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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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魔人会議

魔人族の話です。

 ゴード大陸。


 かつてこの大陸には数多くの国が存在していた。


 しかし、4年前に魔人族の手によって多くの国が滅び、今では魔人族が治めている国しか存在していなかった。


 その魔人族が治める国の名は――イビアス魔人国。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 魔王都・ハーデンス。


 イビアス魔人国の首都であるそこには多くの魔人族が暮らしており、魔王が住む魔王城が存在する。


 魔王城は巨大な城壁に囲まれ、見る者を圧倒する。その城はまさに魔王が住むのに相応しかった。


 そして、今日は魔王とその幹部である《六魔将》が集まる魔人会議が行われようとしていた。


 『六魔将》とは、魔王から将の地位を与えられた六人の魔人族のことを言う。


 《六魔将』の実力は一般の魔人族に比べて遥かに高い戦闘力を誇るエリート中のエリートで、全員が異能持ち。当然魔王からの信頼も厚い。


 魔人会議が行われる一室では、長卓を囲んで『六魔将』達が顔を合わせていた。


 長卓は左右3人ずつ対面出来るように設置されており、1つの席を除いては、5つの席が埋まっている。

 

 「ブレフの奴はまだ来ないのか!? 今日は大事な会議だというのに!!」


 怒鳴り声を上げて席を立ち上がる大男。


 彼の名前はグラノス=ダーイン。


 『豪傑』と呼ばれる『六魔将』である。


 浅黒い肌。青い髪。2メートル近くはある高身長。軍服越しからでも分かるほどの筋肉質の身体。顔には今までの戦闘で出来た無数の傷痕がある。


 「ふあ~。大声出すなよ、おっさん。うるさいぞ」


 大きな欠伸をしながら、グラノスに突っかかる美少年。

 

 茶髪のドレッドヘアーに藍色の瞳。その容姿はまだ十代半ばぐらいにも見える。軍服をだらしなく着て身体中に指輪やペンダント、ピアス等、様々なアクセサリーをじゃらじゃらと身に着けている。


 ディラン=ローレン。


 若くして『六魔将』の一人に選ばれた少年で『神速』の異名を持つ。


 「何だと!? ディラン、今何と言った!?」


 ディランの言葉に怒りを露にするグラノス。額には血管が浮き出ている。


 「だから、うるさいと言ったんだよ、おっさん」


 右手の中指を上げて、そう言って舌を出すディラン。完全にグラノスを侮辱しているようだ。


 その発言と行動が更にグラノスを怒らせることになる。


 「この『六魔将』の面汚しが! ここで貴様の息の根を止めてやろうか!!」


 「誰が面汚しだって? 殺すぞおっさん?」


 二人の強烈な殺気が部屋中に広がる。


 グラノスとディラン。この2人はすこぶる仲が悪い。


 一度本気の殺し合いをしたこともあるほどで、その時は街1つが滅び去り、大きな被害を与えることになった。


 「死ね、小僧!!」


 「テメェがな!!」


 グラノスとディランが動こうとしたその時――


 「グラノス、ディラン」


 「「――ッ!」」


 2人が放つ殺気以上の威圧が降り注ぐ。


 「やめろ」


 静かに、だが聞く者すべてが思わず萎縮してしまうほど、威圧感のある声。その声がグラノスとディランに向けられて発せられた。


 口数が少ないながらも口を開いたのはこの場でグラノスとディランを静めることが出来る唯一の存在だった。


 殺気のする方に視線を向けるグラノスとディラン。


 そこには不機嫌そうに眉を寄せている男の姿があった。


 まるで血のように紅い髪と瞳。しっかりと着こなした軍服。『鮮血』と呼ばれている『六魔将』の統括者であり、魔王が最も信頼している男。


 「もうじき魔王様が来られる。黙って席に座っていろ」


 アルセリオ=マグバール。それが彼の名前だ。


 「う、うむ……」


 「わ、分かったよ……」


 アルセリオの鋭い眼光を向けられて、黙り込むグラノスとディラン。


 「あらあら、さすがにアルセリオが相手では二人もお手上げのようね」


 グラノスとディランの態度の変わりようにクスクスと笑うのは人当たりが良く、艶やかな雰囲気を纏う美女。


 彼女の名前はマリエッタ=ミッシェル。


 『魅了』の異名を持ち、『六魔将』で唯一の女性だ。


 紫の長髪に白い肌、抜群のプロポーションを持ち、彼女が少し動くたびに紫色のドレスから覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになる。彼女は異名通りイビアス魔人国随一の美貌を誇る女性である。


 「ホッホッホッ、若いとは良いのう」


 老人が口を開く。

 

 140センチも満たない小柄な体型。身に纏うのは白衣のような服。顎には白い髭を生やしている。


 ロンダーヌ=オコーネン。


 『魔学者』の異名を持つ男。


 卓越した頭脳を持ち、イビアス魔人国随一の研究者と呼ばれている。


 ロンダーヌが行っている研究は常識を超えており、他の『六魔将』からは変人と言われているが本人は褒め言葉として受け止めているようだ。


 そして、この場にはいないが『六魔将』最後の一人。


 『道化』の異名を持つブレフ。


 彼は基本的に表舞台には姿を見せることはない。


 その姿を見たのは魔王と『六魔将』のメンバーだけである。主に懲罰、諜報活動を行っている。


 そんな一幕の後、暫くすると会議室の奥の扉が開く。


 「「「「「!」」」」」


 その場にいた全員が立ち上がる。


 すると、扉から一人の男が現れる。


 まるで黄金のように輝く髪と瞳。黒と金で構成された軍服を着こなし、イビアス魔人国の紋章が施されている赤いマントを羽織っている。


 凄絶な雰囲気を漂わせながら歩く姿はまさに王者と呼ぶに相応しかった。


 そう、彼こそが魔人族の頂点に立ち、歴代最強の魔王と称される存在。


 魔王・レウスハルト=ヴァイス=デビリアスだ。


 レウスハルトは静かに会議室に入室し、テーブルの前に立ち止まる。


 そして、その場にいる全員を見渡すと、口を開いた。


 「皆、此度の招集に応じてくれたこと、感謝する」


 ただ、その一言。


 その一言を聞いた瞬間、《六魔将》達は跪まついて頭を垂れた。


 レウスハルトは《六魔将》達を席に座らせ、自身も周りが見渡せる席に腰を降ろす。


 すると、マリエッタが口を開く。


 「魔王様、今回はどういったご用件で我々を招集されたのでしょうか?」


 「うむ。それはだな……」


 レウスハルトが今回の招集について話そうとしたところで、グラノスが手を上げる。


 「どうしたグラノス?」


 「欠席者がおります」


 「ブレフのことか……奴には別の任務を与えている」


 「別の任務、ですか……?」


 「うむ。その件も含めて今回招集した理由を話そう。単刀直入に言う。シュバーン大陸のオルバーン王国が異世界の勇者を召喚したそうだ」


 「「「「「――ッ!」」」」」


 レウスハルトの言葉に皆が各々の反応を示している。異世界の勇者に興味を持つ者、不機嫌になる者、平然を装う者など様々だ。


 「それは本当なのですか?」


 マリエッタが尋ねるので頷き返すレウスハルト。


 「ブレフからの情報だ。間違いない」


 「なるほど、奴がこの場に居ないのはシュバーン大陸に送り込んでいるからですな……」


 グラノスが納得したように頷く。


 「勇者ねぇ、面白そうじゃん」


 どこか楽しげにしているディラン。どうやら異世界の勇者に興味津々のようだ。


 「異世界か……まさか実在するとは……。どうやって……調べてみたいのう……」


 顎の髭を触りながらブツブツと呟くロンダーヌ。彼にとって異世界という未知の存在は、研究者としての本能を騒がせるようだ。


 「ブレフをシュバーン大陸に送り込んだということは、いよいよ……」


 「うむ。シュバーン大陸を攻め滅ぼす」


 グラノスの言葉に、そう返すレウスハルト。


 「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 それを聞いたグラノスは雄叫びを上げる。


 「戦争だな」


 嬉しそうに笑みを浮かべるディラン。


 「フフフ、遂にですわね」


 妖艶に微笑むマリエッタ。


 「研究の成果を見せる時じゃのう」


 怪しげに笑うロンダーヌ。


 そして、レウスハルトは各々に指示を出す。


 「アルセリオ、グラノス、デュランは戦争の準備に取り掛かれ」


 「御意」


 「心得ました!」


 「了解です」


 「マリエッタは至急ブレフに伝達を送れ。調査を続けるようにと」


 「畏まりました」


 「ロンダーヌ、例の研究はどうなっている?」


 「順調でこざいます。あと半年もあれば完成するはずです」


 「そうか」


 それを聞くと、レウスハルトは立ち上がる。


 「皆、戦争の準備だ! この世界を我ら魔人族の手に!」


 「「「「「我ら魔人族の手に!」」」」」

煉太郎達の話に戻ります。

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