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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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最悪の仲間

 領主のエルドラが密かに暗躍を進めているのと同時刻。


 セバーラの街付近にあるダンジョンを2人の冒険者とゴブリンの群れが戦闘を行っていた。


 「おい、まだ魔法は発動しないのか!?」


 「分かってるわよ! 〝見えなき風の刃よ--“ウインドカッター”!」


 女魔法使いが詠唱を終えると、複数の風の刃がゴブリン達を襲う。


 「「「「「「ゲギャギャギャギャギャッ!?」」」」」」


 全身を風の刃で切り刻まれ、ゴブリン達は絶命する。


 「ふう、危なかったな……」


 「私のお陰なんだから感謝しなさいよ」


 「分かってるよ。それにしてもこの辺りのモンスターなら今のところ敵なしだな。今の俺達ならもう『賢者の迷宮』でも大丈夫なんじゃないか?」


 「確かにそうね……」


 現在男戦士達がいるのは『ガルザク洞窟』と呼ばれるダンジョンでセバーラにある『賢者の迷宮』よりは数段ランクが下がるダンジョンである。


この『ガルザク洞窟』に生息するモンスターはランクEからランクDのモンスターが主なので初心者冒険者には打って付けのダンジョンとして知られている。


 今の男戦士達の実力なら『賢者の迷宮』でもそこそこの成果はあげられるだろう。


 「大した自信だね。だったら僕達の相手をしてくれないかな?」


 不意に掛けられる声。


 男戦士達が振り返ると、そこには男の2人組が立っていた。


 1人は男性にしては小柄だが、全身に黒い鎧で纏っている剣士。


 鎧も相当な価値があると思われるが、特に目を引くのは腰に帯剣しているロングソードだろう。ロングソードから僅かだが魔力が漏れている。マジックアイテム――恐らく魔剣の類だろう。


 もう1人は小柄の男とは真逆で2メートル近くはある大柄なスキンヘッドの男。


 巌のように凄まじく発達した筋肉、上半身の衣服を一切着ておらず、代わりに身体の隅々まで刺青を入れている。


 2人の尋常ではない雰囲気からして、只者でないことが伺える。


 「おいおい、何なんだあんた達――」


 ザシュッ!


 男戦士が問う前に、右手首がボトリと音を立てて地面へと落ちる。


「え……?」


あまりの速さに一瞬何が起きたのか分からなかった男戦士だが、後から来る激痛が彼を理解させる。


 「ギャアアアアアッ! お、俺の手がぁぁぁぁぁっ!?」


 切断面から大量の血を迸らせながら悲鳴を上げる男戦士。


 その悲鳴を聞いて、男戦士の手首を切断した張本人である鎧の男は笑みを浮かべる。


 「何をするのよ!? 〝ここに癒しを――」


 「させねえよ!」


 男戦士の傷を回復させようと回復系統の光魔法を掛けようとするが、その前にスキンヘッドの男に取り押さえられてしまう。


 「今はこの少年と僕が楽しんでいるんだ。邪魔しないでよ」


 取り押さえられている女魔法使いに魔剣の切っ先を向けて睨む鎧の男。その表情は狂気に歪んでいる。


 「さあ、次は左手の指だね」


 そう言って、鎧の男は男戦士の指を全て切断し、次に右足の指、その次に左足の指、少しずつ各部位を切断していく。


 「やめて……もうやめてよ……」


 女魔法使いは泣きながら懇願する。


四肢を切断された男戦士の無残な姿をこれ以上見ることが出来なかったからだ。


 「俺は、死んでも構わない。だがそいつだけは見逃してくれ……頼むよ……」


 四肢を失っているにも関わらず、女魔法使いの身を案じる男戦士。


彼にとっては自分の身よりも長年連れ添った女魔法使いの身の安全が第一なのだ。


 「この少女は君にとって大切な娘なのかい?」


 「ああ、そうだ……だからそいつには手を出さないでくれ……」


 「そうかそうか。大切な人なんだね。だったらこうしてあげるよ」


 そう言って、鎧の男は女魔法使いの右手の指を切断する。


 「キャアアアアァァァァァッッッ!?」


 あまりの痛みに女魔法使いがのた打ち回る。


 「何をするんだ!?」


 「別に僕は助けるなんて一言も言ってないだろう? それにここからが面白くなるんだから」


 そう言って鎧の男は残りの指、そして男戦士と同じように各部位を切断していく。


 「痛いっ! 痛いよおおおおおおっ!!」


 四肢を失い、女魔法使いの悲痛の叫びがダンジョン内に響き渡る。


 「あぁぁぁぁぁ、良い声で泣いてくれるね! その表情も素晴らしいよ! 君もそう思うだろう!」


 「き、貴様らあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 発狂寸前の男戦士。大切な仲間を無惨に傷つけられればそうなるのも当然だろう。


だが、四肢を失っている今、男戦士にはどうすることも出来なかった。


 「たす、け……てぇ……」


 女魔法使いの助けを呼ぶ声が虚しく聞こえる。出血のせいで意識が朦朧としている。


 「もう充分かな? その女性はもう用済みだから好きにしていいよ」


 「あいよ、相棒」


 「何を、するんだ……!」


 男戦士の問いに、スキンヘッドの男はニヤリと笑みを浮かべる。


 「俺はな、こんな無抵抗な女の首をへし折るのがこの上なく大好きなんだよ!」


 そう言って、スキンヘッドのは女魔法使いに跨がると、その細い首に手を掛ける。


 そして――


 ゴキンッ!


 女魔法使いの首の骨をへし折った。


 「ア、アアアアアァァァァァァァッッッ!!」


 大切な仲間を目の前で殺され、男戦士が叫ぶ。


その顔は絶望に染まりきったとも言える表情だった。


 「最ッ高の叫びだね♪」


 男戦士の悲痛の叫び声を聞き、鎧の男は満足した表情を見せると、魔剣を振るって首を刎ねる。


 「今回も中々の叫び声だったね」


 「ああ、俺も満足だ。早く次の女を殺りたいもんだぜ」


 満足そうに笑みを浮かべて次の獲物を求める2人。


 そんな時――


 「相変わらずの変質ぶりだな……」


 不意に声を掛けられて、視線を声のある方に向ける。


 そこには仮面を被った黒装束の男がいた。


 「おい……」


 「おうよ……」


 早速次の獲物を発見して鎧の男とスキンヘッドの男は戦闘態勢に入る。


 「待て待て! 俺だよディーン、バール」


 慌てて仮面を外して素顔を晒す。その正体は『常闇の団』のリーダーであるダイスだった。


部下を殲滅され、アジトを失った彼は、正体を隠しながらセバーラの街付近に潜伏していたのだ。


 「ん、もしかしてダイスかい?」


 「久しぶりだな、おい!」


 久しぶりの再会に鎧の男――ディーンとスキンヘッドの男――バールは思わず笑みを浮かべる。この3人は幼少の頃からの知り合いであった。


 「それよりどうしたんだいダイス? 何か用があって僕達に会いに来たんだろう?」


 「ああ。実は殺して欲しい奴らがいるんだ」


 ダイスは『常闇の団』が壊滅させられたこと、そしてその原因である煉太郎達について話した。


ダイスがディーンとバールに会いに来たのは部下を殺された敵討ちに協力して貰う為だ。


 「だから頼む。俺に力を貸してくれ。あの餓鬼共にお前達の力を見せつけてやってくれ」


 「ダイスの頼みとあれば仕方ありませんね。いいでしょう、その冒険者達は僕達が殺してあげましょう。ああ、楽しみだな。その3人はどんな風に泣き叫んでくれるのかな……」


 「俺も女達の首を男の前でへし折るのが楽しみだぜ……へへ」


 「よろしく頼むぜ、お前達。さあ俺様の復讐の始まりだぜ」


 最悪の仲間を引き込み、ダイスは復讐を誓うのだった。

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