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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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認めたくないこと

新年、明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。

 休憩を終えて残りの生徒と騎士団員の捜索を開始する勇悟達。


 暫く歩いたがなかなか生徒達を見つけられないでいた。


 想像以上にこのフロアが広大で迷路のように複雑になっているようだ。


 「……皆、止まれ」


 「どうしたの勇悟?」


 急に立ち止まる勇悟に問い掛ける凛。


 「あそこを見てみろ……」


 勇悟が指差す方向に視線を向ける一同。


 勇悟が指差した場所は岩壁に亀裂が入って洞窟のようになっている所だった。


 「何か気配がする……」


 凛の言葉に緊張が走る。


 「……行こう」


 勇悟達は警戒しつつ、洞窟に近づく。そして洞窟を覗き込むと、そこには見覚えのある人物達の姿がそこにあった。


 「レクター団長!?」


 レクター団長を含む騎士団員の全員が腰を降ろして休憩を取っていた。


 「ユウゴ、それにマナミ達も!? 皆、無事だったか!?」


 「レクター団長も無事だったようですね!」


 レクター団長と団員の再会に警戒を解いて喜ぶ勇悟達。


 「マナミ、早速で悪いが団員達の怪我を見てくれないか? 酷い怪我を負っているんだ……」


 レクター団長の視線の先には重症を負った騎士団員の姿があった。


 腕が折れていたり、肉を喰いちぎられていたり、鋭利な刃物で斬られたような傷を負っていたりと、どれも酷い怪我だった。


 「分かりました! 直ぐに治療をします!」


 「助かる……」


 レクター団長に頼まれて直ぐ様騎士団員の治療を始める愛美。


 レクター団長によるとランクCのモンスターに襲われたらしい。


 このフロアには、ランクCのモンスターが数多く存在している。


 長年の戦闘経験を持つレクター団長ならどうにか相手ができるが、入団したばかりで戦闘経験が少ない若手の騎士団員には手強すぎる存在だ。苦戦を強いられるのも仕方がないだろう。


 「治療終わりました」


 完治ではないが、愛美の異能の力で重症を負っていた騎士団員の傷はどうにか身体を動かせるまで回復していた。


 「ありがとうマナミ。よし、探索を続けるぞ! 残りの者を探して早くこのフロアから脱出するぞ!」


 「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


 探索を開始する勇悟達。


 レクター団長達と合流して順調にダンジョンを進むことが出来るようになった勇悟達。


 それは騎士団員の1人が有する異能『地図製作マップ』のお陰だった。


 この異能は半径数10メートル以内の地形を紙に描き写す能力で、その地図は精密に描かれているので勇悟達はダンジョンで迷うことなく進むことが出来るのだ。


 途中でモンスターと遭遇しながらも順調にダンジョンを進む勇悟達。


 しかし、勇悟達の体力と魔力は限界に近づいていた。モンスターとの連戦が響いているのだ。


 このままダンジョンにいるのは危険だ。


 (早く残りの者達と合流せねば……)


 そう、レクター団長が思っていると――


 「おーい!」


 「助かったぜ!」


 「これで安心だ!」


 ダンジョンの奥から人の声。加賀、遠藤、中村の3人だ。


 これで煉太郎以外の全員が揃った。


 「残りは荒神だけだな……」


 勇悟の言葉に愛美は表情は暗くし、胸元のペンダントを握り締める。


 煉太郎以外が揃った。それは煉太郎1人で行動しているという意味だ。


 「早く荒神くんを探そうよ!」


 愛美の言葉に一同は頷いた。一部の人物を覗いて……。


 「(もう遅いさ……)」


 「(今頃あいつはモンスターの餌食になっている頃さ……)」


 「(ヒヒヒ……)」


 誰にも気づかれない小声で会話をする加賀、遠藤、中村の3人。


 どうやら3人は今頃煉太郎がサーベルベアー(稀少種)の餌食になっていると思っているようだ。


 強力な異能を有している3人が相手をして敵わなかったモンスターだったのだ。落ちこぼれ如きが倒せる訳がないと思い込んでいるようだ。


 暫く進んでいると、勇悟達はとある場所で歩を止める。


 「瓦礫が邪魔で通れないな……」


 そこは加賀たちが煉太郎とサーベルベアー(稀少種)を閉じ込めた広間に通じる出入口だった。


 「レクター団長、転移用の魔法陣はこの先を進まなければならないようです」


 地図を見ながらそう告げる騎士団員。


 「そうか。よし、全員でこの岩を退けるぞ!」


 「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


 レクター団長の言葉に加賀、遠藤、中村の3人に動揺が走る。


 万が一、煉太郎が生き残っていれば自分達が行った行為が皆に知られてしまう。そうなれば周囲の加賀達に対する評価は地の底に落ちるだろう。


 それだけは絶対に避けなくてはならない。


 しかし、ここで不穏な行為をすれば怪しまれる可能性は高い。


 「(おい、どうするんだよ加賀……!?)」

 「(ヤバくね……?)」

 「(うるさい! 黙っていろ……!)」


 加賀達は煉太郎が生存していないことを祈りながら瓦礫を退かす作業に取り掛かる。


 そして、瓦礫を全て退かして通れるようになり、広間に入ると壁や地面に大量の血が飛び散っており、その光景に全員が息を呑む。


 「つい先程前に戦闘をしていた形跡があるな……」


 と、呟くレクター団長。


 すると、早乙女があるものを見つけて青褪める。


 「ねぇ、あれって……人の、腕……?」


 全員、早乙女が指差す方を向く。そこには人の腕が地面に転がっていた。


 それを見た全員に動揺が走る。


 そしてそれは皆が知っている人物の腕だった。


 「……嘘」


 ポツリと呟いたのは愛美だった。


 ――嘘だと信じたい。


 ――夢なら覚めて貰いたい。


 ――彼のであって欲しくない。


 しかしあの腕の袖は間違いなく愛美が思う人物の――煉太郎のものだった。


 「あれはもしかして……荒神の……」


 勇悟が思わずといった感じで呟いた。


 「違うよ……」


 しかし、愛美はそれを認めようとはしなかった。

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