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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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裏組織

 「おお」


 「うわー!」


 「クルルッ!」


 手続きを終えて正門を通ることが出来た煉太郎達は街の賑わいに思わず感嘆の声を漏らす。


 流石は公都と言うべきか、なかなかの賑わいようだった。ここには冒険者ギルドがあるからか、冒険者の数も非常に多い。


 「さて、まずはモンスター素材などの買い取りから行くとするか……」


 そう呟くと、煉太郎達はまず『月夜の酒場』と言う名称の酒場へと向かう。


 本来ならモンスターや装飾品などの換金は換金屋や冒険者ギルドで行うのが普通だろう。それなのに何故、煉太郎達は換金屋ではなく酒場へと向かうのか。


 それは今からモンスター素材などを売りに行く場所は非合法の品物を売買する裏組織だからだ。


 普通の換金屋で品物を売ろうとする場合――特に盗賊などによって盗まれた品物を売ろうとする場合は合法により一通りの検査を行う必要がある。それによって盗難品の申請をしている依頼人との確認、その交渉をする必要がある為、換金には非常に手間と時間が掛かる。


 アルバ村行きの馬車が出るのは3日後。『双頭の犬』が盗み出した品物はあまりにも多すぎて時間がかかる為、裏組織に売買することにしたのだ。


 裏組織に買い取りを頼めば即行に硬貨へと換金してくれるだろう。


 ドーンの情報によれば裏組織のアジトは『月夜の酒場』の地下にあるらしく、酒場の店主はその幹部らしい。


 「ここか……」


 『月夜の酒場』と言う看板が掲げられた酒場に到着し、店内に入る煉太郎達。


 店内は所々薄汚れており、広い広間にテーブルが雑多な感じて置かれている。入口付近には会計を済ませるためのカウンターがあり、無愛想な受付嬢がいる。店内の奥にはバーカウンターにはバーテンダーの格好をしたマスターと思われる初老の男がグラスを磨いていた。


 まだ昼間だと言うのに店内には結構な人数の冒険者や傭兵、ゴロツキなどが酒を飲んでは騒いでいる。


 酒場に入ると冒険者達は当然の用に煉太郎達に視線を向ける。


 最初はまだ若く、珍しい客だと言うことで注目を引いたに過ぎないが、ある者はフィーナの美貌に見惚れて「ほぅ……」と感心の声を上げ、ある者は非常に珍しいモンスターのカーバンクルであるクルに興味があるような視線を向けている。


 店内で揉め事は厳禁だとドーンに聞いているので煉太郎達は周囲の冒険者達の反応を無視してバーカウンターへと向かう。


 煉太郎はマスターの前に陣取る。


 すると――


 「ここはガキの来る所じゃないぞ。さっさと帰りな……」


 そんなテンプレみたいな言葉を言われて内心「キター!」と内心喜ぶ煉太郎だが、ここで帰る訳にはいかないので、舐められてたまるかと言わんばかりにスッと目を細める。


 「悪いが帰るつもりは毛頭ない」


 そう言って煉太郎は金貨2枚をバーカウンターに置く。これは裏組織で使われる一種の合言葉のようなもので、裏組織の関係者と言う意味も込められている。


 差し出された金貨を見て眉を一瞬ピクリと動かすと、マスターは煉太郎を見やる。


 そんなマスターの反応に煉太郎がニヤリと笑みを浮かべる。


 「……やれやれ」


 マスターは溜め息を吐くと、磨いていたグラスをバーカウンターに置く。


 「……付いて来い」


 煉太郎達を酒場の客としてではなく、裏組織の客として判断したマスターは煉太郎達を店の奥へと案内する。


 案内されたのは酒樽を貯蔵している倉庫だった。


 マスターは倉庫に置かれている机の引き出しにあるスイッチを押すと、床から隠し部屋への階段が出現する。


 酒場の倉庫に隠し通路。あまりにもベタ過ぎる仕掛けに再度内心喜ぶ煉太郎。


 「この地下に俺のボスがいる。粗相のないように気をつけるんだな……」


 そう言ってマスターは酒場へと戻って行った。


 煉太郎達は出現した階段で、地下へと降りる。


 暫く降りていくと、徐々に明るい場所に出る。そこは巨大な広間だった。広間のあちこちにはモンスターの死体や美しい装飾品の数々、珍しいマジックアイテム、首輪に繋がれた奴隷、そして非合法の薬草などが取引されている。


 「お前達か、俺に用があるのは?」


 煉太郎達に話しかけてくる強面の男。顔には複数の傷が有り、鍛え抜かれた肉体を隠すことなくこちらを威圧している。


 恐らくこの男が裏組織のボスなのだろう。煉太郎達のことは通信用のマジックアイテムでマスターから聞いているので直ぐに取引が出来る状況だ。


 「そうだ。買い取りを頼みたいんだが」


 煉太郎の言葉にボスは「ほほう……」と呟く。


 「わざわざここで買い取りを頼むと言うことはよほどの訳有りだな。俺はこの裏組織を仕切っているゴルザンだ。早速だがその品物を見せてみな」


 ゴルザンの指示でまずは今まで討伐してきたモンスター、次に『双頭の犬』が集めていた盗難品、そして盗賊達の装備品を異空間から出す。


 「ほう、こいつは凄いな。オーガにクイーンビー、ランクCのモンスターがこんなに。それにこっちの装飾品もなかなかな代物だな」


 煉太郎の出す品物の数と質に感心したように賞賛するゴルザン。


 「で、これ全部で幾らぐらいになる?」


 「そうだな……。白金貨10枚と言ったところだな」


 「話にならないな……」


 ゴルザンの査定価格を聞いて、煉太郎は不快そうに目を細める。


 あらかじめに煉太郎はドーンに品物をみせての見積りをさせていた。ドーンによれば白金貨30枚の値段はすると言う。


 それに対してゴルザンの査定金額は白金貨10枚。ドーンが見積もった金額の3分の1の値段だ。かなりぼったくられた金額といえるだろう。


 「おいおい、これは正当な価格なんだぜ?」


 「俺がこの品物の価値が分からないと思っているのか? 俺を舐めていると痛い目に遭うぞ?」


 「ガキが……お前こそ俺を舐めているのか? 俺の組織はこの国ではそれなりに顔が広いんだ。金以外でもお前の品物を手に入れられるんだぞ?」


 ゴルザンが手を上げると、周囲の手下達が殺気を放つ。


 「さて、どうする?」


 ゴルザンは嫌らしい笑みを浮かべながら煉太郎に問う。


 これは所謂、「俺の指示1つでいつでもお前を殺れるんだぞ」と言いたい意味だ。


 ゴルザンの態度に煉太郎は臆することなく言い返す。


 「あんたはこの品物を俺がどうやって集めたと思う? 偶然見つけたとでも思っているのか?」


 「何だと?」


 「これを見れば分かるだろう……」


 煉太郎はまだ異空間から出していない品物――オルトロスの死体を出した。


 「こ、これは……!?」


 オルトロスの死体を見るや否や、ゴルザンは顔中に汗を浮かべながら唾を呑み込んだ。


 「こいつは俺が壊滅させたとある盗賊団が手懐けていたモンスターでな。あんたならこの意味が分かるだろう?」


 「……」


 煉太郎の言う通り、ゴルザンは直ぐに『双頭の犬』のことが脳裏に浮かんだ。ランクBのモンスターであるオルトロスを飼い慣らしている盗賊団と言えば『双頭の犬』しか思い浮かばないからだ。


 ゴルザンが知る限り、『双頭の犬』はこのエルバナ公国で最も有名且つ最大規模の盗賊団だ。頭領とは昔からの知り合いでここの常連と言ってもいいだろう。


 噂では何者かによって壊滅させられたと言うことをゴルザンは部下から聞かされていた。だが、それがまさか目の前の少年達によって壊滅させられたとはゴルザンはおろか誰も想像がつかないだろう。


 「それで、俺達をどうするつもりだ?」


 「――ッ!」


 周囲の殺気よりも遥かに凌ぐ殺気が情け容赦なくゴルザンに降り注ぐ。


 (有り得ねえだろ……!?いったいどうしたらこんなガキがこれ程の殺気を……!?)


 煉太郎の殺気に当てられて、ゴルザンの表情はみるみる青褪めていく。それは周囲にいる部下達にも言えることだった。


 今更になって、ゴルザン達は気づいた。目の前にいる少年は絶対に手を出してはいけない相手だと言うことに…。


 「わ、分かった……! 白金貨30枚出す! それで勘弁してくれ!」


 「……良いだろう。それで手を打とう」


 ボスが相場の金額を言うと、煉太郎は放っていた殺気を弱める。


 ゴルザンは「はぁはぁ……」と呼吸を整える。煉太郎があるかのように殺気を放っている間はまともに呼吸が出来なかったのだ。


 「白金貨30枚だ……」


 ゴルザンは額の汗を拭うと、白金貨30枚が入った金貨袋を煉太郎に渡す。


 「確認させて貰うぞ」


 中身を確認する煉太郎。白金貨30枚丁度ある。


 「白金貨30枚、確かに確認した」


 金貨袋を異空間に収納し、換金が済んだ以上ここに長居する必要はないと判断した煉太郎はフィーナ達を連れて地上に出る階段の方に歩を進める。


 「そうだ。今の腹いせとして俺達に報復しようとするのは考えないことだ。もしそんなことをすれば……どうなるか分かっているな?」


 「分かっている。俺もこれ以上お前達とは関わりたくないからな。何があっても俺達は関与しないと誓おう」


 「確かに聞いたからな。それじゃあな」


 そう言って煉太郎達は地上へと向かうのだった。

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