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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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報告

 加賀達との密会を終えたブレフはとある宿屋の一室に入室した。


 「ふんふんふ~ん♪」


 上機嫌なブレフ。鼻唄を歌いながら部屋の中央に置かれている姿見鏡に近づく。


 「さ~て、報告報告っと♪」


 ブレフは姿見鏡に触れて魔力を流し込む。するとブレフを映し出していた鏡面は徐々に変化し、別の人物を映し出した。


 『……ブレフか?』


 鏡面に映し出されたのはまるで血のように紅い髪と瞳を持つ男。『六魔将』の統括者であり魔王の腹心である『鮮血』のアルセリオ=マグバールだった。


 この姿見鏡は魔力を流し込むことによって遠く離れた人物と連絡が取り合えるマジックアイテムだった。


 「やあ、アルセリオ。久しぶりだね。元気にしてるかい? 僕は君に会えなくて寂しかったよ~」


 『六魔将』の統括者であるアルセリオに対してもふざけた口調で話すブレフ。


 『下らないことを言っていないで報告をしろ』


 呆れ顔で言うアルセリオ。


 ブレフとは長い付き合いになるがどうもこの態度は好きになれなかった。


 「つれないな~。もう少しおもしろいリアクションをしてくれてもいいと思うのだけどね~」


 『早く報告をしろ……』


 一向に報告をしようせず、ふざけた態度に苛立ちを覚えるアルセリオはブレフを睨みつける。


 アルセリオの鋭い眼光にブレフは思わず冷や汗を流す。


 「はいはい、分かったよ。まったく、冗談が通じないね、君は……」


 ブレフはやれやれと言った表情で肩を竦める。


 「今回のバルロス迷宮で行われた訓練による事故で勇者の1人が死亡したよ」


 『ほう……』


 「それと少し前に3名の勇者と接触。彼らの弱みを握って僕の忠実な奴隷として利用することに成功したよ」


 それを聞いたアルセリオは呆れたように溜息を吐く。


 『世界は違えどやはり人間族か……。己の欲のためなら仲間すら平気で裏切るとは……。哀れな存在だな……』


 「それは僕も同感だね~。しかし、正直に言えば期待外れと言わざるを得ないな~。勇者と聞いて少しは期待してたけど、現時点の状況では僕達魔人族の強敵になるとは到底考えられないよ」


 どうやらブレフの中で勇悟たち勇者一行は魔人族の脅威にならないと判断したらしい。


 無理もないだろう。勇悟達は数ヶ月前まで平和な日本で暮らしている唯の学生だったのだ。戦場の心得など持っているはずもない。


 『勇者の中でも一人別格の者がいると聞いたが、その者はどうだ? 確かユウゴ=イチノセという名だったか?』


 以前の報告で聞いた勇悟のことを問うアルセリオ。


 その問いに対してブレフはまるで失望したかのように表情を曇らせる。


 「確かに彼は他の勇者と違って実力、カリスマ性はある。だけどあれは駄目だね。失望したよ。彼は自分の正義を何の躊躇いもなく信じて突き進んで、周りの人間を巻き込んで死ぬタイプだ。あれじゃあただの子供と大差ないよ」


 それが最強の勇者と言われている勇悟に対するブレフの評価だった。


 この数ヶ月間、ブレフは勇悟を観察していたが、思い込みの激しい性格に何度呆れ、失望したかは分からない。


 『ふむ、我々との戦争が本格化すれば多少は変化するだろうな』


 「まあ、そうなれば面白いかもね~」


 ケラケラと陽気に笑うブレフ。


 「他国に関する情報は部下に調査させてるから後日報告するよ」


 『御苦労だった。引き続き勇者達の監視を続けろ』


 「了解。全てはこの《道化》のブレフに任せてよ」


 ブレフの言葉にアルセリオは頷いた。


 『期待しているぞ。この世界を我ら魔人族の手に』


 「我らの魔人族の手に♪」


 ブレフは姿見鏡に魔力を流すのを止めた。それと同時にアルセリオの姿は消え、再びブレフを映し出した。


 「そうだ。もっと僕を楽しませてくれよ。僕はもっともっと楽しみたいんだ。僕は退屈が嫌いなんだ。だから僕を退屈させないでくれよ、勇者達……」


 そう独り言を呟き、怪しげな笑みを浮かべるブレフだった。

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