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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
1章 超越の始まり
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黒い悪魔の恐怖

 ダンジョン攻略は順調に進んでいた。


 現在、煉太郎達は9階層まで到達している。


 あと1層で目的の10階層だ。


 このバルロス迷宮には5階層ごとに転移用の魔法陣が設置されており、その魔法陣は外の入場広場に繋がっている。逆に入場広場の魔法陣から5階層ごとの階層に転移することも出来る楊になっている。


 しかし、一度到達した階層までしか送れないようになっている。


 これは古代の技術が施されているのが原因らしいが詳しい詳細は解明されていない。


 10階層まで到達すれば今日の訓練は終了だ。


 「もう少しで10階層だ! 皆、頑張れよ!」


 煉太郎達は疲れが溜まっていた。


 いくら規格外の力を有しているとはいえ、彼らも人間だ。1日中戦闘をしていれば疲れが出るのは当然だろう。


 9階層の中間地点まで進むと、ザワザワ、ガサガサという音を捉えて歩を止める煉太郎達。


 その音は隊列の前方から聞こえ、生理的に嫌悪感を感じさせた。


 「レクター団長! モンスターです!」


 「何!?」


 徐々に近づく不快な音。その音の正体はすぐに判明した。


 「「「「「「「「「「――ッ!」」」」」」」」」」


 煉太郎達は最初、その正体が分からず訝しそうに目を細めていたのだが、それが何か理解した途端に青ざめた表情をする。


 「キャァアアアアアアアアッ!!」


 「――ッ!!」


 「イヤァアアアアアアアアッ!!」


 「ひぃいいい!!」


 「やぁあああああ!!」


 女子達が悲鳴を上げた。凜だけは何とか耐えて悲鳴を上げなかったが誰よりも顔が青褪めている。


 女子達が悲鳴を上げるのは無理もないだろう。


 その音の正体は台所などでカサカサと這い寄り、高速で影から影へと移動し、宙を飛べば悲鳴を上げられ、驚異的な生命力でしぶとく生きる生命体。


 『黒い悪魔』、『G』と呼ばれる女性と飲食店の敵――ゴキブリだった。


 「こ、来ないで!!」


 「ッ――――!!」


 「気持ち悪いよ!!」


 「もう嫌!!」


 「……!!」


 数十、数百、数千、それ以上の数のゴキブリモンスターがまるで黒い津波の如く、こちらに向かって来る。


 『ブラッタ』


 ランクGのゴキブリ型のモンスター。


 普通のゴキブリの3倍はある大きさ、能力は普通のゴキブリと変わらないが、移動速度は2倍以上の速さを誇る。


 女性が遭遇したくないモンスターベスト3に入るモンスターとして有名。


 「〝放つのは光の矢――ライトアロー〟!」


 「〝見えなき風の刃よ――ウインドカッター〟 !」


 「〝灼熱の炎の壁よ――ファイアーウォール〟!」


 「〝彼の者を凍らせろ――フリーズ〟!」


 「〝敵を撃ち払う礫よ――アースブラスト〟!」


 光の矢がブラッタを貫く。


 風の刃がブラッタを切り裂く。


 炎の壁がブラッタを焼く。


 凍てつく氷がブラッタを凍らす。


 礫がブラッタを潰す。


 「「「「「「「「「「キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ――ッ!!」」」」」」」」」」


 女子達は咄嗟に放てる遠距離魔法攻撃がが次々とブラッタを屠っていく。


 普段は魔法を使わず、刀による近距離戦闘を行う凜も今回は魔法を使用している。流石にゴキブリモンスターは斬りたくないようだ。


 次々とブラッタを撃破する女子生徒達。


 しかし、彼女達の恐怖はこれからだった。


 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!


 思わず耳を塞ぎたくなる程の不愉快で大きな音が響き渡る。それは羽音だった。


 「う、嘘でしょ……!?」


 呟く凜。


 大量のブラッタの後ろに――巨大なゴキブリがいた。


 全長は約2メートル。ブラッタのような楕円形ではなく、鋭角形のフォルム。足は十本。顔面には黒一色の眼が複数ついており、顎は巨大で鋭利。背中には3対6枚の半透明な羽がついている。


 「ビッグブラッタ!?」


 『ビッグブラッタ』


 ランクDのゴキブリ型モンスター。


 ブラッタの上位種にあたるモンスター。


 ブラッタの親玉というべき存在で、巨大で鋭い顎の一撃は非常に強力。


 女性が最も遭遇したくないモンスターである。


 「は、ははははは……」


 「く、くくくくく……」


 「ふふふふふふ……」


 「くすくすくす……」


 「ふひ、ふひひ……」


 女子達の不気味な笑い声。


 そして、その女子達の中からゆらりと一人進み出る。


 愛美だ。


 顔に笑みを浮かべているが、その瞳からはハイライトが消えている。



 愛美はゆらりゆらりと歩み進めると、突如、クワッと目を見開き、詠唱を開始する。


 それは愛美が覚えている魔法の中で最も強力な魔法の詠唱だった。


 「〝彼の者は罪人、穢れし魂を持つ罪深き者、その者に断罪の光を――ジャッジメント〟!」


 愛美の前方に魔法陣が出現して――


 ズドォオオオオオオオオオオオオン!!


 極光が放たれた。


 極光はブラッタ、ビッグブラッタを飲み込み、一瞬で消滅させた。


 更に周囲の壁を破壊し尽くしてようやく極光は消えた。


 パラパラと壁の欠片が落ちる。


 愛美は「ふう~」と息を吐く。その表情はどこか満足そうだった。他の女子たちも同じような表情をしていた。


 その光景を見て男子達は「女子怖ッ!」という表情でガクブルしていた。


 (今度から女子は怒らせないようにしよう……。特に櫻井は……)


 と、心に誓う煉太郎。


 その時、ふと愛美が崩れた壁の方に視線を向けた。


 「ん? あれって……部屋?」


 その言葉に、全員が愛美が指差す方へと視線を向けた。


 そこには確かに部屋があった。しかも市販の地図には表示されていない隠し部屋だ。


 生徒達は大はしゃぎで隠し部屋に入りたいと言い出す。


 レクター団長は難しい顔をしているが、溜め息を吐く。


 「よし、折角見つけたのだから入ってみるか」


 レクター団長の許可を貰い、煉太郎たちはぞろぞろと隠し部屋に入る。


 そして、隠し部屋の中には豪華な装飾が施された箱が置いてあった。宝箱だ。


 「スゲー! 宝箱だ!」


 「櫻井さん、お手柄!」


 「きっと、財宝が入っているんだ!」


 「違うわよ、強力なマジックアイテムよ!」


 宝箱を目の前にしてテンションが上がる生徒たち。


 「魔力の反応は――ありません。トラップはないようです」


 魔力感知の異能を有するアレインが安全を告げると、勇者のリーダーである勇悟が代表で宝箱を開ける事になった。


 全員が宝箱の中身に期待を膨らませる中、勇悟は宝箱を開けた。


 しかし――


 「空っぽだ……」


 宝箱の中には何もなかった。


 と、その時だった。


 突如、部屋全体に巨大な魔法陣が出現する。


 「レクター団長、トラップです! あの宝箱には〈魔力感知〉でも分からないほどの妨害機能があった模様です!」


 「――ッ! 皆、急いでこの部屋から出るんだ!!」


 レクター団長の言葉に生徒たちは急いで部屋の外に向かうが、間に合わなかった。


 魔法陣は瞬く間に広がり、眩い光が視界を白く染め上げた。


 そして、その光が消えた時には――その場にいた全員の姿はなかった。

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