魔石の採掘
暫く廃坑を進んでいくと、次第に木などで補強されていた通路から鍾乳洞みたいな場所に出る。
天井は開いていて、陽光が差し込んで内部の幻想的に瞬いていた。
「さて、この辺りでいいか……」
ドーンは立ち止まると、持っていたツルハシの1つを煉太郎に渡す。
「よし、魔石を採掘するぞ。俺と坊主は魔石の採掘作業、嬢ちゃんとカーバンクルはモンスターが現れないか見張りを頼むぞ」
「了解」
「分かった!」
「クルルル!」
ドーンの指示に従い、煉太郎達はそれぞれの作業に取り掛かる。
「おら!」
勢いをつけて煉太郎はツルハシを降り下ろすと、ガキンという音と共に壁に亀裂が入り、メキメキと広がり崩れる。
「うお!」
思いのほか壁は脆く、崩落した瓦礫から魔石がないか確認するが、目的の魔石はなかった。
「あんまり乏しくないな……」
呟きながらツルハシを振り下ろして掘り進めていくと、淡い光を放つ小石程度の大きさの鉱石を採掘する。
「親父、これは?」
隣で採掘作業をしているドーンに採掘した鉱石を見つける尋ねる煉太郎。
「お、魔石じゃねえか。けどよ、この程度の大きさでは魔動ジープは動かせねえな……」
ドーン曰く、小石程度の魔石は主に小型のマジックアイテムにしか動かすことしか出来ず、魔動ジープを動かすには最低でもサッカーボール程の大きさが必要なようだ。
煉太郎は別の場所で採掘作業を開始するが、発掘される魔石はどれも小さい物ばかりで、到底魔動ジープを動かせる程の大きさではない。
「くそ、また小さい魔石かよ!」
どうやらドーンの方もあまり効率は良くなさそうだ。
小さい魔石ばかり採掘される現状にどうしようかと煉太郎が唸っていると――
「クルルル!」
クルが煉太郎のズボンの裾を引っ張り出す。
「ん? どうしたんだクル?」
「クルルル!」
クルは煉太郎が掘っている壁とは反対方向の壁に近づき指を指す。まるで「ここを採掘してみろ」と言っているかのように……。
「ここを採掘しろって言うのか?」
「クルルル!」
コクコクとクルは頷く。
「よし、クルを信じて掘ってみるか」
物は試しにクルが指定した場所を煉太郎はツルハシを振り下ろして、掘り進めていく。
すると――
「お、魔石発見!」
魔石を採掘する。しかも今まで採掘してきたものよりも遥かに大きい魔石が採掘された。
「おお! こいつはデカイ魔石だな! これなら魔動ジープを充分に動かせられるぜ!」
どうやら、ドーンが求めていた大きさの魔石を採掘できたようだ。
「良くやったなクル! 流石は『幸運の獣』だな。ご褒美にクッキーをやろう!」
「クルルル!」
上機嫌でクッキーを食べるクル。
「さて、魔石も手に入れたことだし、そろそろ帰るか?」
ツルハシを担いで煉太郎が言う。魔石を採掘できた以上、もうこの廃校に長居は無用だ。
「いや、まだやることがある……」
ドーンが真剣な表情で呟いた。
「やること? それはいったい……」
「クルルルッ!」
ドーンの言葉の意味を聞こうとする煉太郎だが、クルによって遮られる。
クルは耳をピンと立てて洞窟の奥に視線を向けて鋭く鳴き始める。クルの鳴き声に込められているのは警戒のように煉太郎は感じた。
「洞窟の奥からモンスターの気配がする! こっちに近づいてるよ!」
フィーナの言葉に煉太郎達は武器を手にする。
「「「「「「「「「「キョーキョーキョーキョーー!」」」」」」」」」」
洞窟の奥から現れたのは普通の蝙蝠よりは一回りも大きい蝙蝠の群れだった。耳は大きく発達しており、非常に鋭い犬歯が生えている。
『ビッグバット』
ランクDランクの蝙蝠型モンスター。
夜行性で昼間は洞窟などの暗い場所で過ごしている。
動物の血を好物にしており、鋭く発達した牙で獲物に噛みつき、生き血を吸い尽くす。
ビッグバットの群れは血眼になって真っ直ぐ厳戒態勢を敷く煉太郎達に襲い掛かる――ことはなく天井に開いた穴に目掛けて飛んでいき、逃げていった。
「何だったんだ、今のは?」
ビッグバットの群れの不可解な行動に思わず首を傾げる煉太郎。
本来なら真っ先に獲物の血を求めて襲いかかる筈のビッグバット。しかも夜行性であるビッグバットが昼間の空に飛び立つことはまずない。それがなぜ、そんな行動をさせたのか。
その答えは直ぐに判明した。
ズドン、ズドン、ズドン、ズドン……。
洞窟の奥から地鳴りに似た足音がする。それは確実に煉太郎達に近づいて来ている。
煉太郎達は武器を手にし、足音のする方へと構える。
「キュアアアアアアアアッ!」
洞窟の奥から姿を現したのは体長5メートルは越える程の巨大な亀だった。




