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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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公都へ

 廃坑で素材を集めた翌日。


 魔動ジープに関することで話があるとドーンに呼び出され、鍛冶屋に訪れる煉太郎達。


 「ハーンスに行ってきてくれ」


 「ハーンス?」


 ハーンスはエルバナ公国の中央にある公都だ。アルバ村から約1日半といった距離にある。


 「ああ、ちょっと頼みたいことがあってな」


 ドーン曰く、公都ハーンスにある調合屋に行って来てもらいたいそうだ。魔動ジープを動かす為にはどうしても必要な調合薬をミネルバと言う人物に頼んでいるようなのだが、未だにその調合薬がアルバ村に送られていないのだ。


 流石のドーンも心配しているので煉太郎達に様子を見てきてほしいそうだ。


 「丁度良い。俺も公都に行きたいと思っていたところだしな」


 煉太郎が公都ハーンスに行こうとした理由は2つ。


 1つ目は公都ハーンスに行こうする理由は旅に必要な食料と道具を購入する為だ。アルバ村でも調達は可能なのだが、ここは村だ。盛んな街と違って物資の種類が圧倒的に少ない。


 2つ目は今まで討伐してきたモンスターの素材や『双頭の犬』のアジトで手に入れた財宝を硬貨に換金する為。旅をするにも金が必要だ。それも長距離の旅となるとかなりの金額が必要となる。煉太郎が持つモンスターの素材や財宝の量となると公都で売りさばいた方が良いだろう。


 「公都か~、楽しみだね!」


 「クルルル!」


 フィーナとクルが楽しげに微笑む。ドーンによるとハーンスには露店も多いと聞ているのでそのせいだろう。


 「丁度今日はアルバ村の特産品をハーンスに届ける馬車が出る日だ。ついでに乗せてもらえ」


 「そうするよ」



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 鍛冶屋を出て村の入口に向かうと、丁度若い村人達が馬車に荷物を積んでいる最中だった。


 「クエッ」


 馬車には首が長く、大きな頭とクチバシ、長い2本の足、雲のようにフワフワした羽毛、まるでとある人気ゲームに出てくる○ョコボを思わせる鳥が繋がれていた。


 『ウォークバード』


ランクGの鳥型モンスター。


 別命『運搬鳥』。


 人懐っこくて、とても穏和な性格なので一般人でも普通に飼い慣らすことができる 。


 歩くことに特化しているので羽は退化して飛ぶことはできないが、成人を数人乗せて運搬できる程度の体躯と持久力を持つため馬以上の乗用として利用されている。


 「おや、レンタロウさんとフィーナさんじゃないですか。どうかしたんですか?」


 煉太郎達に気がついたのか、特産品を届ける役を担う青年が話しかけてくる。


 「俺たちもハーンスに行きたいんだ。ついでに乗っけてくれないか?」


 「もちろん構いませんよ。2人が一緒に来て下さるのなら心強いです」


 快く煉太郎達を乗せることを了承してくれる青年。煉太郎達が同行してくれれば盗賊やモンスターの奇襲があっても心配ないと思ったからだ。


 「それでは、行きましょうか」


 荷台に乗り、公都ハーンスに向けて出発する煉太郎達だった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 煉太郎達を乗せた馬車はゴトンゴトンと揺れながらハーンスに繋がる街道を順調に進んでいた。


 ウォークバードは馬よりも体力があるので、このペースで進めば明日の正午までにはハーンスに到着できるだろう。


 「今日はここで夜営しましょう」


 日が沈みかけているので馬車を止める青年。煉太郎達は街道の側で野営することにした。


 「あんたはテントの準備を頼む。俺が料理を作ろう」


 「レンタロウの手料理、久しぶりだね。何を作るの?」


 「今回の料理はポトフにしようと思う。栄養があって美味いぞ」


 最初は熱した鍋に手頃の大きさに切ったベーコンを入れて炒める。


 次に切った人参、玉葱、キャベツ、セロリ、そして切れ目を入れたソーセージを鍋に投入して、水を入れる。


 フツフツと煮えてきたら塩と胡椒で味を整えて20分程煮込む。


 煮込んでいる間にじゃがいもを手頃な大きさに切り、ブロッコリーを一口大にもぎ取っておく。


 20分経過したらじゃがいもを投入して10分煮込み、最後にブロッコリーを投入して5分経てばポトフが完成する。


 「できたぞ」


 「美味しそう!」


 「クルルル!」


 器にポトフを装い、皿に『辺境の夕暮れ亭』の女将が焼いてくれた焼きたてのパンを皆に配る。


 「レンタロウさんの作るポトフ、本当に美味いですね!」


 煉太郎の作ったポトフに絶賛する青年。


 スプーンでスープを掬い、口にするとベーコンやソーセージなどの肉と人参や玉葱など様々な野菜の味がスープと合わさり、絶妙な味を引き出す。


 さらに塩と胡椒の味が肉と野菜で渾然したスープにすっきりとした風味を与える。


 「そうでしょう!」


 フィーナがコクコクと自慢気に頷く。


 「クルルル!」


 クルもポトフを気に入ったようだ。本来なら玉葱が入った料理をリスに与えてはならないのだが、そこはやはり異世界なのか、平気で玉葱を美味しそうに食べているクル。モンスターには大丈夫そうだ。


 自分の作った料理を称賛されて少し照れくさくなった煉太郎は頬をポリポリと掻いて、料理を食べ進めていると――


 「クルルルッ!」


 「クェー……」


 突然クルが耳をピンと立てて警戒するように、ウォークバードは怯えたように鳴いている。どうやら2匹とも何者かの気配を感じたようだ。


 「「「「「「「「「「グゥルルルル……」」」」」」」」」」


 現れたのは全身が黒い毛で覆われた黒狼の軍勢だった。


 「ひっ……ナイトウルフじゃないか!」


 青年が慌てて周辺を見渡すと、およそ20匹の黒狼に囲まれてあるのに気づいた。


 『ナイトウルフ』


 ランクEランクの狼型モンスター。


 夜行性で就寝している人や動物を狙って行動する終生を持つ。


 個体の強さ自体は大したことはないが、群れで狩りをするので数はいつも多い。


 牙は装飾品、毛皮はコートなどの服に使用できるので売ればそれなりの金額になる。


 「「「「「「「「「「グゥルルルル……」」」」」」」」」」


 涎を滴ながら煉太郎達――の手に持つ料理を血眼にして診見つめているナイトウルフ達。どうやら煉太郎の作った料理の匂いに釣られてここまでやって来たようだ。


 「お前は馬車の中に隠れてろ」


 「は、はい!」


 煉太郎に言われて青年は馬車に隠れる。


 「「「「「「「「「「ワオォオオオオオン!」」」」」」」」」」


 ナイトウルフ達が遠吠えをして煉太郎達に向かって突撃する。


 煉太郎は懐からタスラムを取り出して銃弾を発砲する。フィーナも魔法で次々とナイトウルフを撃退していく。


 「た、助けて下さい!」


 1匹のナイトウルフが青年を襲っていた。積み荷を狙ったナイトウルフを撃退しようとしたのだが、見事に返り討ちにあってしまったようだ。


 煉太郎はタスラムの銃口を青年に襲いかかっているナイトウルフに向けて銃弾を発砲しようとすると――


 「クルルルルルルッ!」


 クルが大きく鳴き声を上げると、額の赤い宝石が輝き始め、炎を放出する。


 「キャインッ!」


 クルの放った炎は瞬時にナイトウルフの身体を燃やし、あっという間に火達磨となり、絶命させる。


 (ほう、カーバンクルにはあんな能力があるのか……。これなら戦闘にも充分に役立つな……)


 クルの以外な能力に内心驚く煉太郎。


本来、カーバンクルにはここまでの威力を持つ炎を放出することは出来ない。


それなのになぜ、クルはこのような芸当が出来たのか。それは煉太郎に原因がある。


 カーバンクルとは空気中に漂う僅かな魔力を無意識に額の宝玉に充填させて、その魔力で炎を放出して外敵から身を守る習性を持つ。だが、クルの場合は違った。


 膨大過ぎる魔力を持つ煉太郎と共に過ごすことによってクルは空気中の魔力だけではなく煉太郎から漏れだす魔力をも吸収していたのだ。しかもただの魔力ではない。神の魔力を、だ。


 それによってクルは上級魔法に匹敵する程の炎を放出することが出来ると言う訳だ。


 そんな真相を知る由もない煉太郎達だった。

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