メートルは越えている。当然のようにその体格に相応しい嘴と足の鉤爪は非常に鋭い。蛇の尻尾は本体とは別の意思があるのか舌をチロチロと動かして単独で動いている。


 「こいつはコカトリスか……」


 『コカトリス』


 ランクCの鶏型モンスター。


 本体の鶏と尻尾の蛇を併せ持つ。


 非常に好戦的な性格で本体の鶏は鋭い嘴と足の鉤爪で攻撃し、尻尾の蛇は相手を石化させるブレスを吐いて攻撃して、獲物を丸呑みにする。


 鶏の身体の肉は非常に美味で、蛇の皮は衣服や装飾品に使われる為高値で取引される。


 「コケエエエエエエエエッ!」


 コカトリスは煉太郎を踏み潰そうと、思いきり飛び込んでくる。


 煉太郎はさっと避けてコカトリスの背後に回るり込む。


 「シャアアアアアッ!」


 コカトリスの尻尾の蛇は煉太郎を睨んで威嚇すると、彼に目掛けて石化ブレスを吐く。


 煉太郎は横に跳んで石化ブレスを避けると、石化ブレスは樹木に直撃して、見る見る石へと変化する。


 流石に煉太郎といえどもあの石化ブレスを受ければただでは済まないだろう。


 「まずは蛇の方からだな」


 最初に煉太郎は一番厄介な尻尾の蛇に狙いを定めることにした。


 煉太郎は一気に、尻尾の蛇に近づくとそのまま首根っこを押さえる。


 「シャアアアアア!」


 首根っこを押さえられた尻尾の蛇は暴れるが、煉太郎の常人では為し得ない膂力によって振り払うことが出来ない。


 「はあっ!」


 カルンウェナンの刃が一閃。蛇の頭はスッパリと斬り落とされた。


 「コケエエエエエエエエッ!」


 蛇の頭部を失ったコカトリスは怒り狂い、血走った目で睨むと、その鋭い嘴を煉太郎達に目掛けて降り下ろす。


 「〝エアスラッシュ〟」


 コカトリスの嘴が煉太郎に直撃するよりも先にフィーナが放った風の刃によって鶏の首は切断されてしまい、地面に転がることになる。


 しかし、それでもコカトリスの残った身体は激しく羽ばたき、血を周囲に撒き散らしながら暴れ続ける。


 煉太郎達はさっとコカトリスから離れ、息絶えるのを待った。


 そして動きを止めたコカトリスはそのまま倒れ、二度と動くことはなかった。


 「コカトリス討伐完了だな」


 タスラムとカルンウェナンを仕舞い、コカトリスの死体に近づく煉太郎。死体を異空間に収納した後、月光花を探し始めるのだった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 コカトリスを討伐して更に1時間ほど歩いたところで、煉太郎達は森を横断するかのようにゆっくりと流れる川に辿り着いた。


 「レンタロウ、少し休もうよ……」


 いくらマジックアイテムで体力を向上させているとは言え、流石にフィーナも疲れているようなので煉太郎達は川岸の岩に腰掛けて一休み入れることにした。


 「ほら、これでも飲みな」


 煉太郎は公都の露店で購入したフウラの実で作られた飲料水の入ったコップを異空間から取り出すと、フィーナに渡す。


 「ありがとう、レンタロウ」


 余程喉が乾いていたのか、コップを受け取ったフィーナは飲料水を飲み干す。


 煉太郎もフィーナに続いて飲料水を飲む。フウラの実の爽やかな酸味が乾いた喉を潤す。


 「クルルルル!」


 川で楽しそうに遊んでいるクル。


 そんなクルを見て、飲料水を飲み終えたフィーナは「私も!」と言って靴を脱ぐと、雪のように白くて美しい素足を川に付けて楽しみ始めた。


 「……」


 パシャパシャと川の水を弄ぶフィーナの姿に思わず見惚れる煉太郎。


 その視線に気がついたのか、フィーナはクスリと笑う。


 「レンタロウになら幾ら見られても構わないよ?」


 小悪魔っぽく、だけど真剣な表情で煉太郎を見つめるフィーナ。


 「……フィーナには敵わないな」


 照れ臭そうに紅潮させた頬を掻く煉太郎。


 そんな桃色空間で見つめ合う煉太郎とフィーナ。


 そんな時だった。


 「きゃあああああああ!」


 突然誰かの悲鳴が森に響き渡る。


 「! 人の声だよ、レンタロウ!」


 「ああ、行くぞ」


 煉太郎達は声のする方に駆け出すのだった。

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