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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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異世界と勇者

異世界召喚!!

 会議室で光に包まれた煉太郎は気がついたら見知らぬ場所にいた。


 「痛てて、腰を打っちまったぜ……」


 「目が、目があぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 「ここはいったい……」


 「何が起きたんだよ!?」


 周りにはクラスメイトが周囲を見渡しながら騒いでいる。


 どうやら、あの時教室にいた生徒全員がこの状況に巻き込まれたようだ。


 煉太郎も何とか落ち着きを取り戻して、改めて周囲の観察を始める。


 どうやら煉太郎達は巨大な広間にいるようだった。


 白く美しい大理石のような素材で造られた建築物は以前漫画で読んだファンタジー世界のものと似ていた。


 建物は塔か何かの場所なのか、吹き抜けになっており、座りながらでも外がよく見える。


 足元には先程教室に出現した魔法陣と同じものが描かれており、僅かな光が発せられいる。


 幾つかの円柱で支えられている天井や壁にも魔法陣に似た文字や見覚えのない奇妙な絵が描かれている。


 煉太郎達は広間の中心にある巨大な祭壇のような場所の上にいた。周囲より高く、周りを一望出来る。


 そして煉太郎が立ち上がると、改めて気付く。祭壇の周りに自分達以外の人物がいることに。


 明らかに学校の関係者ではない。


 騎士のように鎧を身に着けた者。魔法使いを思わせるローブを身に纏った者。紳士服のような服を着た者。白地の法衣のようなものを纏う者。上品で煌びやか服装をした者など、まるで中世ヨーロッパのような服装をした人物達がざっと30人、煉太郎達を観察しているのが窺える。


 「おお……!」


 「やった、やったぞ……!」


 「どうやら成功したようだ!」


 「これで我が国は世界は救われるぞ!」


 周囲の人物達が感嘆の声を上げ始める。その中には喜ぶ者や涙ぐむ者達もいる。


 だが、その表情にはかなりの疲労が出でおり、大量の汗を流している。


 (ここは何処だ? それにあの人達は……)


 煉太郎同様、他のクラスメイト達も同じ疑問を浮かべる中、青いドレスを着た女性が祭壇に向かって歩き出す。


 顔立ちから察するにおそらくは十代半ばであり、女性よりは少女といった方が正しいだろう。


 金色に輝く長い髪を縦巻きにカールしたロールヘア(縦ロール)、優しげな蒼い瞳、日本人離れした顔は少女の雰囲気と相まってなんとも言えぬ気品をもたらす。


 着ているドレスは派手過ぎず、それでいて上品であることがわかるように上質な素材を使用しており、細かい所は作り手の技術が施されている。


 生徒の大半が彼女の気品溢れる雰囲気に思わず見惚れてしまう。


 すると少女は煉太郎達に向かって軽く頭を下げる。


 「ようこそ、異世界から召喚された勇者の皆様」


 透き通る声は少女の雰囲気にとても似合うものだった。


 「私はオルバーン王国の王女、エミリア=フォン=オルバーンと申します。以後、宜しくお願いします。私達が皆様の力をお借りするため、勇者としてこの世界に召喚させていただきました」


 少女――エミリアの声は生徒全員に聞こえた。


 しかし、生徒達にはその話の内容が全く理解出来なかった。


 「「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」」


 新しい疑問が頭の中を巡り始めた。


 そんな中、勇悟はエミリアと名乗る少女に質問する。


 「あの、ここは何処ですか……? それに勇者って……?」


 「申し訳ありません。詳しい話は国王が直々にご説明致します。皆様、私について来て下さい」


 生徒達あまりに不可思議な出来事が起きて頭の中は混乱しており、エミリアの指示に従ってついて行くしかなかった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 エミリアの先導のもと、煉太郎達は国王がいるという玉座の間へと案内させる。


 先程居た場所はやはり塔のようであり、かなり大きな城の中に建てられたものだということも理解出来た。


 「ここが国王のいる玉座の間です」


 巨大な扉を開くと、そこは豪華な広場だった。


 先程の祭壇があった部屋の3倍以上の広さはあるだろう。


 天井には煌びやかで大きなシャンデリア、広場の中央には手触りの良さそうな赤いカーペットが敷かれ、その周りには豪華な蝋燭立てが幾つも置いており、終着点には階段と頂上に位置する玉座があった。


 玉座には白いひげを蓄え、大きな青い宝石が埋め込まれている王冠をかぶった初老の男性が座っていた。その隣には豪華なドレスとティアラを身に着けた女性。その更に隣には煉太郎達と同い年位の金髪美少年が控えている。


 カーペットの両サイドには騎士や文官らしき者達が20人以上は並んで佇んでいる。


 エミリアは生徒達を初老の男性の前まで連れて行くと一旦立ち止まるようにと告げて、自分も玉座の隣に控えた。


 「よくぞ召喚に応じてくれた。感謝するぞ勇者達よ」


 玉座に座っている人物が穏やかな笑みを浮かべて言葉を発した。


 「余はオルバーン王国の国王、アルフレド=バン=オルバーンである。我々は勇者である其方達を歓迎しよう」


 「私は王妃のマリエラ=リューン=オルバーンです」


 「王子のクロウド=ダン=オルバーンだ」


 そう言われても煉太郎達は反応に困る。だが目の前の人物達が大物だということはよく分かった。


 しかし、オルバーン王国という名の国に誰1人聞き覚えがなく、混乱は増える一方だった。


 「ふむ、どうやら突然のことで戸惑いばかりが先行しているようであるな。今から余が説明する故、安心するがよい」


 アルフレド国王は困惑顔の煉太郎達に向かって説明を始める。


 まず、この世界はラディアスと呼ばれている。


 煉太郎達が住んでいる世界とは全く異なり、魔法が存在する世界だ。


 ラディアスには人間族だけではなく、エルフ族やドワーフ族、獣人族など様々な種族が存在する。


 煉太郎達は勇者としてこのラディアスに召喚されたのだ。


 そして、オルバーン王国が煉太郎達をラディアスに召喚した理由。


 それは魔王討伐の為だ。


 現在、オルバーン王国――ラディアスは滅亡の危機に瀕していた。


 20年前、魔人族という種族が戦争を始めた。


 魔人族はどの種族よりも圧倒的に魔力が高く、強力な魔法を使用することが出来る種族で、こと戦闘においては凶悪過ぎるほどの力を有している。


 戦闘では魔法が全てというわけではないが、それでも魔人族が使う魔法は強力なものばかりで、下っ端でも数人の人間がチームで対応しなければ倒すのは難しいと言われている。


 その中でも魔人族を統べる王――魔王の力は他の魔人族よりも邪悪かつ強大らしく、最強の魔王と言われているほど。


 魔王は優れた力を持つ魔人族こそがラディアスを掌握し統一するのに相応しいと考えており、邪魔な他種族を滅ぼし、魔人族だけの世界を創ろうとしている。


 四年前には一つの大陸が魔人族によって攻め滅ぼされたしまった。


 オルバーン王国は農業が盛んな小国で、人口や軍隊規模では周辺国家には敵わなかった。


 このままでは、いずれオルバーン王国が魔人族に滅ぼされることを懸念したアルフレド国王は異世界の勇者を召喚する儀式を行うことにした。


 古い文献によれば召喚された勇者は強力な異能を授かり、魔人族並に魔力も高く、高位の魔法も使用出来ると古代の書物には記されていた。


 異能とはごく一部の者が生まれながら有する特殊な能力ことである。


 「勇者達には是非その力を発揮し、魔王からこのオルバーン王国を――この世界を救って貰いたいのだ!」


 懇願するアルフレド国王。周りの騎士達も、片膝を床につき、頭を下げる。


 しかし、いきなり異世界に召喚されて魔王を討伐して欲しいと懇願されても「はい、分かりました!」と、そう容易く言える者はいなかった。


 「ふざけるなよ!」


 「勝手に召喚して戦争しろとか身勝手だろうが!!」


 「そうよそうよ!」


 「元の世界に還してよ!」


 当然、反論する生徒が現れた。


 するとアルフレド国王はポツリと呟いた。


 「帰還は不可能だ……」


 「……え?」

 

 アルフレド国王の言葉に場が静寂で満ちる。


 「不可能なのだ……」


 誰もが何を言われたのか分からないという表情でアルフレド国王を見やる。


 「不可能とは、どういうことですか……? 召喚出来たのなら帰還する方法もあるのでは……?」


 困惑した表情で勇悟が問う。


 「其方達を元の世界に戻すことは出来る。だが、今は不可能なのだ……」


 アルフレド国王曰く、先程召喚された塔の部屋にあった祭壇は『召喚の祭壇』と言って、異世界と異世界を繋げることが出来る代物で、莫大な魔力がなければ起動ることが出来ない。


 オルバーン王国の中でも魔力が高い魔術師や神官、騎士達が20年かけてようやく起動させられるほどの量が。


 つまり、再び地球の空間を繋げるのに20年は掛かるということだ。


 「そ、そんな……」


 勇悟の表情が一気に絶望に染まる。他の生徒も同様で、口々に騒ぎ始めた。


 「嘘、だろ?」


 「嫌だ! 家に還してよ! お父さんとお母さんが心配するじゃない!?」


 「戦争なんて冗談じゃねぇ!」


 「ふざけないで!?」


 「なんで……なんで……」


 「うわーん……!」


 パニックになる生徒達。それは煉太郎も同じだった。


 「しかし、勇者達が一刻も早く元の世界に帰還出来る方法はある」


 「「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」」


 生徒達の顔色が変わる。


 「召喚の祭壇を起動させるには莫大な魔力が必要。魔王だ。魔王には祭壇を起動させることが出来るほどの魔力がある。魔王を倒せば其方達は元の世界に帰還出来るはずだ」


 アルフレド国王の言葉に生徒達は安堵の息をする。


 しかしそれは魔人族と戦争をしなければならないということになる。


 元々、煉太郎達は戦争とは無縁の平和な日本で生活を送っていたただの高校生だ。そんな彼らに戦争をする覚悟なんてあるわけがなかった。


 再び生徒達が狼狽え始める。


 そこに場の空気を変える一言が発せられる。


 「僕は戦うぞ……」


 小さな呟き程度のものだったが周囲の喧騒も関係なく、やけに明瞭に響いた。


 一瞬で静寂が包み込み、広場にいる全員がその声の持ち主――勇悟に視線を向ける。


 「僕は戦うぞ! 帰還する方法がそれしかないんだ。それにこの世界の人達が滅亡の危機に瀕しているのに、放って置くなんて僕には出来ない! アルフレド陛下、僕達には強力な異能が備わっているんですよね!?」


 「うむ。そうだ」


 「だったら大丈夫だ! 僕はこの世界を救う! そして皆と元の世界に還る!!」


 グッと拳を握り締め、宣言する勇悟。


 同時に彼の言葉は他の生徒達の心に響いた。


 不安と絶望を抱いていた生徒達が活気と冷静を取り戻し始めたのだ。


 「帰還する方法がそれしかないのなら、私もやるわ」


 「凜ちゃんがやるなら私も協力するよ!」


 「東郷、それに櫻井も……。ありがとう」


 凛と愛美が勇悟に賛同する。


 「……やるよ」


 「私も!!」


 「絶対に還るぞ!」


 「怖いけど……頑張る!」


 次々と賛同する生徒達。


 「俺も……戦うよ!」


 煉太郎も覚悟を決めた。


 「皆、魔王を倒して元の世界に帰還するぞ!!」


 「「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」」


 しかし、彼らはまだ理解していなかった。戦争をするという本当の意味を……。

次回は主人公達の異能が判明します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔王を倒したら、魔王の魔力も無くなるんじゃ………
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