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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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その頃の勇者達

生徒達の話です。

 とある広間。


 愛美と凜と勇悟の3人はゴブリンの群れと戦闘を繰り広げていた。


 「〝放つのは光の矢――ライトアロー〟」


 光の矢がゴブリンに目掛けて放たれる。


 「ギャアアアアアアアアアアアア!?」


 身体を愛美の放った光の矢に身体を射抜かれ、暫く暴れてから絶命するゴブリン。


 「フッ!」


 「――ギャ」


 短い掛け声と共に、ゴブリンは凜のミスリル製の刀で首を切り裂かれ、叫び声を上げる事もできずに絶命する。


 「〝邪悪なる敵に、聖なる光の一撃を与える――ホーリーセイバー〟!」


 詠唱が終わるのと同時に、勇悟はエクスカリバーを横薙ぎに振り払う。


 その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていたエクスカリバーから、その光自体が斬撃となって放たれた。


 逃げ場など一切なく、曲線を描きながら放たれた光の斬撃が僅かな抵抗も許さず、ゴブリン達の胴体や四肢、あるいは頭部といった部分を何の抵抗もなく斬り飛ばす。


 剣などを装備しているゴブリン達は殆ど反射的に放たれた光の斬撃を防ごうとしてはいた。だが、凜が使っている白雪のようにミスリル製の武器ならともかく、普通の鉄で出来た剣などでは勇悟の一撃を受けきれるはずがない。


 抵抗らしい抵抗も出来ずに、剣から腕、胴体と滑らかに斬り裂かれて内臓を地面に散らすだけだった。


 「「「「「「「「「「ゲギャッ!」」」」」」」」」」


 勇語の一撃で半分以上の仲間を失ったゴブリン達。


 残りのゴブリンも愛美と凜によって斃される。


 すると――


 「ゲギャアアアアアアアアア!!」


 1匹のゴブリンが洞窟の奥から出現した。右手には長剣。左手にはスモールシールドとでも呼ぶべき盾を持っている。


 他のゴブリンとは違う。普通のゴブリンが緑色の皮膚をしているのに対して、このゴブリンは黒い皮膚をしている。また、その背丈も普通のゴブリンと比べると頭一つ分ほど大きい。


 この赤いゴブリンは稀少種だった。


 「ゲギャッ!!」


 鋭く叫んだかと思った次の瞬間にはゴブリン(稀少種)の目の前に巨大な火球が浮かび上がっていた。


 「――ッ!」


 地面を蹴って愛美達の側へと移動する。


 次の瞬間には、つい数秒まで勇悟の側にあったゴブリンの死体に火球が命中して派手な火の粉が巻き起こる。


 「火球を出せるだと!?」


 ゴブリン(稀少種)の特性に驚く勇悟。


 「ゲギャギャギャギャギャギャギャ!」


 ゴブリン(稀少種)は複数の火球が出現。手当たり次第にゴブリン達の死体へと放つと、辺り一面が火の海と化す。


 「――ッ! 〝清浄の水球をここに――ウォーターボール〟!」


 愛美から放たれる複数の水球がゴブリン達の死体から吹き上がる炎に命中し、鎮火に成功する。


 「はぁっ!」


 ゴブリン(稀少種)に目掛けて白雪を一閃する凜。


 「ギィッ!」


 ゴブリン(稀少種)も盾を身体の前へと押し出してそれを防いだ。


 「やるわね……!」


 凜の抜刀速度にも付いて来られるほどの身体能力に感嘆の声を上げる凜。


 「でも、相手は私だけじゃないのよ!」


 凜は後退してゴブリン(稀少種)から距離を取る。


 そしてゴブリン(稀少種)は今頃になって気づいた。最も注意すべき相手に意識を逸らしていたことに……。


 「〝邪悪なる敵に聖なる一撃を与える――ホーリーセイバー〟!」


 光の斬撃がゴブリン(稀少種)へと放たれる。


 「ギギャ!」


 ゴブリン(稀少種)も火球を放つが、勇語の一撃の方が圧倒的に威力が上だった。


 「ギィッ!?」


 放たれた光の斬撃は火球を斬り裂きその場で霧散させ、ゴブリン(稀少種)の胴体を両断。その生涯を終えるのだった。


 「ふう~」


 「お疲れ様」


 「流石に疲れたわね……」


 ゴブリンの群れを全滅させると、勇悟は息を吐きながらエクスカリバーとマジックソードを鞘に収め、愛美はタオルを手渡し、凜は愛美から受け取ったタオルで汗を拭う。


 「2人共無事だな? それにしてもなかなか皆と合流できないな」


 「そうね、そろそろ皆と合流しても良い頃だと思うのだけど……」


 「そう、だね……」


 宝箱のトラップによって別のフロアに転移された勇悟達。


 運良く同じ場所に転移した3人は他の生徒達と騎士団員と合流するためにダンジョンを進んでいた。


 しかし、出会うのはモンスターばかりでなかなかクラスメイト達に遭遇できない。それ所かここから脱出する出口も見つからないでいた。


 「櫻井、顔色が悪いぞ? 大丈夫か?」


 「少し休む?」


 勇悟と凜の言葉に愛美は首を横に振るう。


 「大丈夫だよ。少しだけ疲れただけだから気にしないで」


 いつものように微笑む愛美。


 「あまり無理をするなよ、櫻井」


 勇悟はポーチに仕舞っているポーションを手に取ると、それを愛美に渡す。


 愛美は「ありがとう……」と言ってポーションを口にする。


 「ポーションも残り僅か……。荒神がいればポーションのことを気にしないで済むのにな……」


 瓶の中に入ったポーションを飲みながら勇悟は呟いた。


 食料やポーションに関する物は殆ど煉太郎に預けていたので、予備のポーションしか持っていないのだ。


 それを聞いて愛美の表情が曇る。


 (早く荒神くんの所に行かなくちゃ! もし1人で行動してたら危ない! これじゃあ、あの夢と同じように……)


 再び昨夜の悪夢を思い出す愛美。煉太郎がダンジョンの奥へと消えてしまうあの悪夢を。


 それを思うと、休んでいる暇などなかった。


 (早く荒神くんを探さないと!)


 休憩を終えて3人は再び生徒達の捜索を開始するのだった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 休憩を終えて探索を開始して10分後。


 暫く歩いていると――


 「キャアアアアアアアアアアアアアア!」


 甲高い悲鳴が聞こえ、勇悟達はぎょっとして立ち竦んだ。


 「聞いたか!?」


 「ええ、人の声よ!」


 「早く行こう!」


 勇悟達は全速力でダンジョンの奥へと走ると、広い広間に出た。


 そこには――


 「「「「「「「「「「ギギギギギギギッ!」」」」」」」」」


 「こ、来ないで! あっちに行ってよ!」


 ソルジャーアントの群れに襲われている早乙女恵の姿があった。その数は10匹は超えている。


 早乙女は魔法障壁を四方八方に囲むように張り、ソルジャーアントの猛攻を防いでいた。その表情にはかなりの疲労が出ている。


 「早乙女!」


 勇悟の声に早乙女は勇悟達の存在に気が付く。


 「一之瀬くん!? それに櫻井さんに東郷さんも! お願い、早く助けて! もう魔力が、限界で……障壁が消えてしまいそう……!」


 早乙女の『魔法障壁バリア』は魔力を消費して作り出すことが出来る。ずっと障壁を張って魔力も体力も限界を迎えそうになっているのだ。


 「「「「「「「「「「ギギギギギギギギギギギギギギギッ!」」」」」」」」」」


 ソルジャーアントの群れも勇悟達に気づいたのか、顎をガチガチと鳴らして威嚇する。


 「今助けるぞ、早乙女! 行くぞ櫻井、凜!」


 「うん!」


 「ええ!」


 勇悟の言葉に愛美と凜は頷き、武器を構えてソルジャーアントへと向かって駆け出した。

当分は生徒達の話が続きます。

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