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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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ラディアスについて

説明回です。

 煉太郎達が異世界ラディアスに召喚されて1ヶ月が経過しようとしていた。


 現在煉太郎は王立図書館で調べ物をしていた(勇者召喚の影響でラディアスの言語を理解出来るようになっている)。


 最近は毎日のように図書館に通っており、今日は訓練が休みなのでまる一日中図書館にいる。


 机には『ラディアスの歴史』、『モンスター大図鑑』、『魔法に関する知識』などのタイトルの書物が置かれている。


 何故、そんな本を読んでいるのかというと、それはこの1ヶ月で煉太郎の役立たずぶりが明らかになったからだ。


 煉太郎の運動神経は良い方ではない。むしろ苦手と言ってもいいだろう。


 そのせいか、訓練でもクラスメイト達の足を引っ張っている始末だ。


 おまけに煉太郎には魔法適性がないということが判明した。


 魔法適性がないとどうなるのか。ラディアスにおける魔法の概念を説明しよう。


 魔法とは、この世界に満ち溢れる魔力を使って起こす現象のことを言う。


 魔法には火、水、土、風、雷、氷、光、闇の8種類の属性がある人それぞれに魔法適性というものがある。


 魔法適性は生まれながらにして決まっており、適性属性以外の魔法を使用することは出来きない。


 ごく稀に魔法適性がない者がいるらしく、煉太郎はその内の1人に入るようだ。


 つまり、煉太郎は魔法が使用出来ない。


 しかも、調べた結界煉太郎の有する魔力の量は一般人よりも少ないようだ。


 魔力を増やすには魔法をひたすら使い続けるのが1番効率の良い鍛錬方法と言われている。


 しかし、魔法適性がなく、魔法が使用出来ない煉太郎にその鍛錬方法は使えない。よってこれ以上煉太郎の魔力を上げることは不可能であった。


 本来なら戦闘用のマジックアイテムを配給されるはずなのだが、魔力が少ないため、煉太郎には普通の剣や防具しか配給されなかった。


 異能は戦闘に不向き、魔法を使用することが出来ず、魔力が一般人以下なので戦闘用のマジックアイテムもろくに使用できない。


 (完全に役立たずだよな……)


 力がないなら知識でカバーしようと考え、この世界に関する知識を溜め込んでいるのだが、何とも先行きが見えず最近は溜息を吐く回数が増えている。


 図書館の窓から見える青空をボーと眺めながらいっそ旅に出ようかなと思う煉太郎。どうやらかなり参っているようだ。


 行くならどこにしようかと、1ヶ月調べたラディアス関する知識を頭の中に展開させて物思いに耽り始めた。


 (行くならやっぱり獣人族が治めるリオネス獣人国かな。ケモノミミはオタクにとって憧れだし。エルフ族も見たいけど、エルフ族が住むエルフィス大森林があるのは別の大陸だしな……)


 この世界は3つの大陸からなっている。


 1番大きな大陸をシュバーン大陸。


 人間族や獣人族など様々な種族が暮らしている大陸。煉太郎達をラディアスに召喚したオルバーン王国もこの大陸にある。


 2番目に大きな大陸はネーデン大陸。


 人間族が大半を占めている大陸。広大な森が幾つも存在し、エルフ族が住むラナファスト大森林がある。


 最後はゴード大陸。


 元々は数多くの国があったのだが、4年前の戦争により魔人族によって大陸全土を支配されているため、詳しい詳細は不明となっているが、魔人族によって滅ぼされた国の民は農奴以下の扱いを受けていると噂されている。


 (う~ん、ネーデン大陸に行くには船で1ヶ月は掛かるし、マルテマ興国に行って奴隷を見るしかないんだろうけど……)


 この世界には奴隷が存在する。


 借金をしたから。犯罪を犯したから。自由と引き換えにしても生きていきたいから。奴隷になる理由は様々だ。


 ただし、奴隷にも手続きが必要らしく、正規の許可がない奴隷を扱うのは禁止とされている。


 マルテマ興国はシュバーン大陸の中心に位置し、そこでは様々な種類の奴隷を扱っている。


 ラディアスには人間族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、鬼人族、人魚族、妖精族、そして魔人族の八種族が存在する。


 『人間族』


 ラディアスで最も人口が多いとされる種族。


 最初に誕生した種族とも言われてあり、全ての分野において平均的で特化した能力はないが、どの種族とも子供を設けることが出来る。


 『エルフ族』


 森や山林など、自然のある場所で暮らすことを好む種族。


 男女問わず容姿端麗で非常に長い耳が特長。人間族の5倍以上の寿命を持つとされており、生まれながらにして弓術の資質を持つ。


 『ドワーフ族』


 鉱山地帯に住み、手先が器用なため鍛冶を得意とする種族。


 温厚で陽気な者が多く、好奇心旺盛でかなりの大酒飲で、低い背に樽のような体型をしているのが特徴。成人でも子供の程度の大きさにしかならない。


 『獣人族』


 耳や尻尾など獣の特徴を持つ種族。


 魔力の保有量は他の種族よりも少ないが、その分並外れた身体能力と五感を持つとされている。犬人、猫人、熊人、狐人、鳥人、獅子人など様々な種類を総称して獣人族と呼ばれている。


 『鬼人族』


 他種族の中でも力に特化しており、人間族の数倍以上の怪力を誇る戦闘種族。


 気象が荒くて体力にも長けおり、闘争心旺盛で大食らい。獣人族同様、魔力の保有量が少ない。額に生えている2本の角が特長。


 『人魚族』


 上半身は人間、下半身が魚の尾ヒレという特長を持つ種族。


 水魔法に優れており、水中を移動するスピードはどの生物よりも速いと言われている。魔力を集中させることにより、尾ヒレを人間の足に変化させる能力を持つ。


 『妖精族』


 掌に乗るほどの小さな身体、背中には空を自由に宙に舞うことが出来る蝶のような羽が生えている種族。


 永遠に近い寿命を持つとされている。数が非常に少なく、温厚かつ臆病な性格なので滅多に姿を見せない稀少種でもある。非力ではあるが魔力の保有量は魔人族に匹敵するとされている。


 『魔人族』


 他種族の中でも魔力に特化した種族。


 生まれながらにして複数の魔法適性を持っており、他種族より遥かに強力な魔法を使用することが出来る。1年の内にの一時期しか繁殖することが出来ないため、数が少ないが子供まで強力な攻撃魔法を放てる。


 アルテマ興国ならエルフ族の奴隷がいる可能性は高いが、さすがに奴隷扱いされている人を見て平静でいられる程人間出来てないので渋々諦める煉太郎。


 (だったらアルシオン神聖国だ。この世界の神話に関わる物があるって聞くし)


 アルシオン神聖国はシュバーン大陸最大の領土を持ち、セルティウス教という宗教の総本山でもある。


 セルティウス教とは救世神セルティウスを崇拝する宗教だ。主に人間族が信仰にしている。


 かつてこのラディアスには神々が存在していたようだ。


 神々は人々に知恵や魔法、様々な恩恵を与えて平和に統治していた。


 しかし、邪神と呼ばれる存在が、ラディアスを破滅に導こうとした。


 邪神の力は強大で次々と他の神々を滅ぼし、その魔手は人々にも及んだ。


 そんな時、セルティウスという神が邪神から人々を救い、自らの命と引き換えに邪神を滅ぼした。


 これにより人々はセルフィウスを救世神として崇めるようになり、セルティウス教が創立された。


 これがセルティウス教の歴史だ。


 (でもやっぱり、一番行きたいのはドラグノール竜国だな! ファンタジー世界といったらドラゴンだよな!)


 この世界にはドラゴンが存在する。そのドラゴンを使役しているのがドラグノール竜国だ。


 ドラゴンを飼育し、使役することからドラゴンを飼う国とも呼ばれている。


 他にも海に住む人魚族が治めるアクアリオン海国や工芸品で有名なドワーフ族が治めるガルアス鉱山国など、行きたい場所はたくさんある。


 (でも、今の俺ではモンスターに襲われるのがオチだよな……)


 モンスターとは魔力を得て凶暴化した動物や植物のことを言う。


 モンスターにはランクが付けられており、おおまかには次のようになっている。


 Gランク:人を襲わない戦闘能力が皆無のモンスター。主に家畜か愛玩動物として扱われている。


 Fランク:一般人の子供が倒せる程のモンスター。


 Eランク:一般人の成人が倒せるモンスター。


 Dランク:出現が命の危機に直結する危険性のあるモンスター。戦闘に心得がある者でないと討伐は不可能。


 Cランク:単体相手で村を滅ぼす危険性があるモンスター。


 Bランク:単体相手で町を滅ぼす危険性があるモンスター。


 Aランク:単体相手で都市を滅ぼす危険性があるモンスター


 Sランク:単体相手で国を滅ぼす危険性があるモンスター。


 ちなみに、一般的にランクが高いモンスターほど個体戦闘能力は高くなるが稀少性や棲息環境なども考慮されるため、本体が弱くてもランクが高くなるケースもあるとされている。


 (冒険者を雇う手もあるかな……)


 冒険者。


 この世界の職業の1つである。冒険者組合に登録すれば誰でも冒険者になれる。


 冒険者は主にモンスター退治や賞金稼ぎ、傭兵、薬草や鉱物の採取など様々な仕事を請ける。簡単に言えば何でも屋のようなものだ。


 冒険者になり、条件を満たすとギルドという組織を立ち上げる権利を貰える。『モンスター退治専門』、『女性冒険者限定』、『鍛冶専門』、『魔術師限定』等独自の思想を掲げるギルドも存在する。


 (まあ、冒険者を雇うお金なんてないけど……)


 ラディアスの金銭は石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、黒金貨、白金貨の7種類がある。


 石貨10枚で鉄金1枚。


 鉄貨10枚で銅貨1枚。


 銅貨10枚で銀貨1枚。


 銀貨10枚で金貨1枚。


 金貨10枚で黒金貨1枚。


 黒金貨10枚で白金貨1枚となっている。


 分かりやすくすると石貨1枚で1円。


 鉄貨1枚で10円。


 銅貨1枚で100円。


 銀貨1枚で1000円。


 金貨1枚で10000円。


 黒金貨1枚で100000円。


 白金貨1枚で1000000円ということになる。


 ちなみに煉太郎の所持金は銀貨3枚と銅貨5枚(3500円)だ。


 煉太郎は所持金の殆んどを図書館の利用や本の購入に費やしている。


 地球と違い、この世界の図書館は有料だった。図書館の1日の利用が銀貨2枚。本1冊の貸し出しは1週間で銀貨1枚になっている。


 ラディアスにとって本はそれほど高価な代物なのだ。


 この世界には印刷機が有るはずもなく全ての本は手書きだ。貴重な本ともなれば金貨以上の価値がある本も存在する。


 (まあ、結局地球に帰りたいなら逃げる訳には行かないんだけどな……)


 自分の考えていることは唯の現実逃避でしかないと頭を振る煉太郎。


 そんな時だった。


 「あっ! 荒神くんだ!」


 明るい声が煉太郎の耳に入る。その声がする方に振り向くと愛美とその親友である凛がいた。


 2人は煉太郎が座っている席へと向かう。


 「奇遇だね、荒神くん。何か調べ物?」


 「ああ。この世界に関することを調べていたんだ。ほら、俺って皆の足を引っ張ってるからさ、せめて知識だけでもと思ってな……」


 「あまり気にしない方が良いわよ? 荒神くんも精一杯頑張ってるんだから」


 「ありがとう東郷。それより、二人はどうしてここに?」


 煉太郎が尋ねると、凛は1冊の本を見せる。


 「気に入った本の続編が出たから借りに来たのよ」


 「私は凛ちゃんの付き添いだよ」


 凛が持っている本は『真実と嘘の愛』というタイトルの恋愛小説で、若い女性に人気のある本だった。


 (へ~、東郷も恋愛小説とか読むんだ。以外だ……)


 煉太郎が凛に対する印象は剣道一筋の少女というイメージがあったのでその違いに少し驚く。


 その様子を見て、凛は――


 「今、以外だと思ったでしょ?」


 (エスパーかよ……)


 煉太郎の考えていることは凛にはお見通しだったようだ。


 「いや、その……すまない……」


 謝る煉太郎。


 「失礼ね。私だって恋愛小説ぐらい読むわよ」


 頬を膨らまし拗ねる凛。いつものクールな感じではなく、可愛らしい態度だ。


 「凛ちゃん、恋愛小説好きだもんね。この前も――」


 「愛美! それ以上言ったら駄目よ!」


 慌てて愛美の口を塞ぐ凛。何が起きたのか知りたかったが、聞ける雰囲気ではなかった。


 「そう言えば、近いうちにダンジョンで魔物相手に実戦訓練をするらしいわよ」


 と言う凛。


 ダンジョン。


 ラディアスに数多く存在する自然発生した森や洞窟、迷宮のことを言う。中には神々が創ったとされるダンジョンもある。


 ダンジョン内は異空間に繋がっており、外見よりも広大になっている。


 珍しいモンスターや入手困難な薬草、鉱石が採れるため、多くの冒険者達がダンジョンに挑戦する。


 ダンジョンで多くの富を手に入れて死ぬまで遊んで暮らした者、ダンジョンを制覇して名声を手に入れた者達がいる。


 しかし、その逆もある。


 野望の為に己の力量以上の階層まで行きモンスターに喰われた者、警戒を怠り、トラップに掛かって命を落とす者もいる。


 生と死が隣り合わせの場所。


 それがダンジョンだ。


 「モンスターか~。私、モンスターと戦えるか不安になって来ちゃったよ」


 「櫻井なら大丈夫だよ。魔法の腕もピカイチなんだからさ」


 煉太郎の言う通り、愛美には魔法の才能があり、勇悟を除けば魔力の量は他のクラスメイトより多い。


 しかも魔法適性は水、風、雷、光の4種類も有している。訓練でも魔法をメインに鍛えている。


 「本当!? 荒神くんにそんなこと言われるなんて……私頑張るよ!」


 煉太郎に褒められて張り切る愛美。どうやら相当嬉しかったようだ。


 それから暫く雑談して、煉太郎達は解散するのだった。

次回は魔人族の話です。

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