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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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植物巨人

 ナイトウルフの群れとの戦闘から一夜明けて煉太郎達は再びハーンスに向けて馬車を進める。


 「……すぅ……すぅ……すぅ……」


 ゴトゴトと揺れる馬車の中で、寝息を立てて就寝している煉太郎。彼は一晩中焚き火の番をしていたので一睡も出来ていなかったのだ。


 煉太郎はあまり睡眠を必要としないが、必要最低限の睡眠は必要だ。最低でも1時間は眠る必要がある。


 まだ昼間近なのでモンスターが出現する確率は低いと煉太郎は判断したので、彼はは馬車の中で睡眠を取ることにした。フィーナの膝の上に頭を乗せながら。


 「ふふ、レンタロウの寝顔は可愛いな」


 自分の膝の上で就寝している煉太郎の寝顔を眺めながらフィーナはにこやかに微笑む。


 普段の煉太郎はフィーナよりも遅く寝て早く起きているので彼の寝顔を見られるのは大変貴重なことだった。


 眠る煉太郎の頬に触れるフィーナ。


 とても幼く思える煉太郎の寝顔。普段は少し斜に構えた、飄々とした物腰だが、深い眠りに落ちている時の彼は、無邪気と言っていいほどのあどけなさがある為、なんだが遥かに年下のようにも思えてしまう。


 フィーナの年齢が幾つかは彼女が記憶喪失の為、分からないのだが……。


 およそ2時間程でハーンスに到着するといった頃――


 「クエエエエエッ!」


 ウォークバードが甲高く鳴き声を上げて急に歩を止める。


 「きゃっ!?」


 突然馬車が止まり、大きく揺れる。


 「……ん? ……どうかしたのか?」


 馬車の異変に気づいたのか、即座に目を覚ます煉太郎。


 「分からない。突然馬車が止まって……」


 「何か起きたようだな……」


 煉太郎は身体を起こすと、御者台でウォークバードの手綱を握っている青年に話しかける。


 「どうかしたのか?」


 「レンタロウさん! あれ、あれを見てください!」


 青年の指差す方に視線を向ける。その先には森があり、そこから無数の人影がこちらの馬車に向かって近づいてくる。


 「ゴブリンだな……」


 それはゴブリンの軍勢だった。数はおよそ10匹。全員が木の棍棒や木の盾を装備している。


 「「「「「「「「「「ゲギャギャギャギャギャ!」」」」」」」」」」


 下劣な笑みを浮かべながらゴブリン達はこちらへと向かってきている。


 馬車に繋がれた状態のウォークバードでは追い付かれてしまうだろう。戦闘は避けられない。


 「眠気覚ましとしてゴブリン退治と行くか」


 煉太郎は馬車から降り、タスタムとカルンウェナンを取り出してゴブリン達を迎え撃とうとする。


 すると――


 「ゲギャギャギャギャギャ!?」


 一番先頭を走っていたリーダーと思わせる傷有りゴブリンが煉太郎の姿を見るや否や、動きを止める。僅かだが身体を小刻みに震わせている。


 どうやら傷有りゴブリンは煉太郎を恐れているようだ。その理由は煉太郎の強さを身をもって知っているからだ。


 この傷有りゴブリン、実はアルバ村を襲ったキングゴブリン(稀少種)の軍勢にいたゴブリンの生き残りだった。


 煉太郎との戦闘で奇跡的に助かった傷有りゴブリンはキングゴブリン(稀少種)と戦闘している間に逃げ、傷を癒して自分の軍勢を作っていたのだ。


 「ゲギャギャギャギャギャ!」


 煉太郎の強さを痛いほど思い知らされているので傷有りゴブリンは彼には敵わないと即座に判断し、撤退の命令を下して森に戻ろうとする。


 しかし、そこに――


 「「オオオオオ……」」


 呻き声のような声が森から聞こえる。2メートル近くはある蔓なような植物の身体をした2匹の巨人が森から現れる。


 「何だ、あのモンスターは?」


 図鑑でも見たことがない怪しげなモンスターに首を傾げる煉太郎。


 「ゲギャギャギャギャギャ!?」


 傷有りゴブリンは「邪魔だ退けろ!」と言いたげに叫ぶと、植物の巨人の1匹に持っていた棍棒を振るうが、まるで効かず、そのまま傷有りゴブリンは頭部を掴まれそのまま地面へと叩き付けられる。


 グシャ!


 生々しい音を立てて、地面にクレーターを作りながら傷有りゴブリンは頭部を粉砕された。


 「「「「「「「「「ゲギャギャギャギャギャ!?」」」」」」」」」


 残りのゴブリン達も植物巨人達に襲いかかるが、まるで歯が立たず、そのまま身体を引き裂かれ、頭部を粉砕されるなどをされて1匹残らず蹂躙されてしまった。


 「「オオオオオオ……」」


 植物の巨人2匹は煉太郎達に気づいたのか、馬車に向かって迫ってくる。


 「今度は俺達か? 敵対するなら容赦しないぞ」


 そう言って煉太郎は1匹目の植物の巨人に向けてタスラムの銃口を向けると、そのまま発砲する。


 銃弾は真っ直ぐ植物巨人に向かって発砲されるが、銃弾は貫通することなく途中で勢いを止めることとなる。


 「何だと?」


 鋼鉄なら余裕に貫通する程の威力を誇るタスラム。その銃弾でも貫けないと言うことは植物の巨人の身体は鋼鉄以上の強度を誇ることになる。


 「だったらこれならどうだ!」


 タスラムにありったけの魔力を注ぎ込み、タスラムの引き金を引く。


 ズドンッ!


 爆発音と共に魔弾が放たれれ、流石に植物の巨人でも耐えることが出来ず上半身を粉砕する。


 上半身を失った植物の巨人は2、3歩歩くとそのまま倒れて動かなくなってしまう。


 「オオオオオオ……!」


 仲間を倒されて怒ったのか、2匹目の植物の巨人が両手の指を伸ばして煉太郎を捉えようとする。


 煉太郎はカルンウェナンで伸びてくる指を切断するが、指は直ぐに再生して再び煉太郎に襲いかかる。


 「レンタロウ! 〝インパクトフレア〟」


 フィーナは炎魔法の〝インパクトフレア〟を発動。大きめの火球が植物の巨人に直撃して一瞬のうちに火達磨へと変える。


 「オオオオオオ……」


 呻き声を上げながら植物の巨人は暴れるが、そのうち身体は焼かれて灰となり、宙へと飛んでいった。


 「さてと、モンスターを回収するかな」


 煉太郎だがはまず植物の巨人が倒したゴブリン達の死体を異空間に収納する。


 次は植物巨人。1匹はフィーナの炎魔法によって消し炭になってしまったが、もう1匹は多少の原型は留めているのでなんとかなるだろう。


 (図鑑でも見たことのないモンスターだ。もしかしたら新種かもしれないな)


 そう思いながら植物の巨人を回収しようとする煉太郎だったが――


 「……何?」


 思わず声を漏らす煉太郎。


 植物巨人の死体がみるみる枯れていく。そして最終的には細かい砂のようになり崩壊してしまった。


 (一体このモンスターは何だったんだ? いや、そもそもこの植物巨人はモンスターと言える存在なのか?)


 モンスターと言うのは倒せば存在が消えることはない。死体は必ず残るものだ。


 強いて言うなら実体を持たないゴーストのような霊体系のモンスターなら討伐と同時に身体は消滅するが、先程の植物の巨人は霊体ではない。間違いなく実体は存在していた。


 (まさか、自分の存在を他者に知られないように自ら消滅したと言うのか?)


 そんな風に考え事をしていると背後から気配が近づいてくるのを感じて振り向く煉太郎。


 そこにいたのは青年だった。


 「あの、レンタロウさん。そろそろハーンスに向けて出発しましょう。ここにいればまたモンスターの襲撃に遭うかもしれませんから……」


 「ああ……。分かった……。」


 多くの謎を残しながら、煉太郎達はハーンスへと向かうのだった。

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