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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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双頭の犬

 『オルトロス』


 ランクBの犬型モンスター。


 別命『双頭の犬』。


 2つの頭部を持ち、気性は非常に荒く、俊敏な動きで獲物を翻弄し、鋭い牙と爪は鉄をも容易に引き裂く。


 「ハハハ! このオルトロスの前ではお前らなんてまるで無力だぜ!」


 高らかに笑う頭領。


 先程の宝石はオルトロスを封印していた特殊な物で、ラチスの切り札のようだ。


 「行け、オルトロス! そいつを喰い殺せ!」


 「「ガルルルルルッ!」」


 ラチスの命令に従い、オルトロスは煉太郎に目掛けて突進する。


 「――ッ」


 ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!


 タスラムの銃口をオルトロスに向け、3発の銃弾を発砲する煉太郎。


 だが、やはり犬だからか、巨体に似合わない素早い動きで銃弾を回避するオルトロス。


 「以外に素早いな……」


 銃弾を避けるオルトロスに苛立ちを感じる煉太郎。


 すると――


 「ガルルルルルッ!」


 右頭部の口から氷のブレスが吐かれる。


 「――チッ!」


 舌打ちをしながらサイドステップして避ける煉太郎だが――


 「ガルルルルルッ!」


 今度は左頭部の口から炎のブレスを吐いてくる。


 「ぐっ!?」


 流石の煉太郎も続け様の攻撃に対処できず、炎のブレスを躱すことができずに、直撃する。幸い不死鳥のローブのお陰で致命傷は避けられた。


 「氷と炎のブレスまで吐くのか……厄介だな……」


 素早い動きに氷と炎のブレス。流石はBランクのモンスターと言ったところだろうか。煉太郎が思っていた以上にオルトロスは強敵のようだ。


 オルトロスを相手に苦戦する煉太郎を見て、ラチスは笑みを浮かべる。


 「ハハハ、どうだ俺のオルトロスは! お前なんかオルトロスの餌にしてやるよ! 女は上玉だから殺さずに許しをこうまで犯してやるよ!」


 「あぁ?」


 最愛の恋人であるフィーナに対するラチスの下品な発言に敏感に反応する煉太郎。その表情は殺意に満ちていた。


 「俺のフィーナに汚い言葉を口にするな!」


 煉太郎はタスラムの銃口ををラチスに向けると、魔力を込めて引き金を引く。


 ズドンッ!


 「がっ……!?」


 殺意の込められた音速の魔弾は狙い違わずラチスの頭部を粉砕し、彼を一瞬で絶命させた。


 「「ガルルルルルッ!」」


 主人を殺されて怒り狂ったのか、氷と炎のブレスを手当たり次第に吐き続けて暴れるオルトロス。


 主人が死ねばオルトロスも消えると思ってラチスを殺したのだが、どうやら予想とは違っていたようだ。


 「ガルルルルルッ!」


 左頭部が高く吠えると、炎のブレスを煉太郎に向けて吐き出す。


 煉太郎は即座にカルンウェナンから魔剣ヴェルシオンに変更して炎のブレスを斬り裂くと、そのまま左頭部を切断する。


 「キャインッ!」


 左頭部を切断されて右頭部が唸るものの、オルトロスは倒れなかった。やはりもう1つの頭部もどうにかしなければ、完全に息の根を止めることができないようだ。


 煉太郎は右頭部に目掛けてヴェルシオンを振るうも、それよりも速くオルトロスは後方に大きく跳躍して避ける。


 ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!


 続け様に銃弾を発砲する煉太郎だが、全ての銃弾を避けるオルトロス。


 左頭部をやられたのが余程堪えたのか、オルトロスは煉太郎を窺おうとする気配である。どうやら煉太郎のスタミナ切れを待っているようだ。


 「どうにかしてあの犬の動きを止められないか……」


 煉太郎が小声で呟くと――


 「レンタロウ、私に任せて! 〝光の壁よ、敵の一撃を防ぐ盾となれ――ホーリーウォール〟」


 突如、オルトロスの眼前に光の壁が出現する。


 オルトロスは反射的に後方に跳躍するが、背後にも光の壁が出現。さらに両サイドにも光の壁が出現し、四方を塞がれて身動きが取れなくなるオルトロス。


 「ナイスだフィーナ!」


 煉太郎は一気にオルトロスに近づき、残りの右頭部を光の壁ごと斬り伏せた。


 最後の頭部を切断されたオルトロスは力尽き、横倒れに倒れた。暫くの間はピクピクと痙攣していたが、やがて動かなくなった。


 「何とか片付いたな」


 ヴェルシオンを大きく一振りして刃に付いた血を振り払う。そのままヴェルシオンを煉太郎は異空間に収納する。オルトロスの素材は稀少なのでそれも異空間に収納しておく。


 「お疲れ様、レンタロウ。それで盗賊達の死体はどうする?」


 フィーナが広場に転がっている盗賊達の死体を見て尋ねる。


 煉太郎は使えそうな装備品は剥ぎ取って回収し、死体は火葬することにした。


 使うにしろ使わないにしろ短剣や鎧などの装備品はなかなかの金になる。これだけの装備品を街に行って換金すれば旅の費用くらいにはなるだろう。


 そして盗賊の死体は一銭の金にはならないのわざわざ異空間に収納しておく必要はない。


 ちなみに火葬にするのは死体を放置したままだとゾンビやスケルトンと言ったモンスターになる可能性があるからだ。それに腐敗した死体は疫病を呼ぶ。


 己の身勝手で他人が苦しむのだけはどうしても煉太郎には我慢できないのだ。


 「フィーナは装備品を剥ぎ取ってくれ。俺は火葬の準備をする」


 「分かった」


 フィーナは煉太郎の指示に従い装備品を剥ぎ取り、煉太郎は死体を広場の中心に運び込む。


 数十分かけてようやく20人以上の盗賊の死体が広場の中心に山となって積まれる。


 「よし、倉庫に行くか」


 「あれ、死体は? 火葬にしないの?」


 「火葬はこの洞窟を出る時にする。下手に今死体を燃やすと煙が充満するからな」


 「なるほど」


 フィーナは納得した、と頷いた。


 「さて、それではお宝とご対面といくか」


 「うん」

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