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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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森の異変

 ラナファスト大森林。


 エルバナ公国の公都ハーンスから北東側に広がる深き森は、創世樹の森とも呼ばれていた。


 古の時代から生えている創世樹を中心に広大な森と美しい湖を抱えた、エルフ族が統治する領域。


 人智を越える、延々と生き続ける美しい自然が、そこに在った。


 「あれがラナファスト大森林か。想像していたよりも、随分と大きいね」


 感嘆な声を漏らすフィーナ。


 まだ遠くにも関わらず、森の圧倒的な迫力を持つ景色にフィーナと同様に煉太郎も目を奪われていた。


 マーディンの研究施設があった人喰いの森。それの2倍――否、3倍、4倍は雄大だった。


 それに人喰いの森に比べて圧倒的に多い生き物の気配。


 そして――


 (何なんだろうな、この魔力は……)


 森から発せられる異質な魔力。それを煉太郎は感じていた。まるで背筋が寒くなるような不気味なもの――不快に思うような何かを感じるのだ。


 (ラナファスト大森林に異変でも起きていると言うのか?)


 そんなことを煉太郎は考えていると――


 「クルルルルッ!」


 「どうしたんだ、クル?」


 突然耳を逆立てて鳴き始めるクルに煉太郎は首を傾げる。


 「レンタロウ、あれ見て!」


 フィーナが指差す方に視線を向けると、森からこちらに向かって走ってきている4つの人影。戦槌を担いだ戦士、杖とローブを纏った魔法使い、身の丈はある強弓を持つ女猟兵、長剣を帯剣する女剣士の4人組冒険者達だった。


 冒険者達が装備している武器や防具はかなり高性能でかなりの腕が立つようだ。たが、よく見ると4人共怪我を負っているようだった。


 そんな4人の冒険者達が血相を変えて走っている。まるで何かから逃げるかのように……。


 そして、それは姿を現す。


 「オオオオオオ……」


 冒険者達を追いかけるのは例の植物巨人。煉太郎達が討伐した植物巨人よりも一回りも大きい。


 そして冒険者達が煉太郎達の前を通り抜けようとしたところで戦闘を走っていた戦士が煉太郎達の存在に気が付き、大声を上げる。


 「お前達、早く逃げるんだ! あのモンスターは危険だ!」


 その言葉と同時に、煉太郎は懐からタスラムを取り出す。そして魔力を流し込みながら銃口を植物の巨人に向けと、引き金を引いた。


 ズトン!


 爆発音と共に共に魔力を纏った銃弾が逃げる冒険者達の横を通り過ぎ、そのまま植物の巨人の上半身を吹き飛ばす。


 「「「「……え?」」」」


 呆けた声を漏らす冒険者達。一瞬、何が起きたのか理解できないでいたが、上半身を失って倒れた植物の巨人を目の当たりにしてようやく状況を理解する。


 「何だよこれ……」


「あの植物の巨人を一撃で倒すなんて……」


 「……凄い!」


 「……ああ」


 身体が溶けて消滅する植物の巨人を見つめながら呟く冒険者達。


 「大丈夫か?」


 未だに口をパクパクさせながら呆けている冒険者達に煉太郎は声をかける。


 「あ、ああ……。助けてくれてありがとう。お陰で助かったよ」


 戦士がそう言って深く頭を下げる。どうやら彼がこのメンバーのリーダーのようだ。


 「ところで君達は何処に向かうんだ? 言っておくけどラナファスト大森林は危険だから行かない方が身のためだぜ」


 「そうなの? どうして?」


 フィーナの問い掛けに、魔法使いは鼻の下を伸ばす。フィーナの美貌に心を奪われたようだ。


 「お嬢さん、よろしければ僕と一緒に――イテテテテッ!?」


 「何いきなりナンパしてんのよ、このおバカ!」


 鼻の下を伸ばす魔法使いを見かねて耳を強く引っ張る女猟兵。


 「まったく呆れた男だな……」


 女剣士も女猟兵と同様に溜め息を吐きながら呆れた顔をする。


 「仲間が済まないことをしたね」


 戦士が申し訳なさそうにフィーナに謝罪する戦士。


 「別にいいよ」


 いきなり口説かれた時は正直驚いたフィーナだが、悪い印象は無さそうなので気にしないことにした。


 「それで、ラナファスト大森林が危険ってどういうことなんだ?」


 煉太郎の問い掛けに女猟兵が口を開く。


 「実はね、さっきの植物巨人がラナファスト大森林に出現するようになったのは知ってるわよね? ここ最近あの植物巨人が森中に大量発生しているのよ」


 「我々はは森の調査及び行方不明者の捜索をしていたんだけど、植物巨人と運悪く遭遇して戦闘をすることになった。結局歯が立たなくて逃げることになってしまったんだけどね」


 戦士は情けないと言った表情で頭を掻く。


 「経験上、あれはランクC――いえ、もしくはそれ以上の危険性があるかもしれないわ。あんなモンスターが森中の至る所にいると考えるだけで、身体が震えてくるわね……」


 1匹だけでも充分苦戦するモンスターだと言うのに、それが複数存在すると考えるだけでブルリと身体が震わす女猟兵。


 「あながちエルフ族の仕業だと言う噂は本当なのかも知れないな……」


 引っ張られて赤くなった耳を押さえて呟く魔法使い。彼らにも植物巨人はエルフ族と何か関係があると言う噂は耳に入っており、それを信じているようだ。


 「だから、今あの森に行くのはあまり良くないと思うわ」


 ミネルバ同様、ラナファスト大森林に近づくなと言う女剣士。先程の一戦で煉太郎の実力は理解している。


 しかし、今のラナファスト大森林にはランクC以上の植物巨人がうようよいるのだ。そんな場所にたった2人(クルを含めると2人と1匹)だけで入るのは危険だと考えているようだ。


 「それでも俺達は行く。どうしても手に入れなければならない物があの森にあるからな」


 「そうか。そこまで言うのなら無理強いはしない。無事を祈っている」


 戦士の言葉を受け、煉太郎達はラナファスト大森林に向かうのだった。

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