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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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買い物

 「ふう……」


 隠し階段を昇って無事に地上へと戻った煉太郎達は酒場を抜けて表通りに出たところで一息吐く。


 あの手のやり取りは精神的に疲れるのだ。その分、かなりの金額で品物が売れたので良しとするか、と煉太郎は思う。


 「ねえ、レンタロウ。せっかくお金をたくさん貰えたんだからだから露店を見て回ろうよ!」


 「クルルルル!」


 街中の賑わいようにテンションが上がっているフィーナとクル。街中に並ぶ露店などに興味津々のようだ。


 「そうだな。折角の街なんだから少しは楽しまないとな」


 煉太郎はも久しぶりの街だったので異論はなく、調合屋は後回しで、表通りにある店をみて回ることにした。アルバ村に戻るまでまだ3日もあるし、金ならいくらでもあるのでちょっとぐらい贅沢しても罰は当たらないだろうと思ったのだ。


 「そうと決まれば、まずはクルの奴隷用のマジックアイテムを買わないとだな。クルも首輪がキツそうだから魔法屋に行ってみるか」


 「クルル!」


 煉太郎の言葉にクルは「賛成!」と言いたげに鳴く。


 クルの付けている首輪は粗悪品でセンスの欠片もないようなデザインだ。身に付けさせるならもっと細工が施されている物をが良いだろう。


 それに今後とも行く先々の街で奴隷用のマジックアイテムをクルに付けさせないといけないのなら、もう少し良いデザインの物を付けさせたいと煉太郎は思った。


 地図を頼りに魔法屋へ向かう煉太郎達。魔法屋があるのは市場らしく、それぞれの露店が凌ぎを削っている。


 魔法屋に到着した煉太郎達は店内に入る。


 「いらっしゃいませお客様、何をお探しですか?」


 話しかけてきたのはでっぷり太った男だった。どうやらこの店の店主のようだ。


 「こいつの奴隷用マジックアイテムを買いに来たんだ」


 煉太郎の肩に乗っているクルを目にして、驚いたように目を丸くさせて驚く店主。


 「こ、このモンスターはもしかして『幸運の獣』のカーバンクルじゃないですか!? こんなところでカーバンクルにお目に掛かるなんて私はなんて運が良いのだろうか!」


 まるで神様にお祈りするかのように店主はクルに手を合わせて拝み始める。


 「クルに拝むのは良いが、接客をしてくれ」


 煉太郎の言葉に我に返った店主は、「コホン」と1つ咳払いすると、直ぐに接客モードへと切り替える。


 「奴隷用マジックアイテムですね? それならこちらになります」


 店内を案内されて煉太郎達は目的の奴隷用マジックアイテムを見せられる。


 奴隷用マジックアイテムには首輪や腕輪、ネックレスにピアスなど様々な種類がある。しかもどの品物もなか凝ったデザインだ。


 「なかなか良さそうだね。クルちゃんはどれがいい?」


 フィーナが質問すると、クルは机の上に置かれている奴隷用マジックアイテムを一通り見やる。


 「クルルルル!」


 暫く悩んだのち、クルは小さい宝石が付いたイヤリング(イヤーカフ)を指差す。どうやらこのイヤリングが気に入ったようだ。


 「それが良いのか? クルはなかなか良いセンスしているな」


 クルのファッションセンスに感嘆の声を上げる煉太郎。


 「これを貰おう。幾らだ?」


 「ありがとうございます! 黒金貨1枚になります!」


 煉太郎は黒金貨1枚を店主に渡すと、門番から貰った首輪を外して代わりにイヤリングを垂れ耳に付ける。


 「クルルルル!」


 クルは「ありがとう!」と言うかのように鳴く。


 「それと、体力を向上させるマジックアイテムは置いてるか?」


 これはフィーナの為に購入しようと煉太郎は決めていた。


 フィーナは魔法の才能はずば抜けているが、体力が極端に少ない。少し運動するだけで直ぐにへばってしまう。それならマジックアイテムで少しでも体力を向上させようと思ったのだ。


 「はいはい、有りますとも! こちらなんてどうでしょうか?」


 店主が奨めてきたのは指輪型のマジックアイテムだった。指輪の中央には蒼い宝石が埋め込まれており、デザインも良い。


 「これを身に付けついるだけで体力を1・5倍上げることができます!」


 「これならフィーナに似合いそうだな。これも貰おう」


 「はいはい、これは黒金貨1枚と金貨5枚になります!」


 黒金貨1枚と金貨5枚を支払い、指輪を受けとると、煉太郎はフィーナを呼んで指輪を渡す。


 「もしかしてこれは……結婚指輪!」


 目をクワッと見開き、喜びの声を上げるフィーナ。


 「違う違う。この指輪は体力を向上させるマジックアイテムだ。それを付けていれば体力が1・5倍も上がるんだ」


 「結婚指輪じゃないんだ……」


 それを聞いてフィーナはしょんぼりしてしまう。ちょっとショックだったようだ。


 そんなフィーナの様子を見て、煉太郎は頬をポリポリと掻いめ少し照れ臭そうにして呟いた。


 「元の世界に戻ったら、改めて買ってやるよ……」


 ある意味プロポーズとも言える煉太郎の言葉に、フィーナはまるで花が咲いたかのように微笑む。


 「うん、待ってる……!」


 頬を紅潮させて指輪を指にはめるフィーナ。


 「さてと。買う物は買ったし、次の店に行くとするか」


 「ありがとうございましたー!」


 マジックアイテムを購入した煉太郎達は魔法屋を出る。


 ちなみに、その後の魔法屋は特殊なマジックアイテムの特許を取得し店を繁盛させ、その後の余生を裕福に暮らせることになった言う。


 店主によると、カーバンクルを連れた客が来てから幸運が上がったと本人は語ったようだ。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 マジックアイテムを購入し終えた煉太郎達は次に昼食がてら露店を見て回ることにした。


 ウォークバードの串焼きにフウラの実で作られたジュース、新鮮な野菜とツナで作ったサンドイッチなど色々な料理の露店が並んでいる。


 どれも非常に美味しそうだったので、目に付く料理は片っ端からか購入して食べる。


 両手に抱えきれないほど量を購入したので休憩がてら近くの公園のベンチで座って食べることにした。


 すると、煉太郎はふと記憶の片隅にある出来事を思い出した。


 それは煉太郎がまだオルバーン王国にいた頃の記憶だった。煉太郎に対していつも優しく接してくれた櫻井愛美と迷宮都市メルリオで一緒に街の露店を見て回り、料理を食べたことの記憶。まるで今の状況に似ていた。


 (櫻井の奴、元気にしているのだろうか……)


 煉太郎は遠く離れている愛美に思いを馳せていると、不意に彼の背筋に寒気が走る。


 煉太郎はハッとして横に視線を向けると、そこには複雑な表情をしているフィーナがこちらに向けていた。


 「レンタロウ、女のことを考えてたよね?」


 「――ッ!」


 どうして分かった、と言う疑問が煉太郎の脳裏に浮かぶ。これは所謂、女の勘によるものだった。


 「前に話したクラスメイトだよ」


 「レンタロウを蔑んでいた仲間?」


 「いや、櫻井は他の連中と違って良い奴だぞ」


 「サクライって言うんだ……」


 フィーナが低い声音で呟く。どうやら煉太郎と愛美の関係が気になっているようだ。心なしか、フィーナの背後には悪鬼羅刹が見える。


 「別に櫻井とは何もないぞ? 強いて言うなら親しい知り合いだな」


 「ふ~ん……」


 ジィ~と、フィーナが煉太郎を見つめる。今の状況で何を言っても意味がないようだ。


 「お、あそこに美味そうな料理を売っている露店ががあるな……」


 これ以上愛美に関する話をするのはマズイと判断したのか、煉太郎は話を逸らすかのように立ち上がろうとすると――


 ガシッ!


 フィーナに腕を掴まれる。


 「そのサクライのことについて詳しく聞かせてもらえるよね……?」


 「……はい」


 その後煉太郎は1時間程愛美についてフィーナの問い詰めを受けるのだった。

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