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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
20/139

蟻の女王

今年最後の投稿です。

 「うおおおおおおお!」


 勇悟はエクスカリバーとマジックソードに魔力を通して、刃でソルジャーアントの胴体を真っ二つにする。あるいは腹に蹴りを入れて空中に浮かせて刃を一閃、唐竹割にする等をしてソルジャーアント達を斬り裂いていく。


 僅か数秒で6匹のソルジャーアントを倒す勇悟。


 「〝放つのは光の矢――ライトアロー〟」


 「ハァッ!」


 愛美と凜も勇悟に続いてソルジャーアントに攻撃する。


 5分も経たずに全てのソルジャーアントを屠った勇悟達。


 早乙女は魔法障壁を解除すると、その場にへなへなと座り込んでしまう。


 「助かったよ一之瀬くん。それに櫻井さんと東郷さんも。もう駄目かと――」


 「――ギ、ギギギギギギギギギギギギィッ!」


 「――ひっ!?」


 早乙女の背後の壁面を破ってソルジャーアントが禍々しい声を上げて出現する。


 同胞を殺されて怒り狂うソルジャーアントは、その鋭い爪をへたり込んでいる早乙女目掛けて振り下ろす。


 「――ッ! 『加速移動ハイスピード』!」


 異能を発動させ、音速とも言えるスピードでソルジャーアントへ疾走する凜。


 「ハァッ!」


 「――ギ」


 視認することさえ許さぬ鋼の閃光。


 鞘と鍔が重なる乾いた音に、刀が解き放たれ、その発射台へと舞い戻ったのだと理解する。


 振り下ろされた爪、そして頭部が胴体からずり落ちる。頭部を失ったソルジャーアントの胴体はぐったりと力を失い、斃れる。


 もし、凜がもう少し遅ければ、早乙女は今頃ソルジャーアントの餌食になっていただろう。


 「大丈夫?」


 へたり込む早乙女に手を差し伸べる凜。


 その姿はまるで絶対絶命のピンチを救ってくれる王子様のように見えた。


 「……」


 そんな凜の姿に心を奪われたかのように、うっとりとした眼差しを向ける早乙女。


 「早乙女さん?」


 「――はっ! あ、ありがとう、東郷さん……」


 差し出された手を掴み、顔を赤くさせて助けてくれた凜にお礼を述べる早乙女。


 「無事で良かったわ。それより早乙女さん、他の生徒達と騎士団員の皆は?」


 「私だけだよ。気が付いたらこの広間にいて、皆が来るのを待っていたらソルジャーアントの群れに襲われて……」


 「そうか。なら早く先を進んだほうがよさそうだな。他の皆も危険な目に遭っているかもしれない」


 そう言って先に進もうとする勇悟。


 その時だった。


 ズシン…………ズシン…………ズシン…………ズシン…………ズシン…………ズシン…………!。


 何か地鳴りのような音がダンジョンの奥から聞こえた。しかもかなり大きい。


 ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……!!


 地鳴りは徐々に近づいている。


 「何か……来るぞ!」


 勇悟の言葉に全員が武器を構える。


 すると――


 「助けて!助けてーーーー!」


 「もう嫌ですわ!」


 「無駄口叩いてないで早く走れ!」


 天野由利香、有栖川澪那、剛田海斗の3人が恐怖に歪んだ必死な形相で、勇悟達の方へ走って来ていた。


 まるで何かから逃げているかのように……。


 勇悟達に気づいて、天野が叫ぶ。


 「皆、早く逃げて!」


 天野が叫ぶのと同時に――


 「ギギギギギギギギギギギギギギッ!!」


 巨大な鳴き声が広間に響き渡る。


 「「「「――ッ!」」」」


 その声の主を見て、思わず絶句する勇悟達。


 声の主は巨大な蟻だった。


 ソルジャーアントとは比べものにならない程の巨躯。体長5メートル以上はあるだろう。


 肥大化した腹部。象のような巨大な太い足。見るからに硬そうな重厚な黒い甲殻。鋭利な顎。そして、まるで王冠のような形状をした突起を持つ頭部。


 その巨大な蟻型モンスターの姿をを見て、早乙女は以前見たモンスターに関する書物に記されたモンスターの名を口にする。


 「クイーンアント……!?」


 『クイーンアント』


 ランクCの蟻型モンスター。


 別名『蟻の女王』と呼ばれている。


 蟻型モンスターのトップに君臨する種類でその大きさは他の蟻型モンスターと比べると郡を抜いている。


 繁殖期になると大量の卵を産み出し、数万を超える軍勢を作り出すと言われ、一種の災害とも言えるモンスター。


 過去にクイーンアントが率いる軍勢により多くの村が壊滅するという記録が存在する。


 「「「「「「ギギギギギギギギッ!」」」」」」


 さらにクイーンアントの周辺にはソルジャーアントよりも一回り大きく、盾状の外殻、腹部の末端には針のようなに鋭い突起がある蟻型モンスターがいる。


 『ガーディアンアント』


 ランクDの蟻型モンスター。


 別名『護衛蟻』と呼ばれている。


 クイーンアントを護衛する役割を持ち、常に周囲にいる。


 外殻は鋼鉄のように硬く、針のような突起から神経を麻痺させる毒を分泌させ、その毒で獲物を弱らせる。


 「クイーンアントにガーディアンアントまで……。一時撤退だ!」


 瞬時の判断で勇悟は皆に撤退の指示を出すが――


 「ギギギギギギギギギギギギッ!!」


 クイーンアントが鳴き声を上げると、広間の天井の隙間から大量のソルジャーアントが湧き出てきた。数は30匹は超えるだろう。


 ソルジャーアントの大群は素早く勇悟達の周囲を取り囲み、逃げ場を塞ぐ。


 「くっ、囲まれたか……。皆、戦うぞ!」


 鞘からエクスカリバーとマジックソードを抜いて構える勇悟。他の生徒達もそれに続いて武器を構える。


 「ギギギギギギギギギギッ!!」


 クイーンアントが鳴き声を上げると、一斉にソルジャーアント、ガーディアンアントが勇悟達に襲い掛かる。


 「〝邪悪なる敵に、聖なる一撃を与えろ――ホーリーセイバー〟!」


 光の斬撃がソルジャーアント達のど真ん中を斬り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。今の一撃で20匹は倒しただろう。


 勇悟はそれぞれに指示を出す。


 「早乙女と天野、有栖川、剛田の4人はソルジャーアントとガーディアンアントを頼む!」 


 「了解!」


 「分かりましたわ!」


 「おうよ!」


 「愛美、凜でクイーンアントを倒す! 行くぞ愛美、凜!」


 「うん!」


 「ええ!」


 勇悟と愛美と凜がクイーンアントに突貫する。


 「ギギギギギギギギギギギギギッ!」


 それを迎え撃とうとクイーンアントは口を開き――


 「!? やばい、避けろ凜!」


 「――ッ!」


 勇悟は感じた危機感をそのまま凜に声を掛け、それを汲み取った凜は真横に跳ぶ。


 そして次の瞬間には数瞬間前まで凜のいた場所をクイーンアントの口から放たれた緑色の液体が降り掛かる。


 回避したその液体が周囲の石や地面を溶かしているのを見た凜はあの緑色の液体が酸――蟻酸と言われる類のものであると判断する。


 あんなものを直接受けたら骨まで溶かされるのは間違いないだろう。


 「厄介ね……」


 と、凜が呟くと――


 「ギギギギギギギギギギッ!!」


 自分の攻撃が外れたのは悔しかったのだろうか。鳴き声を上げながらその巨大な前足を凜に目掛けて振り下ろす。


 「ハアッ!」


 凜はクイーンアントの一撃を見事に回避してその左前足を刀で両断する。


 「ギギィッ!!」


 短く悲鳴を上げるクイーンアント。


 すると再び口を開き、蟻酸を凜に向けて放とうとする。


 「凜ちゃん!?  〝清浄の水球をここに――ウォーターボール〟!」


 愛美が放った水球がクイーンアントの顔面に直撃する。


 「ギギィッ!」


 攻撃を邪魔されて顎をガチガチと鳴らして愛美を睨むクイーンアント。


 「一気に片を付ける! 愛美、凜。クイーンアントの注意を引き付けてくれ!」


 「分かった!」


 「何とかしてみるわ!」


 愛美はクイーンアントから離れた場所から水球を放ち続け、凜はクイーンアントに突貫する。


 そして勇悟はクイーンアントを葬る魔法の詠唱を開始ししようとするが――


 「ギギギギギギギギギギッ!」


 「――ッ!」


 ガーディアンアントが勇語に向けて蟻酸を放つ。


 勇悟は後方に跳びんで蟻酸を避けると、エクスカリバーの刃をガーディアンアントの胴体中央に突き刺す。


 ソルジャーアントは悲鳴を上げることさえままならず、双眸から光が消えて、斃れる。


 「ギギギギギギィッ!!」


 別のソルジャーアントが再び勇語に襲い掛かる。


 「一之瀬の邪魔してんじゃねぇよ!」


 「ギギギッ!?」 


 剛田が振るうハンマーのフルスイングにより、ガーディアンアントは硬い外殻は砕かれ、宙を舞うことになる。


 「悪いな一之瀬。雑魚共は俺達に任せて、遠慮なく詠唱に集中しろ!」


 「剛田……助かる!」


 周囲を皆に任せて、再び詠唱を開始する。


 「〝破邪の力を宿す光よ、ここに集いて悪しき者を討ち滅ぼす、聖なる光を放ちたまえ――セイクリッドセイバー〟!」


 詠唱が終わるのと同時に光剣を真っ直ぐ突き出すと、エクスカリバーから極光が迸る。


 極光は地面を抉り飛ばしながらクイーンアントへと直進する。


 凜は詠唱が終わるのと同時に離脱している。


 「ギギギギギギギギギギギギギギィッ!!」


 断末魔の悲鳴を上げながらクイーンアントは極光に包まれた。


 暫くすると極光は収まり、舞う埃が吹き払われる。


 クイーンアントの姿はなく、消滅したようだ。


 「はぁはぁ……やったぞ……」


 勇悟は今の一撃で莫大な魔力を消費したようで肩で息をしている。


 先程の魔法〝セイクリッドセイバー〟は勇悟の切り札だ。光属性の最上位クラスの魔法で勇悟が使用する魔法の中で最も威力が高い。その分、消費する魔力が半端ないので連発が出来ないのが難点だが。


 「倒せた!」


 「やったわね!」


 「ええ」


 「疲れたぜ……」


 早乙女達もソルジャーアントとガーディアンアントを全滅させたようだ。


 かなりの数がいたので無傷ではないが、大した怪我はしていないようだ。


 愛美は直ぐに治療を始める。


 「皆、少し休んだら先に進もう。他の皆が心配だ」


 流石に今の戦闘でかなりの体力と魔力を消費しているので反対する者はいなかった。


 (荒神くん、無事でいてね……)


 愛美は煉太郎のことを思いながら治療を続けるのだった。

来年まで残り僅かとなりました。

来年も投稿頑張りますので宜しくお願いします。

それでは良いお年を!

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