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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
2章 創世樹の森
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素材集め

 朝食を食べ終え、ドーンの鍛冶屋に訪れる煉太郎達。


 「来たぞ親父」


 「おはよう、親父さん!」


 しかし、店内にドーンの姿はなかった。


 「親父さん、いないね……?」


 「作業場にでもいるんじゃないか?」


 煉太郎達は作業場に向かう。


 すると――


 「ぐごごごごごごご!」


 耳を塞ぎたくなる熊のようないびきが作業場内に響き渡る。ドーンは爆睡していた。


 「おい、親父、起きろ!」


 身体を揺さぶったり、蹴ったりして起こそうとするが、まったく起きる気配がない。


 「フィーナ、頼む」


 「分かった! 〝雷をここに――サンダー〟」


 初級魔法〝サンダー〟が発動。フィーナの手からバリバリと電撃が放たれる。


 「アババババババババ!?」


 ビクンビクンとフィーナが放つ電撃に感電するドーン。初級魔法で威力は最小限に抑えているので命に別状はなかった。


 「何しやがるんだお前達!?」


 爆睡しているところを電撃で起こされ、顔を真っ赤にさせて怒るドーン。


 「人を呼び出しておいて爆睡している親父が悪いんだよ」


 「ったく、お前らと言う奴らは……。まあいい、それでお前達を呼んだのは他でもない。お前達にはこれから魔動ジープの素材を集めて来て貰いたい。まずはこの付近の山に生息しているマウンテンワームを何匹か狩ってきて欲しいんだ」


 「マウンテンワーム?」


 「ああ。魔動ジープの部品――タイヤを造るのにどうしても必要なんだ」


 『マウンテンワーム』


 ランクDのミミズ型モンスター。


 主に山岳地帯に生息しており、体長は5メートル以上で、体液は硫化水素のような悪臭を放つ。


 視覚は完全に退化しているので地中に伝わる振動で地上にいる獲物の位置を的確に判断し、表面に生えている無数の棘を用いて地中を掘り進む。


 身体は分厚い皮膚で覆われており、高い伸縮性を併せ持つので並大抵の動物の牙や冒険者の武器などでは傷をつけることが不可能。


 ドーンによれば、マウンテンワームの分厚い皮膚が魔動ジープのタイヤに使われるゴムに非常に近い性質を持つようだ。


 少し面倒だが、魔動ジープ製作の為だから仕方がないか、と山に向かう準備をする煉太郎達。


 「そうそう、最近その山には盗賊が現れると言う噂があるから注意しとくんだぞ。まあ、ゴブリンの軍勢を相手にしたお前達なら心配はないか」


 「ああ、分かった」


 「じゃあ、行ってくるね!」


 準備を整え終えると、タイヤの素材になるワームを狩るべく、山へと向かうのだった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 ちょっとした登山気分で山を登る煉太郎達。


 現在煉太郎達がいるのは山道の中腹より少し上の7号目辺りの場所だ。


 目的のマウンテンワームは山頂付近に生息しているようなのでそろそろ遭遇する頃だろう。


 警戒しながら山道を進んでいると――


 「何か臭いな……」


 「うん……」


 異臭に気づいて煉太郎達は歩みを止める。


 硫化水素に似た腐卵臭のような匂い。それは近くにマウンテンワームがいると言うことを意味している。


 煉太郎達は匂いを頼りに山道を進む。


 すると――


 「「「「ゲギャギャギャギャッ!」」」」


 「「「「シャーッ!」」」」


 ゴブリン4匹が、巨大なミミズのモンスターに襲われていた。


 ミミズ型モンスターの体表は茶色で、目や鼻はなく、顔のほとんどは丸形の口で鮫のような歯が隙間なく生え揃っている。


 そして分泌される体液からは硫化水素のような悪臭を放っている。


 特徴からしてマウンテンワームで間違いないようだ。


 「ゲギャギャギャギャ!」


 1匹のゴブリンが持っていた石で造られたナイフでマウンテンワームに目掛けて降り下ろすが、分厚くて伸縮性のある皮膚によって容易く弾かれる。


 「シャー!」


 マウンテンワームは勢いよく上空に上がり、ゴブリンの上半身に噛み付くと、そのまま丸呑みにしてしまう。


 「「「ゲギャギャギャギャ!?」」」


 仲間を補食されて恐怖心を抱いたのか、ゴブリン達は逃走を図ろうとする。


 しかし――


 「「「シャー!」」」


 ゴブリン達の逃走も虚しく、残りのマウンテンワーム達によって補食されてしまう。


 「ちょっと気持ち悪い……」


 あまりの悲惨な光景に思わず後ずさるフィーナ。


 すると――


 「「「「シャー!」」」」


 フィーナの足音にマウンテンワーム達が反応し、上空から煉太郎達に襲い掛かる。


 「――チッ!」


 フィーナを担いでサイドステップで避ける煉太郎。


 「これでも食らいな!」


 1匹目のマウンテンワームに目掛けて魔力を込めたタスラムの銃口を向けて、引き金を引く。


 ドパンッ!


 魔力を纏った弾丸がマウンテンワームに放たれる。弾丸はマウンテンワームの頭部を意図も容易く粉砕し、悪臭のする緑色の血を噴き出し、絶命する。


 「「「シャー!」」」


 仲間を殺され激怒したのか、マウンテンワームは口から緑色の液体を煉太郎達に向けて吐き出した。


 素早くかわすと、液体は後ろの樹に直撃すると、ジューと樹皮を溶かしてしまう。どうやら緑色の液体は酸のようだ。


 直撃すれば危険だが、幸いなことにここは山で隠れる場所は多い。


 煉太郎は樹を盾にしつつ、マウンテンワームの周囲を走り回る。


 何度も酸を吐くマウンテンワームだが、その度に樹に阻まれてしまい、煉太郎達に届くことはなかった。


 やがて液体が切れたのか、マウンテンワーム達は酸を吐くのを止めた。


 「〝エアカッター〟」


 同時に風属性の中級魔法〝エアカッター〟を発動。無数の風の刃がマウンテンワーム達に目掛けて放たれ、胴体を切断する。


 胴体が地面に落ちてから暫くはウネウネと動いていたマウンテンワームだったが、やがて動かなくなった。


 「よし、討伐成功」


 「これでタイヤが作れるね」


 煉太郎達のマウンテンワーム狩りは無事に成功するのだった。

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