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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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フィーナの才能

 「振り落とされないようにしっかり掴まっていろよ、フィーナ!」


 「分かった!」


 フィーナを背負いながら全速力で森の中を逃走している煉太郎。


 何故、煉太郎が猛然と逃走しているのか。


 その理由は――


 「「「「「「「「「「ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジッ!」」」」」」」」」」


 巨大な蜂の大群に追われているからだ。


 黄色と黒の禍々しい色合いの身体、燃えるように真っ赤に染まっている複眼、ガチガチと鳴らしている鋭利な顎、耳を塞ぎたくなるような羽音を撒き散らす半透明な羽、腹の先端には緑色の液体を滴らす巨大な針。


 その外形を例えるならスズメバチに近いだろう。


 『キラービー』


 ランクDの蜂型モンスター。


 非常に好戦的な性格で、ラディアス全土に生息しており、環境に対する適応力が非常に高く、高温の地域でも活動が可能。


 大きさは個体によって異なるが、中には一メートルを超える個体も存在する。


 群れの中心に位置する女王蜂の護衛及び餌を収集する役割を持つ。


 腹の先にある巨大な針には強力な麻痺毒を分泌し、これを獲物に突き刺して毒を送り込み、動けなくなったらその強靭な顎で肉を喰い千切り、巣へと運ぶ。


 個々の力は弱いがその強力な麻痺毒と圧倒的な個体数の為、冒険者の間でも危険視されている。


 「流石に数が多すぎるだろ!?」


 キラービーの大群は優に50匹は超えている。


 「しかも女王蜂もいるとはな……。分蜂の時期だったのか……」


 キラービーの大群の後方には2メートルを超える程の体躯、冠のような形をした頭部、肥大化した腹部、腹の先端には複数の針がある巨大蜂の姿があった。


 『クイーンビー』


 ランクCの蜂型モンスター。


 別名『蜂の女王』。


 キラービーの群の女王として君臨する巨大な雌のキラービー。


 常に産卵に必要な栄養価の高い餌を優先的に与えられいる為、通常のキラービーよりも二倍以上の体躯を誇る。


 腹部の先端にある複数の針には強酸性の毒が分泌され、それを獲物に向けて噴出する。


 年間を通して巣の中で産卵を繰り返す為、滅多に姿を見せることはないが分蜂する時期には姿を見せる。


 どうやらクイーンビー率いるキラービーの大群は新たな地を目指している分蜂中の群れだったようだ。


 あまりの数の多さに戦うことを放棄して逃走という手段を選んだのだが、キラービーの大群はどこまでも煉太郎達を追いかけて来た。


 しつこいキラービーの大群に苛立ちを感じる煉太郎。


 そんな時――


 「私に任せて、レンタロウ!」


 そう言ってフィーナはスッと手を掲げた。


 「〝コキュートス〟!」


 轟々と風が鳴る。


 気温が急激に低下し、吐く息が白くなる。


 見る間に地面は霜に覆われ、ビキビキッと音を立てながら周辺の木々を――森の一部を瞬く間に凍てついていく。


 フィーナが発動したのは氷属性の最上級魔法――〝コキュートス〟。


 一瞬にして広範囲を氷結地獄にしてしまう程の威力を持つ魔法だ。


 冷気がキラービーの大群に触れると一瞬の抵抗も許されることもなく氷に閉じ込められてしまった。


 「流石はフィーナだな」


 「はぁ、はぁ……」


 最上級魔法を発動して一気に魔力を消費したせいか、肩で息をしているフィーナ。


 すると――


 「ジジジジジジジジジジジィッ!」


 頭上から鳴き声。


 上を見上げるとクイーンビーがいた。どうやらフィーナの〝コキュートス〟が発動する直前に上空に飛び、回避したそうだ。


 「ジジジジジジジジジジジィッ!」


 配下のキラービーを全て凍らされて逃亡を図るクイーンビー。


 「逃がすかよ!」


 フィーナを降ろしてペガサツブーツに魔力を込めて宙に浮く煉太郎。


 カルンウェナンを異空間から取り出して一気にクイーンビーに近づき、首を切断した。


 「ジィッ」


 首を失った胴体はそのまま地面へと落下し、少し痙攣して動かなくなった。


 「折角のランクCモンスターだ。逃がすには惜しい」


 そう言って地面に着地した煉太郎は、クイーンビーの死体を回収し、疲れて座り込んでいるフィーナに近づく。


 「ほら、これでも飲め」


 煉太郎は異空間からマナポーションが入った容器を取り出し、それをフィーナへと渡す。


 「ありがとうレンタロウ……」


 マナポーションを受け取り、蓋を開けて中に入った緑色の液体を飲みフィーナ。


 「……苦い」


 あまりの苦さに思わず吐き出してしまいそうになるフィーナだが、グッと我慢してポーションを飲んでいく。


 すると徐々に魔力が回復する。


 「私、ちゃんと役に立ててる?」


 「ああ。お陰でたすかったよ。ありがとなフィーナ」


 「ふふふ……」


 煉太郎の称賛に喜びを隠しきれずに思わず微笑むフィーナ。


 「それにしても……」


 チラリと氷付けにされたキラービーの大群に視線を向ける煉太郎。


 「最上級魔法は凄い威力だな。いや、そんな魔法を発動出来るフィーナが凄いのか……。流石はチート魔法使いだな」


 「えへへ。照れるよ」


 マーディンの実験施設でフィーナのことを色々調べた結果、フィーナにはチートと言える程魔法使いとしての才能があった。


 まずは魔法適性。


 フィーナには火、水、土、風、氷、雷、光、闇、八つ全ての属性の適性があることが判明した。


 魔法適性は一般人で1つ。


 100人に1人の確立で2つ。


 1000人に1人の確立で3つ。


 10000人に1人の確立で4つ。


 100000人に1人の確立で5つ。


 1000000人に1人の確立で6つ。


 10000000人に1人の確立で7つ。


 そして今現在、8つ全ての魔法適性を持つ者はいないとされている。魔法を極めた『魔女』の異名を持つ魔法使いでさえ7つしかないとされている。


 次は魔法の詠唱について。


 フィーナは詠唱が必要な魔法を無詠唱で発動が可能だった。詠唱なしで魔法を発動することが出来る者は多くはないが実在している。


 最後に魔力量について。


 神の魔力を得た煉太郎には及ばないが、かなりの魔力量を保有している。少なくとも勇者一行最強の勇悟にも引けを取らない程だ。


 まさにチート魔法使いとも言える。


 最初にそのことが判明した時は「何だそのチートは……」と思わず呆れた煉太郎。


 しかし、体力がない為、接近戦は苦手だった。その分強力な魔法が使えるので戦闘には大きなハンデにはならないがようだが。


 「多くの魔法が使えるのは良い戦力になる。俺には魔法適性がないから遠距離攻撃が出来ない。後衛職がいてくれると助かる」


 「私、頑張ってレンタロウの援護するよ」


 容器に残ったマナポーションを飲み干すフィーナ。


 「さてと、そろそろ行くとしよう。身体が冷えてきた」


 「そうだね。風邪引いちゃう」


 その場を後にする煉太郎とフィーナ。


 キラービーの大群を閉じ込めた氷は1週間は溶けることはなかった。

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