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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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道化

 中天に浮かぶ満月の明かりが、薄い膜を張るように迷宮都市・メルリオを照らしていた。


 深夜のメルリオは昼間の賑やかさとはまるで正反対で物静かだった。


 そんな中、街の片隅にある大きな街路樹の下で話し合っている3人の若者の姿があった。


 「やったな」


 「ククク、清々するぜ」


 「皆、事故だと思っているようだな」


 加賀、遠藤、中村の3人組だ。


 煉太郎がバルロス迷宮で発見されなかったという報告はすぐに生徒全員に広まった。


 それを知った加賀達は内心で大いに喜んだ。これで邪魔者が消えた、と。


 そして今、次の作戦についての密会が行われようとしていたのだ。


 「落ちこぼれ野郎が死んだと聞いて櫻井はショックを受けているはずだ」


 「その心の隙を突けば俺たちにもチャンスが!」


 「ハハハハハハッ」


 暗い笑みと濁った瞳で会話をする加賀達。


 「しかし、落ちこぼれは消えたが邪魔者はまだいるぞ」


 「……確かにな」


 「チッ……」


 恨めしそうにある男子生徒のことを思い浮かべる加賀達。


 一之瀬勇悟。


 愛美の幼馴染でありもっとも親しくしている男子生徒で、しかも容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、さらに勇者の中でも群を抜いた完璧超人。


 間違いなく今後の加賀達の計画に邪魔な存在だった。


 「どうする?」


 「決まってるだろ?」


 「一之瀬も荒神のように死んで貰おうぜ。俺達のために」


 煉太郎に続き、勇悟にも消えて貰おうと考える加賀達。


 その時――


 「物騒な話をしているね、君達」


 「「「――ッ!」」」


 不意に声を掛けられた。


 しかし、周囲には誰もいない。


 「どこを見ているんだい? 上だよ、上」


 慌てて上を見上げる加賀達。


 そこにはまるで道化を思わせる程の派手な衣装と化粧をした藍色の髪の青年が太い木の枝に腰掛けていた。


 「だ、誰だお前は!?」


 青年に問い掛ける加賀。念のためにいつでも異能が発動出来る準備をしておく。


 「そう警戒しないでくれよ。僕は君達の敵じゃないよ」


 青年は両手を上げて敵意がないことをアピールをする。


 それでも加賀達の警戒は続く。


 「誰なんだと聞いているんだよ!?」


 思わず怒鳴り声を上げる加賀。


 「怒るなよ。僕は『道化』のブレフ。魔王軍の幹部―『六魔将』の一人さ♪」


 「ま、魔王軍の幹部……!?」


 目の前の人物が魔人族――しかも魔王軍の幹部である『六魔将』の一人だと知って驚きを隠せない加賀達。


 しかしその反面、これはチャンスが来たと加賀達は感じていた。


 ここで『六魔将』の1人を討ち取れば加賀達の名声は一気に上がり、周囲の期待も得られる。愛美にも良いところを見せられてまさに一石二鳥だ。


 加賀達は戦闘態勢に入ろうとしたその時だった。


 「それよりも先程の話を――仲間を見捨てたことを他の仲間に知られれば、君達は一体どうなるだろうね~?」


 「「「――ッ!」」」


 ブレフの言葉に息を呑む加賀達。


 「な、何を言っていやがる!?」


 「俺達がそんなことをしたという証拠なんてないぞ!?」


 「そ、そうだ!」


 「証拠がない? 証拠ならあるよ? これが証拠さ」


 そう言ってブレフは懐から水晶で出来たオーブを取り出す。


 するとオーブは淡く光ると――


 『やったな』


 『ククク、清々するぜ』


 『皆、事故だと思ってるぜ』


 「「「――なっ!」」」


 オーブから音声が発せられた。


 間違いなく加賀達の声だった。


 『落ちこぼれが野郎が死んだと聞いて櫻井はショックを受けているはずだ』


 『その心の隙を突けば、チャンスが!』


 『ハハハハハハッ』


 ブレフが持つオーブは音声を録音するマジックアイテムで、先程の会話は録音されていたのだ。


 『しかし、落ちこぼれは消えたがまだ邪魔者がいるぞ』


 『……確かにな』


 『チッ……』


 加賀達の表情が徐々に青褪めていく。


 『どうする?』


 『決まってるだろ?』


 『一之瀬も荒神のように死んで貰おうぜ。俺達のために』


 そこで音声は止まった。


 「この会話を聞けば君達の仲間はどう思うだろうね? 特にあのサクライという娘が聞けば、君達は終わりだね?」


 追い詰められる加賀達。


 「……何が目的だ?」


 加賀の問いにブレフは笑みを浮かべながら答える。


 「そうだね~。とりあえず君達には僕の奴隷になって貰おうかな~」


 「な、何だと……?」


 突然の奴隷宣言。流石に躊躇する加賀達。


 当然、そんな申し出は断りたい。


 しかし、ここでこの申し出を拒めば間違いなくブレフは加賀達の悪行をクラスメイト達に告発するだろう。


 そうなれば、加賀達は終わりだ。


 こうなればブレフを排除して証拠を消そうと、暗い思考に囚われ始める加賀達。


 そんな加賀達にブレフは悪魔の誘惑をする。


 「僕の奴隷になれば、愛しのサクライは君達の物になるよ?」


 「「「――ッ!」」」


 暗い思想が一瞬で吹き飛ばされ、驚愕に目を見開いてブレフを凝視する加賀達。


 ブレフは加賀達の形相を見て、ニヤリと笑う。


 「君達の秘密も守れて愛しのサクライも手に入る。悪くない条件だと思うのだけどね? どうする? 僕の忠実な奴隷になる? それとも僕の誘いを断って仲間に秘密をばらされたい? さあ、どちらを選択する? 僕としては前者を選んで欲しいな~」


 人を小馬鹿にしたような態度に苛立ちを覚える加賀達だったが、どちらにしろ自分達に選択肢がないと諦めて、首を縦に振った。


 「……分かった。あんたに従うよ」


 「……俺も」


 「……従うよ」


 加賀達の返答にブレフは不適に笑う。


 「ハハハハハハ、それは良かったよ! これで君達は僕の忠実な奴隷だね! これから仲良くして行こうじゃないか、裏切り者の勇者達よ!」


 「……チクショウ」


 高笑いするブレフの姿を見て、加賀は小さく呟くのだった。

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