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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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トレント戦 前編

 『トレント』


 ランクCの植物型モンスター。


 長い年月を掛けて魔力を宿した樹木がモンスター化した存在。


 凶暴な性格で動物などを捕食して栄養を摂取しようとする食虫植物のような性質を持つ。


 トレントの葉はポーションなどの素材に、枝は魔法杖の素材に使われるため、冒険者にとっては良い稼ぎの種になる美味しいモンスターとして知られている。


 「気を付けろよお前達! こいつはランクCのモンスターだ! 油断するなよ!」


 トレントはまるで「地上に戻りたければ我を倒せ!」とでも言うように勇悟達に迫った。


 「オオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 トレントが咆哮を上げて枝を振り下ろす。


 「――くっ、一撃が重いな……!」


 トレントの丸太のように太い枝による一撃を勇悟はエクスカリバーとマジックソードを交差させるようにして受け止める。


 しかし、あまりにも重い一撃に食いしばった歯の隙間から呻き声が漏れた。


 「勇悟!」


 凜が白雪を抜いて枝を斬ろうとしたその時――


 ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ……!


 突如地面から鋭い切っ先を向けて飛び出してくる槍のような複数の根が、凜の行く手を阻む。


 「邪魔よ!」


 白雪で次々と根を断ち斬りながら凜は押し切る。


 「ハァッ!」


 掛け声と共に凜は勇語を襲っていた枝を両断する。


 「助かったよ! ありがとう凜!」


 「お礼なら後よ、来るわ!」


 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 トレントは枝を振り回し、槍のような根を地面から生やすなどをして暴れ出す。


 「俺と凜は正面、加賀と遠藤は右側、中村と剛田は左側、レクター団長達は背後、櫻井と早乙女、天野、有栖川は後衛で遠距離攻撃を頼む!」


 矢継ぎ早に皆に指示を出す勇悟。レクター団長直々の指揮能力を発揮する。


 「迷いのない的確で良い指示だな。聞こえたな! 総員、勇語の指示に従うんだ!」


 「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


 レクター団長が叫ぶと、勇語の指示通りに騎士団員を連れてトレントの背後へと回りこむ。それを機に他の生徒達も一斉に動き出し、トレントを包囲する。


 「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 咆哮を上げて、再度正面にいる勇悟と凜に目掛けて枝を振るうトレント。


 「凜お姉様危ない!? 『魔力障壁バリア』!」


 早乙女が展開した障壁がトレントの一撃を防いだ。


 「ありがとう早乙女さん、助かったわ!」


 「凜お姉様のためならこれくらい当然です!」


 頬を赤く染めている早乙女に思わず苦笑いする凜。


 「「「「俺達を忘れてんじゃねぇぞ!」」」」


 そう言って加賀と遠藤、中村、剛田の4人が攻撃を仕掛ける。


 「オオオオオオオオオオオオオオ……!」


 4人それぞれの攻撃を受け、トレントの巨体が傾く。


 「私達も行くよ!」


 「ええ!」


 「はい!」


 後衛の愛美達も男子生徒達に続き、魔法の詠唱を開始する。


 「「「「〝虚空より風を起こし、無数の刃で、彼の者を切り刻め――エアスラッシュ〟!」」」」


 「オオオオオオオオオオオオオオオオ……!」


 出現した無数の風の刃がトレントの身体を切り刻むと、その巨体がドスンッ!と倒れた。


 「よし、一気に畳み掛けるぞ!」


 勇語の指示で総員がトレントに向けて一斉攻撃を開始しようとしたその時――


 すると――


 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 「「「「「「「「「「――ッ!?」」」」」」」」」」」


 突然、耳をふさぎたくなるほどの咆哮を上げるトレント。


 「!?」


 騎士団員のアレインががトレントとは違う別のモンスターの魔力が近づくのを感知した。


 「レクター団長! 別のモンスターがこちらに近づいて来ます! 恐らく、今のは仲間を呼ぶためのものだったようです!」


 「何だと!?」


 「来ます!」


 「「「「「「「「「「ロロロロロロロロロロロロロロロ!」」」」」」」」」」


 周囲の草木を押し退けるように、キノコのモンスターが十体ほど勇悟達を囲むようにして出現する。


 その姿はキノコに手足が生えており、どこか可愛げな印象を与えた。


 しかし、キノコモンスターの姿を視界に捉えたレクター団長の表情は厳しいものになる。


 「あれはマタンゴか……! 皆、あのモンスターに近づくな!」


 レクター団長が半ば叫ぶように声を掛ける。


 しかし――


 「何だよあの弱そうなキノコモンスターは? 俺が倒してやるよ!」


 「いや、俺がやるよ!」


 「馬鹿者が!! そいつに近づくんじゃない!!」


 レクター団長の注意喚起を無視して、加賀と遠藤の二人は武器を構えるとマタンゴに向かって走り出した。


 「死にやがれ!」


 加賀がマタンゴの一体に斬り掛かる。すると――


 「ロロロロロロロロロロロロロ……!」


 マタンゴは奇声を上げて、瀕死の身体を揺らし始めた。身体を震わすマタンゴの傘の部位から赤紫色の胞子が飛び散り、周辺に漂う。


 「ハハハハハッ! どうだ、俺に掛かればこんな雑魚モンスターなんて――ぎゃああああああああああああっ!!」


 マタンゴの赤紫色の胞子が加賀の身体に触れると、まるで火が点いたかのように熱くなる。


 「な、何だ……!?」


 「どうした加賀!?」


 遠藤と中村が加賀に近か寄ると、二人の目に胞子が入る。


 「ぎゃあああああああ!? 痛い痛い痛い!? 目に胞子が……!?」


 「目が!? 目がああああああああ!?」


 あまりの激痛に戦闘をするどころではなく、武器を放り投げて加賀と遠藤の二人はその場でのたうち回る。


 さらに胞子は身体の内部まで入り込み、焼かれるような痛みに襲われた。


 『マタンゴ』


 ランクDの植物型モンスター。


 外敵に襲われて身の危険が迫ると相手に激痛を与える赤紫色の胞子を放つ習性を持つ。


 胞子は特殊な薬を調合するために必要な素材でもある。


 本来なら遠距離からの攻撃で対処するべき相手なのだが、マタンゴの特性を知らぬまま加賀と遠藤は至近距離から攻撃を行ってしまったため、最悪の形で反撃を受けるはめになってしまったようだ。


 「「「「「「「「「「ロロロロロロロロロロロロ!」」」」」」」」」」


 仲間を殺されて身の危険を感じたのか、残りのマタンゴも身体を揺らして胞子を撒き散らし始めるのだった。

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