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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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ミスリルタートル

 「現れやがったな、この廃坑の主――ミスリルタートル!」


 ドーンが目をギラつかせながら呟く。


 『ミスリルタートル』


 ランクBの亀型モンスター。


 貴重な鉱物を餌としているため主に鉱山などに生息している。


 身体中が鉱物と同化しており、甲羅はミスリルで出来ているので生半可な攻撃では一切効果がない。


 身体全体が貴重な鉱物で出来ているため高値で取引されることから、多くの冒険者が一攫千金を求めて後を絶たないが、その防御力に成す術もなく返り討ちにあい命を落とす者が多い。


 「こいつの甲羅はミスリルで出来ている。魔動ジープの装甲には持って来いの素材だ。こいつを仕留めろ!」


 ドーンの言っていた「やること」とはこのミスリルタートルを討伐することだったようだ。


 「さっさと終らせてやる」


 そうと分かると、煉太郎は早速ミスリルタートルを仕留めるべく、ヴェルシオンを異空間から取り出す。


 ミスリルタートルは確かに鉄壁とも言える程の防御力を誇る。しかし、身体全体が鉱物でできているためミスリルタートルは非常に鈍重だ。


 ヴェルシオンを持つ煉太郎の前では簡単に討伐できるモンスターであった。


 「キュアアアアアアアッ!」


 ミスリルタートルが大きく吠えた。どうやら煉太郎の放つ殺気に警戒しているのだろう。


 煉太郎もヴェルシオンを構えて戦闘態勢に入ろうとした瞬間――


 「レンタロウ、ちょっと待って」


 「ん? どうしたんだフィーナ?」


 煉太郎の疑問に答える前に煉太郎とミスリルタートルの間に割って入るフィーナ。訝しそうな煉太郎にフィーナは背を向けたまま答える。


 「私が相手する。私だってこれくらいのモンスターは倒せるよ」


 フィーナがミスリルタートルと戦うと言い出したのは、煉太郎ばかりに前線で戦わせるのが我慢できなかったからだ。


 ランクC以上のモンスターとなると煉太郎はあまりフィーナを前線に立たせようとはせず、援護ばかりをさせている。それは大切な恋人であるフィーナに対する煉太郎なりの配慮だった。


 それがどうしてもフィーナには耐えられなかった。だからフィーナは煉太郎に知って貰いたいたかったのだ。自分も煉太郎の隣で戦える、ということを。


 フィーナの言葉の意味に気づいたのか、煉太郎はそれ以上は追及するつもりはなかった。


 「無茶だけはするなよ」


 そう言って、ヴェルシオンを異空間に収納し、後ろに下がる。


 「キュアアアアアアアッ!」


 ミスリルタートルが吼えると、その大きな口を開き、鉱物の塊をフィーナに向けて放射した。鉱物の塊はまるで砲弾のような勢いでフィーナに迫る。


 「――ッ。〝ホーリーウォール〟」


 ミスリルタートルが放射した鉱物の塊を光の壁で防ぐ。あれをまともに食らえばフィーナはただでは済まないだろう。


 「お返しするよ。〝ウインドインパクト〟」


 まずは試しに風属性の中級魔法の〝ウインドインパクト〟を発動。圧縮された無数の風球がミスリルタートルがの顔面に目掛けて放たれ、直撃する。


 「キュアアアアアアアッ!!」


 岩をも砕く威力を誇る〝ウインドインパクト〟が顔面に直撃したと言うのにミスリルタートルは平然としていた。想像以上にミスリルタートルの身体は硬いようだ。


 本来ならお得意の最上級魔法で一発で討伐できるのだが、今回は甲羅をあまり傷付けないようにミスリルタートルを仕留めなくてはならないので使用することはできない。


 「だったら弱点を突くまでだよ! 〝アースウォール〟」


 土属性の中級魔法〝アースウォール〟が発動する。


 ミスリルタートルの足下に魔法陣が出現。その魔法陣か土壁が突き出し、ミスリルタートルの下顎に衝突する。


 「キュアアアアアアアッ!?」


その反動でその巨体は地震を思わせるほどの地響きを発生させながら後方にひっくり返る。


 以前、煉太郎が持っていたモンスター図鑑によるとミスリルタートルの身体は鉱物と同化していて相当硬い。だが、腹甲だけは非常に薄いと記されていた。弱点とは腹甲部分だった。


 「〝アイシクル〟」


 先端が鋭く尖った巨大な氷柱が転倒しているミスリルタートルの薄い腹甲を貫き、内蔵を損傷させる。


 「キュアアアアアアアアッ!?」


 断末魔の悲鳴を上げるミスリルタートル。


 その巨体が揺れるたびに地鳴りが鍾乳洞中に響き渡る。


 「キュアアア……」


 最期に大きく首を伸ばして、唸りながらミスリルタートルは力尽き、動かなくなった。


 「はぁはぁ……終わったよ……」


 息を荒らげるフィーナ。魔法を酷使したせいだろう。そんなふらふらのフィーナのもとに煉太郎がやって来た。


 「よく頑張ったな」


 煉太郎は感心したように目を細めると、フィーナの頭を撫でた。


 「うん、頑張ったよ……」


 疲れた表情をしながらも煉太郎の称賛にはにかむフィーナ。ついでに頭を撫でてもらえてかなり嬉しそうだ。


 そんな2人をよそに、ドーンは動かなくなったミスリルタートルをじっと見つめていた。


 (こいつのせいで俺の冒険者としての人生は滅茶苦茶にされたと言うのに、なんだろうなこの気持ちは……)


 このミスリルタートルこそ、数十年前にドーンに重傷を負わせて右足を奪ったモンスターであった。


 想像していた爽快感はない。かと言って虚しさもなかった。


 自分の右足を奪い、冒険者としての人生を奪った因縁の相手とも言うべきミスリルタートルが死体となって横たわっている状況に、どこか複雑な心境を抱えるドーン。


 「さて、目的の物は手に入れたんだ。さっさとアルバ村に帰るぞ」


 魔動ジープに使うストーンゴーレム、魔石、ミスリルタートルを手に入れた煉太郎達はアルバ村に帰還するのだった。

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